
新型コロナウイルス(COVID-19):製造業におけるニューノーマルへの対応
2020/04/18
2020/04/18
新型コロナウイルス(COVID-19)による壊滅的な打撃によって、製造業のオペレーションやネットワーク、業績に深刻な影響が生じています。そのためメーカーは、リスクマネジメントや危機管理計画だけでなく、従業員の安全管理、製造現場のオペレーション、新たな働き方すべてにおいて、見直しを迫られています。
現在メーカーの経営者は、事業継続を最優先した緊急課題への対処に注力しています。緊急対策チームを結成し、製品に対する需要の変化、従業員支援に関する課題、サプライチェーンにおける制約の把握に努めています(「サプライチェーンのレジリエンス強化に向けたアクセンチュアの提案(英語)」 も参照)。
加えて、新たなテクノロジーソリューションを活用し、最大限将来を見据えたビジネスの構築が必要です。そうした戦略は、緊急時におけるレジリエンスの強化、オペレーションの維持、従業員のサポートにつながるだけでなく、今後経済が回復した際に、競争優位性を維持しながら急速に事業を成長させる基盤にもなります。
必要なものの優先順位が抜本的に変化しています。そのためメーカーには、次の3つのシナリオが想定されます。
いずれのシナリオにおいてもメーカーは、事業の継続や成長に不可欠な製品を早急に判断し、サプライチェーンを強化し、直近および将来の需要に対応したスキルを確保しなければなりません。
そのためには、次のような行動が必要です。
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症によって、従業員の働き方、安全性、生産性に関する様々な課題が生じています。体調不良や出勤拒否による欠勤が生じる恐れがあり、接触を抑えるための指針により、従業員に対する遠隔支援を求められる可能性もあります。それらの要因による生産性の低下が予想されるため、職場における健康管理やソーシャルディスタンスを徹底するための新たな作業プロセスが導入され、複数の職務を果たすためのスキルの見直しや新たな製品ラインの検討が始まっています。
「従業員ファースト」の理念を実現するためには、ソーシャルディスタンスの確保とともに、従業員およびその家族の安全のための個人防護具に関する独自の基準が必要です。従業員も健康と生産性を維持するためのサポートをリーダーに求めています。従業員のレジリエンス強化に向けたアクセンチュアの実務的な提案は、身体的な安全だけでなく精神的な安定、同僚とつながっていたいという思いに対処することによって、従業員からの信頼を維持しようとするものです。
具体的には、従業員および契約パートナーを支援するために、次のような行動が求められます。
通常、大幅な市場の混乱時のビジネスエコシステムは最悪の状況です。エコシステムに基づいてグローバルなサプライチェーンを構成しているメーカーにとって、これは大きな課題です。重要なのは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響とともに、ビジネスエコシステムにおける重要なサプライヤー、契約企業、共同生産者、ロジスティクス担当者との状況を正しく把握することです。
具体的には、次のような行動が求められます。
需要/生産の急激な変化、労働力の確保やビジネスエコシステムの存続という課題によって、メーカーの物理的な生産ネットワークは今後大幅に変わってくる可能性があります。そのため、活用されていない資産の再配備、現在の資産の短期的な柔軟性向上(出荷スタイル、パッケージ量など)への資金投資ならびに対策に向けた意思決定が求められます。また、それらの判断が将来の成長の妨げにならないようにする必要があります。
そのためには次のような行動が考えられます。
製造業における迅速な対応やレジリエンスの構築にはデジタルの活用が不可欠です。需要とポートフォリオの分析や、需要と供給想定分析、労働力とスキルの決定やスケジュール調整、リモートワーク能力、エコシステム内の連携、ネットワーク分析など、デジタル能力はあらゆる場面で求められています。すでにデジタルプラットフォームを導入し、データ集積や高度な分析能力のあるメーカーは、新型コロナウイルス(COVID-19)による深刻な影響に迅速かつ正確に適切な対応ができるはずです。実際に比類ないスピードで工場や生産現場のリモートワークに取り組む動きもあるように、すでに動き出したデジタル化をさらに加速すべき時期に来ています。
現在、特に必要なのは次のような行動です。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、今後の製造業にも長期的な影響を与えると考えられます。メーカーが強い責任感を持ち、アジリティと対応力を高め、レジリエンスを強化しなければならないのは明らかです。
すべてのメーカーがエンド・ツー・エンドのオペレーションに目を向け、将来の危機的状況にどれだけ自信をもって迅速な対応ができるかを評価する必要があります。そのためには既存のオペレーションを厳しく検証し、どこが、どのように(なぜ)うまく機能しているのかを考え、旧来の働き方を変革し、多くの従業員、ビジネスエコシステムのパートナー、物理的な生産ネットワークの透明性とインテリジェンスを高めなければなりません。ほとんどのメーカーにとって、デジタル化の推進、レジリエンスの強化、アジリティのある組織構築に取り組み、パンデミックによる深刻な影響に対応するために成すべき仕事は、依然として道半ばであるといえます。
現在の難局は、メーカーにとって将来に向けた学習、進化、再構築のチャンスです。直ちに行動しましょう。