賢明なピボットを行うための3つの前提条件
2018/06/14
2018/06/14
多くのリーダーが自社は立ち止まっていられないと理解しています。前例のない創造的破壊の時代において成功を収める企業は常に変化し続ける必要があります。意図的にレガシービジネスを活性化してイノベーションを創出しながら、他方では未来に向けて新たな機会を拡大しなければなりません。このバランスを取るのは容易ではなく、組織変革およびそのための新たなアプローチが必要です。このアプローチをアクセンチュアでは「新規事業への転換」と呼んでいます。大半の企業は新規事業への転換をゆっくりと進めている中、わずか6%の企業のみが迅速に賢明な転換を実行しています。
未来志向の企業は意欲的に新しい市場へ参入し、成果をあげています。米国の大手ヘルスケア企業のCVS ヘルス社は、長年にわたり成長戦略を追求しながらも、堅調な中核事業である薬局事業と並行して新規事業も構築しています。1963年に健康および美容のディスカウントストアとして創業し、その4年後には店舗内薬局部門をスタートさせました。その後数年間にわたるビジネスモデルの着実な移行は、店舗併設ヘルスクリニック事業のパイオニア、ミニットクリニック社を2016年に買収したことでさらに加速しました。革新的な店舗内ウォークインクリニック(予約不要の診療所)のネットワークを構築し、通常のクリニックの時間外に、緊急性が低く慢性疾患を持つ患者に対して医療サービスを手頃な価格で提供できるようになりました。現在、CVSヘルス社は米国最大規模のヘルスケアプロバイダーであり、9,800店舗を超える小売薬局を運営しています。
賢明なピボットを実行するためには、まず投資の準備を整え、計画的にイノベーションを創造し、旧事業と新規事業を融合させる必要があります。
デジタル時代に意欲的に競争している企業は絶えず自らを改革しています。このようなリーダー企業グループ(ローテーションマスター)は、収益の75%以上が過去3年間に開始した事業から生まれると回答しています。また同時期に極めて堅調な財務実績を報告しました。
「リーダー企業は、レガシービジネスを抱えているにも関わらず新規事業への方向転換を成功させているのではなく、むしろレガシービジネスを強化して新規事業の拡大に必要なリソースを生み出しているから成功しているのです」
オマール・アボッシュ(Omar Abbosh)、アクセンチュア 通信・メディア・ハイテク本部 グループ・チーフ・エグゼクティブ(前最高戦略責任者)
企業は組織変革に向けて新たなアプローチを採用する必要があります。適切な投資戦略のもとで、既存の事業を変革・成長させながら同時に新規事業を拡大することは、新規事業への賢明なピボットを実現するために不可欠です。ローテーションマスターの業績を見ればその成果は明らかです。ローテーションマスターの64%が2桁(10%以上)の売上伸長を達成し、57%がEBITD(利払い前、税引き前、減価償却前利益)でも同様の成果をあげています。
今すぐにできることは中核事業の活性化です。堅固な中核事業は、新規事業への転換に必要な投資能力を生み出します。
意図的にイノベーションを起こしましょう。イノベーションを活用してレガシービジネスを変革し、未来に向けて新しいビジネス機会を特定して拡大させます。
今すぐにできることは新規事業に向けた包括的なアプローチを取ることです。レガシービジネスと外部とのつながりによる相乗効果を創出しつつ、新規事業に向けた明確な拡大戦略を策定します。
企業の多くが、今後3年間で新規事業に速やかに移行したいと考えています。レガシービジネスを再活性しつつ新たな機会を拡大するためには、イノベーションの風土と、継続的に変化し続ける能力が必要です。思いのままに組織を改革するために必要な準備をしましょう。
アクセンチュアは、自動車、銀行、化学、消費財・サービス、エネルギー、ハイテク、保険、製薬、小売、情報通信、ユーティリティの11業界の企業を対象に世界的なオンライン調査を、2017年4~5月に実施しました。この調査では、既存のレガシービジネスの変革と新規事業への拡大という2つの観点から、大規模企業が破壊的な変化への対応にどのように備えているのかを検証しました。
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収益が5億米ドル以上の企業の最高幹部
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調査対象国:オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、インド、日本、シンガポール、英国、米国
調査では、新しい領域への転換の過程にある企業を現在到達している段階別に4つのグループ-ローテーションマスター(転換の達人)、 ローテーションドライバー(転換の推進者)、 ローテーションストライバー(転換の努力家)、 ローテーションスターター(転換の入門者)-に分類しました。各企業の進捗は、過去3年間に企業が開始した新規事業が全体的な収益にどの程度貢献しているかをヒアリング・評価して測定しました。