素材・エネルギー本部で実施しているウェビナ―第4回目の開催レポートをお届けします。
アクセンチュアは2019年のテクノロジービジョンで初めて「ポストデジタル」を取り上げました。この言葉は、既にデジタルが社会に深く浸透したことを指しています。デジタルが一部の先進的な企業のものであった時代から変わり、ポストデジタル時代においてはデジタルがあらゆる企業の継続的な成長にとって不可欠なものになりました。
しかし現在、「2025年の崖」と呼ばれるように、レガシーシステムによってビジネスが阻害されるリスクに多くの日本企業が直面しています。今回のウェビナーではレガシーシステムへの有効な対応策として、進化する仕組み「Living Systems」と、「シェルコンバージョン」という基幹システムの刷新手法を紹介いたします。

既存システムの維持から、変化に適応できる仕組みへ

日本企業と海外の先進企業では、デジタル投資への考え方の違いが明白です。グローバルの先進企業はIT予算における44%をデジタル化に割いていますが、日本企業のうち40%はIT予算のうち90%を「ラン・ザ・ビジネス」、つまり既存ビジネスの維持に割いているという現状があります。(ガートナー、アクセンチュア調べ)
ですが、社会やビジネス環境は絶え間なく変化を続けています。2008年の世界金融危機以降、ITに求められる役割は大きく変わり、変化するビジネスを支え続けてきました。さらに現在はCOVID-19によって、さらに不確実性が高まり、ITは新たな変化の局面に入ってきています。
こうした社会変化の中、既存のシステムの維持・管理から手が離せない「ラン・ザ・ビジネス」の状態から抜け出し、新たな環境に適応する必要性が増してきています。

レガシーシステムを「Living Systems」へ変えるには

市場環境が激しく変化する中において、ビジネスの寿命は短命化しています。具体例を挙げると、2000年以降、S&P 500のリスト内の企業のうち、実に52%がM&Aや経営破綻によって消えているという衝撃的な例もあります。また、2020年時点でS&P 500企業の寿命は「28年」ですが、2030年には「14年」にまで短命化すると予測されています。
そして意外にも、ビジネスが短命化する一方で、企業の基幹システムのライフサイクルは長期化の傾向にあります。2007年には13.8年だったライフサイクルが、2015年には15.2%に。41%の企業が11年以上にわたって基幹システムを使い続けているということになります。

ここからビジネスとITの間にあるギャップが見て取れます。つまり、デジタル化はビジネスにおいて必須でありながら、ITがビジネスのスピードに追随できていないというジレンマが発生しているのです。
実際のところ、「レガシーシステムがイノベーションの障害になる」と考えている経営者は多いのですが、その一方でほとんどの経営者は「レガシーシステムには即時に廃止できない重要な機能がある」とも考えています。
なぜ、レガシーシステムを廃止することがそれほどに難しいのでしょうか。その主な原因は、ERPを中心に多数のアドオンが密結合し、機能間・システム間の依存関係が強くなりすぎているからです。その結果、簡単な変更や機能追加でさえも難しく、身動きが取れない状態に陥っています。
従来の基幹システムは、膨大な時間やコストをかけて構築しても、稼働した瞬間から陳腐化が始まります。また複数年にわたる再構築プロジェクトともなれば、その間のビジネス変化への対応も困難です。
そこでアクセンチュアが提唱するのは、「Living Systems(進化する“生きた仕組み”)」です。Living Systemsとは、基幹システムを一度開発して終わりではなく、そこを出発点としながら絶え間ない改善を繰り返し、市場の変化に適応できる状態を維持していく仕組みのことです。

シェルコンバージョンという新しいアプローチ手法

では、どのようにLiving Systemsを実現していくのでしょうか。Living Systemsでは、システム稼働までの「Day1」をいかに効率的・迅速に構築するかがカギになります。そこでアクセンチュアが提唱する新しい基幹システムの刷新方法が「シェルコンバージョン」です。
素材・科学業界におけるデファクト・スタンダードであるSAPを刷新する場合、今までには主に2つのアプローチがありました。ひとつは、基幹システムを新たに構築する「グリーンフィールド」と呼ばれる手法。もうひとつは、今までの基幹システムをそのまま新しいバージョンにアップデートする「ブラウンフィールド」です。そしてシェルコンバージョンは、この2つの中間に位置するアプローチ手法です。
シェルコンバージョンではグリーンフィールドで行うような業務や機能の見直しにも対応が可能ですが、最大の特徴は構築におけるリスクの小ささです。
ブラウンフィールドとの比較で言えば、ブラウンフィールドはシンプルな環境を単純移行するアプローチであり、マイグレーションにおいては本番環境で一発成功を狙うというリスクの高さがあります。一方、シェルコンバージョンは本番のコピー環境にアップグレードしていくためリスクが小さく、複雑なシステムでも業務を止めずに移行することが可能です。
新規構築と比較した際のシェルコンバージョンのメリットはめざましく、多くの企業で効果を実感されています。「費用対効果を最大化したい」「将来の拡張性と柔軟性を重視したい」「業務への影響を最小限にとどめたい」「安全にシステムを導入したい」といったケースの場合、シェルコンバージョンは有効な選択肢となるでしょう。

そのほか、シェルコンバージョンの具体的な内容や進行方向、アセスメントなどについてはオンデマンド版にてより詳しく説明されています。レガシーシステムの対応や基幹システムの刷新に関心をお持ちの方は是非ご覧ください。

広瀬 正規

テクノロジーコンサルティング本部 素材・エネルギー グループ マネジング・ディレクター


西尾 友善

テクノロジー コンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービス グループマネジング・ディレクター


中野 恭秀

テクノロジーコンサルティング本部インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービス グループアソシエイト・ディレクター​

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