サービスの利用の中心は現在の都市部なのか?
September 17, 2019
September 17, 2019
「お金は都市にある」というのが一般的な考えです。しかし、本当にそうでしょうか?サービス・プロバイダーの多くは、十分なサービスをまだ地方では提供していないようです。この事実を踏まえれば、現実的な方法で地方にサービスを展開できるプレーヤーにチャンスがあると言えます。この戦術は確かに容易ではないでしょう。しかし調査結果からは、地方でモビリティ・サービスが利用できるようになり、人々がそこに移り住み、市場規模が効果的に拡大していけば、今よりも簡単に展開できるようになると思われます。
つまり、容易に収益を生み出せないとしても、地方市場にシフトするメリットはあるのではないでしょうか?たとえば、消費者にとっても自動車メーカーにとっても、地方には渋滞が少ない、競争が少ないといったメリットがあります。では、地方市場での自動運転モビリティ・サービスの提供にいち早くシフトした場合、果たしてメリットはあるのでしょうか?以下のセクションでは、私たちの調査結果、および地方市場にシフトした際の成果を左右する消費者の見解をもとに、それがもたらすリスクとメリットについて解説します。
今回、私たちは米国、ヨーロッパ、中国の7,000人以上の消費者を対象に、将来において自動運転車が実用化した場合の居住地の選択に関して、包括的な調査を実施しました。具体的には、「通常の移動(通勤など)に完全な自動運転車を利用できるようになった場合、それが居住地を選ぶ際に影響するかどうか」「地方、郊外、または都心に移住するか、それとも現在の居住地にとどまるか」について尋ねました。
47%
都市居住者で、移住を検討すると回答した消費者の割合
75%
都市居住者で、高くても自動運転車を利用したいと回答した消費者の割合
都市居住者で、通常の移動が自動運転車で可能になった場合に移住を検討するとの回答は、全体の47%でした。一方、単に移住先として地方を検討するとの回答は11%でした。
もう1つ注目すべきポイントとして、自動車を購入する際に高くても自動運転車を選ぶとする回答は都市居住者で75%、郊外居住者では69%、地方居住者では59%という結果が得られました。このことから、高くても自動運転車を購入する人は都市居住者の方が多いものの、地方もまた無視できない数字と言えます。
次は都心と地方のいずれかへの移住を検討する人の割合を、地域別に見てみましょう。
米国では回答者の37%が、日常的な移動に自動運転車を利用できるなら移住を検討すると答えました。
ヨーロッパでは回答者の42%が、日常的な移動に自動運転車を利用できるなら移住を検討すると答えました。
中国では回答者の55%が、日常的な移動に自動運転車を利用できるなら移住を検討すると答えました。
米国の消費者は移住への関心が低い。
米国では、自動車所有者および非所有者の37%が、日常的な移動に自動運転車を利用できるなら移住を検討すると答えました。中でも移住への関心が最も高かったのは、高級車オーナー(53%)でした。
ヨーロッパの消費者の約半数が移住に前向きで、特に高級車オーナーの関心が高い。
ヨーロッパでは、自動車所有者および非所有者の42%が、日常的な移動に自動運転車を利用できるなら移住を検討するとしています。移住への関心が最も高かったのはやはり高級車オーナーで、60%に上ります。
中国では半数以上が移住に前向き。
中国では、自動車所有者および非所有者の55%が日常的な移動に自動運転車を利用できるなら移住を検討するとし、3つの地域で最も高い数値を示しました。移住への関心が最も高かったのはやはり高級車オーナーで、ヨーロッパを上回る64%となりました。
高級車オーナーは、適切な自動運転モビリティ・サービスを利用できるようになれば、居住地を変える傾向が著しく高いと言えます。
現在、大手をはじめとする自動車メーカーは都市部での自動運転モビリティ・サービスの提供に焦点を当てています。しかし、都市部から郊外や地方への移住は、多くの消費者に多大な価値をもたらします。また、適切な自動運転モビリティ・サービスが利用できるようになれば、現在の居住地を見直すという消費者もかなり多く存在します。
また、地方は公共交通手段が少ないことから、一般的に自動車に頼る傾向が強いという点も見逃せません。さらに、高級車オーナーが移住を考える傾向が著しく高い点にも注目すべきです。
自動車メーカーは都市部と郊外と地方での消費者ニーズに対応するサービスを今すぐ評価すべきです。
自動車メーカーは、郊外および地方市場で自動運転モビリティ・サービスを提供しなければ、既存の顧客を失う恐れがあります。都市部の高級車オーナーの約37%が、郊外や地方への移住を検討すると回答しているからです。
ゆえに、自動車メーカーは現在の顧客基盤を維持していくためのモビリティ・サービスインフラのパイロッティングと構築に着手することが推奨されます。
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