化学業界では、トップレベルの人材の獲得と維持は、依然として大きな関心事であり、企業のプライオリティの中でも上位に位置付けられています。経営幹部100人を含む、500人以上の化学業界の従業員を対象とした調査結果からは2、新しい人材の獲得と維持には、ワークフォース(労働力)・モデルの再構築が急務であることが明らかになりました。化学を専攻した大学生のうち卒業後に化学業界で働くのは全体のわずか3分の1(30パーセント)未満で3、今回の調査でも、回答者のほとんど(87パーセント)が、化学業界の持つイメージの問題に苦慮しており4、業界のイメージアップを図る必要性があると考えています。

化学業界におけるハイパフォーマンス企業は、将来のワークフォースの管理と対応を視野に入れ、ビジネスモデルを継続的に順応させていくことによって、ワークフォースの課題に積極的に取り組んでいます。アクセンチュアの調査でも、こうした企業は次の3つの領域で実際に独自性を発揮しています。

化学業界における女性の就労状況
  1. ハイパフォーマンス企業では従業員における女性の比率が高い(図1を参照)

    ハイパフォーマンス企業は、ローパフォーマンス企業と比べて、従業員における女性の平均比率が高く、一部の企業では30パーセントを超えています。これらの企業では、従業員の女性比率を上げようと戦略的なアプローチを採用しており、女性役員の人数も多い傾向があります。そうした先進的な状況が国の制度によって推進されている例もあります。例えば、2015年にドイツで成立した法律により、DAX(ドイツ株価指数)銘柄企業各社は、2016年までに取締役会の30パーセント以上を女性役員にすることを目標としました。5 また、ワークフォースとリーダーシップ・ロールにおける女性の比率を20~30パーセントに引き上げること目標として、「ダイバーシティとインクルージョン」プログラムを導入している企業もあります。6

    アクセンチュアの調査によると、農薬業界も女性の採用に積極的です。女性の農場所有者数が今後10年間で大幅に増加することが予測され、農薬メーカー各社は女性従業員の獲得と維持を優先課題としています。また農薬業界におけるハイパフォーマンス企業では、女性の農業従事者を奨励するためのイベントや表彰などの社外イニシアチブの取り組みや、ワークショップや研修を通じて女性が農業に参加するための支援なども行っています。これらの企業は、将来的により一層ビジネスを拡大するために、ベストプラクティスと推奨事項の集約にも積極的に取り組んでいます。

    また、女性従業員に向けた、フレキシブルな就業時間や保育・育児休暇などのプログラムに力を入れているハイパフォーマンス企業もあります。従業員における女性の比率が30パーセント以上を占める、ある大手化学企業では、女性従業員を対象とした有名な独自プログラムを構築しました。このプログラムを通して化学企業のイメージを変えるための重要な貢献を果たしたことで、「2016年ワーキングマザー・ベストカンパニー100」に選出されています。7 このような包括的な女性活用アプローチは、広く好意的に受け入れられ、優れた人材の育成にも大きな役割を果たしています。そのため社内だけではなくクライアント企業の女性活躍支援などにも貢献しています。

  2. ミレニアル世代やその後の世代にフォーカスするハイパフォーマンス企業

    成功している化学企業は、ミレニアル世代を獲得・維持するために「今以上のもの」を提供する必要があることを理解しています。ミレニアル世代は、X世代(1960年代初頭・半ばから1970年代生まれの世代)や団塊の世代などの前世代とは労働に対する価値観や、企業や仕事に対する期待、求める職場環境などが異なります。仕事上のコミュニケーションも、メールではなくソーシャルメディアなどのツールを好む傾向にあります。またミレニアル世代にとっては、社内・社外を問わず企業の評判が良いこともポジティブな影響を与えるものとして大切です。さらに、就労環境におけるフレキシビリティは特に重要になります。新たなデジタル技術によってリモートワークなどのフレキシブルな就業形態を提供することで、企業はゲームチェンジャーとなりうるでしょう。

    企業が取り入れるべき方法のひとつが、個人にキャリアパスや能力開発の機会を提供したり、キャリアの早い段階で責任を付与したりするなど、ミレニアル世代のニーズと期待に合わせてカスタマイズできる「ワークフォース構築システム」を確立することです。ミレニアル世代だけにターゲットを絞ったプログラムを構築することも選択肢のひとつです。ある企業では、化学業界の特定の分野に対する不安の声に対処するためにミレニアル世代の能力と活躍を期待し、「ディレクター・オブ・ミレニアル・エンゲージ」という新しいリーダーシップのポジションを導入しています。

    また一部のハイパフォーマンス企業では、人材開発の対象を、ミレニアル世代だけではなく未来の有望な世代にまで広げています。例えば、子どもに化学/科学の面白さを伝えるために、科学アカデミープログラムやキッズラボを提供するなど、小・中学校の教育に参画している企業もあります。

  3. ハイパフォーマンス企業はワークフォースにおける課題に「リキッド・ワークフォース」モデルを活用

    60パーセントを超える様々な業界の企業が、自社のワークフォース・オペレーション・モデルを積極的に再編しています。8 ビジネスの差別化要因として、人材をより効果的に活用するために、非正規社員と正規社員のリキッド・ワークフォース(Liquid Workforce:労働力の流動化)を試みている企業もあります。

    また、従業員の多くは、従来の役割からデジタル化に伴う役割の変化を歓迎しています。 今回の調査では、作業員の84パーセントがデジタル化による仕事への影響を刺激的だと感じ、66パーセントがデジタル技術は仕事の品質を向上させると考えています。化学企業は、優れた人材を獲得し、市場での競争力を維持し続けるために、人材活用やデジタル技術のトレンドの導入に着手する必要があります。

    トレンド導入の成功事例のひとつとして、グローバルなハイパフォーマンス企業の例が挙げられます。この企業では、優れたスタッフィング・パートナーシップと最高度のフレキシビリティで、繁忙期にも人材を確保できる、ソーシャルネットワークを活用した非正規社員管理システムを導入しています。ソーシャルネットワークにおける付加価値は、ミレニアル世代のみならず、団塊世代にも浸透しており、個人が自身の専門知識を、専門プロジェクトや短期プロジェクトで生かせる機会も容易に得やすくなってきています。

包括的なアプローチは人材プールにとっても魅力的

化学企業は人材開発において、個人のキャリアにおける期待を適切に管理する一方で、ミレニアル世代と女性の活用を強化していく必要があります(図2を参照)。

非正規社員数の増加に伴い、自動管理できるソリューションも普及してきています。

未来のワークフォースに関する3本の柱

総じてハイパフォーマンス企業は、従業員のみならず、将来、共に働く可能性を秘める潜在的従業員にまでパイプラインを広げた包括的なアプローチを採用しており、クライアント企業や一般との連携を図っています。今回の調査では、全般的に高い成果を上げているハイパフォーマンス企業が、急速に変化するワークフォースの力学に巧みに順応している姿が明らかになりました。

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化学業界における未来のワークフォースに関する詳細は、アクセンチュアのレポートをご覧ください。The North American Chemical Industry: Building a Workforce for Tomorrow (英語のみ)

執筆者: カリン・ウォルチャイク、ルエラ・メネゼス、およびステファニー・ロジャース


出典:
1 American Chemistry Council and Accenture Talent Management Survey, June 2016.
2 同上.
3 同上.
同上.
5 “Quota for more women in management positions: private economy,” Federal Ministry for Family Affairs, Senior Citizens, Women and Youth (Germany), 5 May 2017, https://www.bmfsfj.de/bmfsfj/themen/gleichstellung/frauen-und-arbeitswelt/quote-privatwitschaft/quote-fuer-mehr-frauen-in-fuehrungspositionen--privatwirtschaft/78562?view=DEFAULT (accessed 10 May 2017).
6 Research analysis of chemical company websites.
7 2016 Working Mother 100 Best Companies,” Working Mother, a Bonnier Corporation Company, 2016, http://www.workingmother.com/2016-Working-Mother-100-Best-Companies, (accessed May 1, 2017).
8 “New Research Finds 63 Percent of Companies Reshaping Work Strategies to Succeed in Gig Economy,“ PR Newswire, 24 October 2016, Factiva, Inc. All Rights Reserved.

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