調査レポート

要約

要約

  • 創造的破壊の時代においては、企業は既存のオペレーションを変革しながら、拡張性の高い新規事業へのピボット(方向転換)を進めることが求められています。
  • 賢明なピボットを行うために求められているのは、企業が早計に中核事業を手放すことなく、新たな主力事業の創出を可能にする投資戦略です。
  • 賢明なピボットを習得した企業は、中核事業の最大価値を引き出し、新規事業を追求していく有利な立場にいます。
  • 賢明なピボットは企業ごとに異なります。アクセンチュアは、企業が独自の道筋を策定する支援となるよう「始動」シナリオを提供します。


どのような企業が、絶え間ない創造的破壊の時代に成功を収めているのでしょうか。

ナイキ社の事例を見てみましょう。同社の長期的な成長計画には大規模な変革が盛り込まれ、製品イノベーションの加速・新製品の投入スピード向上・店舗やオンラインでの顧客の購買体験の強化を目指しています。また、医薬品および化学品の巨大企業メルク社は、この10年で事業を再編しただけでなく、210億米ドルもの資金を新たな買収に投じて新しい業界セグメントに進出し、過去最高の成長と高い収益を達成しました。

ナイキ社とメルク社のように、自社のビジネスの変革に備えるという目的を持って、将来に投資している企業はほんの一握りです。それらの企業では拡張性の高い新規事業に利用可能な資金を振り向けながら、中核事業の変革と成長を継続しています。しかしそのバランスを取るためには課題もあります。

33%

調査対象企業1,500社のうち33%の企業が、積極的な投資戦略を採用して将来の事業機会に注力しています。

55%

調査対象企業1,500社のうち55%の企業が、慎重な投資戦略を採用して中核事業に注力しています。

自信を持って新規事業にピボットする

賢明なピボットには新たな投資戦略が必要です。そのためには、企業の投資能力(投資可能なリソース)や投資速度(新規事業を展開するスピード)を評価することがまず必要です。さらに、CFOを中心とした経営陣が確かな見識をもって意思決定を行い、新旧事業間の投資が全社的に見て効果的にバランスがとれるようにする必要があります。

タイミングが重要、柔軟に対応せよ

一部の企業では、創造的破壊が起きて初めて、その対応として変革に着手しています。しかし賢明なピボットとは、常にタイミングに注意を払いながら新規事業に投資や活動を移すことです。

  • 事業が好調な場合は、余裕をもってピボットすることで、新規事業に伴うリスクを十分吟味したうえで着手することができます。
  • 業界の創造的破壊によって全く新たな分野に可能性が生まれる場合、いち早く新規市場に試験的に進出し、近い将来に大きな利益につながる分野の特定を行います。

賢明なピボットの完了には数年かかることを踏まえ、こうしたチャンスを生かすために、企業は柔軟な投資戦略を策定し、株主の期待に応える強固な収益性と将来の成長に向けた選択肢の拡張のバランスを取っていく必要があります。

「イノベーションを促すために新規事業に投資しすぎると財務能力を超過してしまう可能性があり、一方で動きが遅すぎると後塵を拝する可能性があります。どちらも高いリスクを伴います」

オマール・アボッシュ(OMAR ABBOSH) グループ最高責任者-通信・メディア・ハイテク本部(前 最高戦略責任者)

企業の成熟段階に合わせたアプローチが必要

企業ごとにそれぞれ追求すべき道があり、アクションポイントとなるタイミングがあります。各企業が検討すべき4つの「始動」シナリオを紹介します。それぞれのシナリオは、企業の投資能力と行動を起こす意欲の成熟段階に応じています。

確固たる意志を持って投資している33%の企業

高い投資能力に支えられた積極的な投資戦略を採用し、他社に先んじて将来の成長オプションを創出しています。

次の一手として、新規事業を迅速に拡大するためにはどうすればいいのでしょう。

必要に迫られて投資している12%の企業

積極的な投資戦略を採用しているものの、投資能力の点で将来の成長への投資意欲は限定的です。

次の一手として、どのような代替資金源が投資能力向上の助けになるでしょうか。

消極的な22%の企業

高い投資能力を持っているものの慎重な投資戦略を採用し、現状は既存事業の維持に重点を置いています。

次の一手として、既存事業の強みを生かして攻めるべき新規市場はどこでしょうか。

控えめな33%の企業

現状は慎重な投資戦略を採用しており、投資能力を補うか、限られたリソースで新たな成長機会を見いだす必要があります。

次の一手として、どのようにして既存事業を改革して、投資能力を向上すべきでしょうか。

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CFOの重要な役割

意思決定には確かな考えが不可欠です。こうした意思決定の場に一番ふさわしい人はCFOです。CFOという社内の立場と、その専門知識により新旧事業間の投資にバランスをもたせることができるためです。

CFOがCEOをサポートするためにすべきこととして次のようなことが考えられます。

  1. 新規事業へのコミットメントを作る

    優れたアイデアを形にすることは容易ではありません。そのアイデアの実現に向けた数年にわたってのイノベーションや、新たな資産、スキルの獲得に投資をすることはより一層困難になってきています。新規事業、特に先端技術に依存する事業の場合には、構築から規模拡大までに時間とコストがかかる上、適切な収益をもたらすまでには長い時間が必要になるケースが多いからです。

    CFOがすべきこと

    • 他部門担当の経営者と協力し、既存事業に差し迫ったプレッシャーがなくても、会社の将来を担う事業とは何かについて合意しておく。
    • 新規事業について何をもって成功とするかについて経済的、その他の指標を確立。
    • 資本配分や投資優先度を明確にして新規事業の成長を支援し、中核事業との潰し合いを回避。
    • 新規事業分野の実証を推進する能力を支援。
  2. 相乗効果を明らかにする

    新たな成長機会を追求する際には、製品、チャネル、顧客、業務効率、人材などの観点から、中核事業と新規事業との間の相乗効果を積極的に評価する必要があります。

    CFOがすべきこと

    • 関連資産の集約と再利用を図り、成長のための原資を整える。
    • マネジメントインセンティブを設定して、事業部門統括者が新しいデジタル能力を活用できるようにし、かつイノベーションを中核事業に戻すことができるようにするために、金銭的なインセンティブを設定する
    • 適切な財務スキルを持つ人材について旧事業部門から新規事業部門への異動を奨励。
    • 投資家コミュニティにとって魅力的なストーリーを構築し、既存事業と中核事業との相乗効果を創出する自社の能力に対する信頼を高める。
  3. エコシステム内のパートナーシップを通じた成長

    業界の枠を超えてエコシステム内のパートナーシップを活用することで、リスクを伴う可能性が高い新規事業機会をより短期間で展開し、規模拡大につながります。

    CFOがすべきこと

    • 営業上のエコシステム戦略を構築し、新たな事業機会やビジネスアイデアを特定し獲得。
    • 財政メカニズムを構築し、エコシステムとは切り離すことで、イノベーションを社内に囲い込む。
    • 新規投資家や「アウトサイドイン」の思考を採用。
    • 成長の可能性を制限しているパートナーシップを廃し、より戦略的かつ収益性の高い事業機会を見つけるタイミングを計る。

賢明なピボットを実現

現代社会ではビジネスの安定が最終目標ではありません。ビジネスチャンスは賢明なピボットの実現から生まれます。アプローチは企業ごとに異なりますが、成功するための要因は同じです。CFOを中心とする経営幹部が新規事業にコミットし、相乗効果に関して透明性を高め、協力する意欲を持つことが極めて重要になります。従来の財務ルートを頑なに維持する企業は新規事業による成果を得ることは難しいでしょう。しかし賢明なピボットを実現すれば、新時代をリードする機会を捉えることができるのです。

調査について

調査ではアクセンチュアの診断モデルを用いて、「賢明なピボット」に取り組む企業の投資および財務活動の評価を行いました。モデルでは企業の5年間のピボットの度合いを2つの基準で評価しています。

  • 投資能力: インデックススコアを決定するために組み合わせた3つの要素(流動性資産、現金補充能力、資金調達能力)の機能
  • 投資速度: 方向性(新規事業への投資シフト)と投資率(競合他社と比較した投資の割り当て速度)の組み合わせ

1,500

金融を除く企業

14

業界

本調査には、別途実施したグローバルオンライン調査に基づく分析も含みます(「賢明なピボットの実行」を参照).

著者について

クリスティアン・カンパーニャ(DR. CHRISTIAN CAMPAGNA)

シニア・マネジング・ディレクター-CFO 兼 エンタープライズバリュー


デヴィッド・アクソン(DAVID AXSON)

マネジング・ディレクター-CFO 兼 エンタープライズバリュー


ヴェドラナ・サビッチ(Dr. Vedrana Savic)

マネジング・ディレクター - ソートリーダーシップ 


ダニエル・ヒューディグ(DR. DANIEL HUEDIG)

シニア・プリンシパル – コーポレート・ファイナンス・リサーチ

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Accenture Pivot to the Future

概要

創造的破壊の力を生かすためにリーダー企業が実践している投資とイノベーションの手法とは

所要時間:約45分

賢明なピボットを実現するための投資

すべてのビジネスにおいて、新規事業による成果につながる道筋があります。いつ、どこで、どのように方向転換するのか、企業は自信を持って決断できるようになることが重要です。

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