調査レポート

概要

概要

  • 創造的破壊はあらゆる業界にとって避けて通ることのできない重要な課題です。実際に創造的破壊が目前に迫ってきたとき、多くの企業が静観してしまうものです。
  • しかし、およそ41兆ドルの企業価値がすでに創造的破壊の脅威にさらされており、静観していればやり過ごせると考えるのは大変危険です。
  • 創造的破壊は短期的な衝撃ではなく、次々と押し寄せる継続的な闘いであることが、アクセンチュアの調査により明らかになりました。
  • 企業が成功を掴むためには、大胆なイノベーションの方向転換が必要です。


「創造的破壊」を読み解く


外出することなく自宅で自動車を購入できる拡張現実(AR)によるサービス、太陽が出ていなくても電力供給が可能なシリコン製の再生可能エネルギーストレージ、消費者の購買ニーズを予測するスマートスピーカーなど、数世代前には想像できなかったような新しい商品やプロセスが登場しています。その結果、生活の便利さは増し、消費者はよりパーソナライズされた柔軟なサービスが提供されることを期待しています。絶えず変化する市場で企業が創造的破壊を乗り切ることができるかは、各組織の経営幹部の手腕にかかっていると言えます。

この10年間で、収支報告や投資家向け発表、企業発表などで経営幹部が創造的破壊について言及する機会は増大しており、あらゆる業界で経営陣の不安は高まっています。

企業の経営陣が不安を感じるのは無理もありません。アクセンチュアの調査では、対象企業1万社の大多数(71%)が、今まさに大規模な創造的破壊に直面している、あるいは、破壊が目前に迫っている状況に置かれていると回答しています(図1参照)。

図1. 多くの業界がすでに創造的破壊に直面している、あるいは、破壊が目前に迫っている状況にある。


本調査では、創造的破壊が決して予測不能な現象ではなく、正しく理解することでコントロールが可能であることが明らかになっています。アクセンチュアは、企業を業界セクターごとに分け、創造的破壊の現在の度合いと今後の兆候に応じて「発展期」「長期安定期」「不安定期」「混乱期」の4つのステージに各業界を分類し詳細な分析を行いました。



長期戦で臨む


アクセンチュアは、過去10年間で18の業界セクターにおける創造的破壊の段階がどのように進化したのかを明らかにすべく「ディスラプタビリティ・インデックス2.0」を作成しました。

10年もの長期間を対象とした本調査では、業界の創造的破壊が爆発的に発生すると、短期間で収束するのではなく、長期にわたり継続することが分かりました。

83%

調査対象の業界のおよそ83%が、2011~2018年にかけて発生した創造的破壊におけるある1つのステージに、少なくとも5年間とどまり続けています。

継続的な創造的破壊に長くさらされていると、どのような業界であれ深刻な犠牲が生じます。実際に、2011~2018年にかけて、米国の18の業界セクターの3,217社が倒産に追い込まれました。

また同期間に混乱期を迎えていた小売業界は特に大きな打撃を受け、2018年には43社の倒産が報告されています。

小売業、消費者向け製品およびサービスの分野では、2011~2018年に創造的破壊の度合いが30%以上も増えています。この背景として、2011~2018年にベンチャーキャピタル(VC)取引数が500%近く伸び、2018年のVC資金提供額の合計額が120億ドル弱に達していることが挙げられます。これは極めて衝撃的な数字で、さまざまなトレンドを乗り越えてきた先進企業にとっても大きな変動だと言えるでしょう。

静観の姿勢を取り、行動を起こすことに消極的


先進企業はこうした脅威にどのように対処しているのでしょうか?

先進的な企業では、レジリエンス(回復力)の向上に重点を置いており、なかでもヘルスケア、ハイテク分野では最も高い効果を上げています。両分野は、運用コストの削減からイノベーションに対するコミットメントの強化、万一の場合に備えた対処まで、さまざまな対策を講じています。

例えばハイテク分野の企業の場合は、売上原価および売上高は平均2.6%低下しているものの、現金と短期資産は40%増加しています。しかし、業績を上げなければならないというプレッシャーと破壊者(ディスラプター)の継続的な市場への流入により、創造的破壊の拡大は続いています。

その理由の1つとして、この分野における既存企業には長年にわたり築き上げてきた資産とルーティンビジネスがあり、創造的破壊に対処する際にもそれらに依存し、新たな領域の開拓に消極的な傾向が見られます。

実績があり慣れ親しんできた戦略は従来であれば機能したかもしれませんが、次々と押し寄せる創造的破壊の嵐を乗り切るためには不十分で、全く新しい戦略が必要です。

アクセンチュアでは「イノベーション・ピボット(イノベーションの方向転換)」という型にはまらない大胆な戦略を提唱しています。この新しい戦略により企業は創造的破壊をコントロールできるようになるのです。


「Schneider Electric社は創業180年を超える企業です。製鉄業から始まり、現在は自動化を用いたデジタルエネルギーソリューションも提供しています。当社はピボットには二つの種類があることを経験から学びました。ひとつは自主的に行うピボットで企業にとって大変有益です。そしてもうひとつは環境に強いられるピボットで、これには大変な痛みが伴います。当社はこの20年間、ピボットの予測と選択を重ね、変革を繰り返すことにこだわってきました」

Schneider Electric社 会長兼CEO ジャン=パスカル・トリコアール(Jean-Pascal Tricoire)氏



Omar Abbosh

通信・メディア・ハイテク本部 グループ・チーフ・エグゼクティブ


Paul Nunes

アクセンチュア・リサーチ グローバル・マネジング・ディレクター


Dr. Vedrana Savic

アクセンチュア・リサーチ マネジング・ディレクター


Michael Moore

アクセンチュア・リサーチ シニア・プリンシパル

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イノベーション・ピボットを始める

業界における創造的破壊の特性を知ることは大切です。しかしその特性は、企業がいつ、どのようにイノベーションにフォーカスすべきかを示すものではありません。

次なる最先端を生み出す

新技術を採用することにより、事業活動を行っている業界の内外で破壊的な変革を起こすようなアイデアを生み出します。

発展期に位置する業界では、勝者独り勝ちの市場を獲得している既存企業の多くが、堅調な財務実績を上げています。しかし、新規参入企業もまた増益を狙って活動している上に、製品サイクルが早く顧客の囲い込みが難しいこともこのステージにおける市場の特長です。発展期の業界では、先手を打って行動することが何より重要です。

意外なことに、ソフトウェア・プラットフォーム業界ではエッジコンピューティングやフォグコンピューティング、XR(Extended Reality)などの新技術に投資しているケースは比較的少なく、今後5年間でこれらの新技術の導入を予定している企業も40%未満です。

意欲的な企業の多くが、未来を生き抜く最善の策は自ら未来を生み出すことだと理解しています。そのために、すでに実証されている技術ではなく、次世代のフロンティア技術でイノベーションを起こし、破壊的なアイデアを見つけ出そうとしているのです。

将来の可能性に投資する

イノベーションへの投資を徐々に増やしていくことで、新しいアイデアをすばやくテストして商品化できるようになります。

長期安定期に位置する業界では、従来のビジネスモデルを活用することで成果を上げており、実績に基づいた成功の公式である現状のビジネスモデルを手放す必要性をまだ感じていません。また、今のところは破壊者の市場への参入を食い止めることにも成功しています。現時点では相対的に成果を上げているものの、決して無敵の強さを持っているわけではなく、業界内には無視することのできない断層と非効率性が存在しています。

例えば化学業界の場合は、過去5年間の年間売上成長率の平均は55.7%と堅調な業績を維持しています。しかし、未来に向けた投資は減速しており、脅威が高まる時期に差し掛かっています。化学業界におけるVC取引数は2011年には226件でしたが、2018年には691件と3倍以上も増加しています。

先進企業は、コアビジネスにおける資産にこだわるのではなく、新たなアイデアによるパイプラインを構築することに重点を置いています。また、競合他社に先駆けて新しい有望なアイデアを商品化するためにリソースを増強し、投資の再配分を行っています。

外部パートナーとのコラボレーションにより新しいアイデアを創造する

エコシステムを活用してパートナーとコラボレーションすることで先進テクノロジーや専門技術などを習得し、新しいアイデアを生み出します。

不安定期に位置する業界は、確かな基盤と潤沢な資金という強みを持つとともに、他の業界と比べ既存企業に老舗企業が多いのが特徴です。企業の平均活動年数が、発展期の業界では42年のところ、不安定期に該当する業界では64年であるという調査結果にも示されています。

新規参入企業は、バリューチェーンでの競争ではなく製品およびサービスの品質に的を絞って市場に参入を試みますが、既存企業が致命的な大打撃を受けるケースは稀です。また、本分野における既存企業は慎重すぎる傾向があり、リスクを取って新しい成長戦略に早期に投資するという積極性が不足しています。ビジネスチャンスは短期的なプレッシャーを乗り越えた先にあるため、将来性の高いスケーラブルなビジネスを確立するための目標を設定する必要があります。先進企業は、成功を掴むためにはエコシステムを通じてパートナーと協力し、先進テクノロジーや専門技術を習得して新しいアイデアを広げるために全力で取り組む必要があることを十分に認識しています。

内部破壊によって再構築する

既存事業に有意義なイノベーションをもたらすために、イノベーションラボやデジタルファクトリーなどの専門組織を確立します。

混乱期に位置する業界は危機感を覚えています。既存企業の間に横たわる断層を破壊者に狙われ市場シェアを奪われた結果、業績は悪化しています。鎮静の兆しは見られず、イノベーションへの投資不足と業界の非効率性が露呈し始めます。将来の見通しは暗く先行きも困難なため、コア事業での大胆な選択を早急に決断する必要があります。

小売業界は、拡大し続けるプラットフォーム競争により各企業が厳しい選択を迫られています。イノベーションが遅々として進まないという小売業界にありがちだった従来の状況は様変わりし、2019年にはAI技術への50億ドルもの投資が予測されています。しかし、ただ投資すればいいのではなく、価値のあるデジタル化を見極めて投資することが重要です。

アクセンチュアが実施したある調査では、小売、消費者向け製品・サービス分野の企業の80%が、創造的破壊によって企業戦略を変更したと回答しています。既存企業では、決断に踏み切れないというケースもあれば、何もかもを一気に変えてしまおうというやや強引なケースも見られます。

混乱期に位置する大規模企業では、従来のコア事業の寿命を延ばしつつ、新たな分野に投資しなければならないという、二つの軸を持った戦略が必要です。外部の脅威を緩和して従来事業の寿命を延ばすには、継続的に内部破壊を生み出すための再構築を繰り返す必要があります。

勇気が求められるとき

Walt Disney Companyの会長兼CEOであるボブ・アイガー(Bob Iger)氏は「嵐が過ぎ去ったときに我々は進化していなければならない。以前と全く同じであってはいけない」と語っています。創造的破壊を静観し、ただ通り過ぎるのを待つだけの企業は生き残ることさえも難しいでしょう。

継続的な創造的破壊に対処するためには、慣れ親しんだ戦略からの脱却が不可欠です。戦略の再構築に向けた一歩は、創造的破壊のトレンドを理解することから始まります。「業界における破壊の度合いはどの程度で、時間とともにどのように変化していくのでしょうか。「他社に先駆けて最先端サービスを生み出す」「新しいアイデアをいち早く商品化する」「新たなパートナーシップを構築しアイデアを広げる」「社内のワールドクラスのイノベーション力を強化する」、いずれの取り組みも、変革を適切なタイミングで遂行することによって達成できます。

創造的破壊を乗り切ったとき、次の破壊に対処できるだけのケイパビリティが強化されていることを実感することになるでしょう。

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