付加価値サービスへの高い関心
2019/09/17
2019/09/17
「今はまだ自動運転車向けの付加価値サービスを収益化できる段階ではない」というのが現時点における一般的な考えですが、私たちの調査結果や消費者の見解によると、それは市場と年齢によって異なります。以下のセクションでは調査結果をまとめるとともに、自動車メーカーやモビリティ・サービス・プロバイダーが今後やるべきこと、特に中国市場で必要とされることについて解説していきます。
米国、ヨーロッパ、中国の7,000人以上の消費者を対象に行った調査の中で、私たちは自動運転車向けの有料付加価値サービス/アップグレードに対する関心度や利用意欲について質問しました。
調査で挙げた自動運転車向けの付加価値サービスは、動画/音楽配信(NetflixやSpotify)から健康増進関連サービス(マッサージ機能付きシートなど)、ケータリング/ホスピタリティサービス(スターバックスやマクドナルド)、ホテルサービスまで多岐にわたります。また、アップグレードサービスとしては、高級車へのアップグレード、パーソナライズされたエンターテインメント、パーソナライズされた体験、健康増進関連サービス、広告の無効化などを例としました。
自動運転車の利用時に1種類以上の付加価値サービスを利用したいと回答した18~37歳の消費者の割合
非所有者 | 高級車オーナー | 大衆車オーナー | |
---|---|---|---|
米国 | 93% | 93% | 85% |
ヨーロッパ | 83% | 95% | 81% |
中国 | 99% | 99% | 99% |
5種類の付加価値サービス/アップグレードの中から、有料でも1種類以上を利用したいと回答した18~37歳の消費者の割合
非所有者 | 高級車オーナー | 大衆車オーナー | |
---|---|---|---|
米国 | 57% | 58% | 45% |
ヨーロッパ | 43% | 60% | 42% |
中国 | 86% | 83% | 85% |
全市場で見ると、高級車オーナーの96%が5種類の付加価値サービスの1種類以上を利用したいとする一方、有料でも利用したいという回答は67%にとどまりました。ただし、この結果は地域によって異なります。
大衆車オーナーの86%が付加価値サービスを利用したいとする一方、有料でも利用したいとする回答は51%にとどまりました。ここでも、結果は地域によって異なります。
非所有者の91%が付加価値サービスの利用に関心を示し、有料でも利用したいという回答は64%にとどまりました。結果はやはり、地域ごとに異なります。
関心度は高い
米国では、高級車オーナーの93%が自動運転車向けの付加価値サービス(ホテルサービス、音楽/映画配信、ケータリング、健康増進など)の1種類以上に関心があると回答しました。この割合はヨーロッパでは95%、中国では99%に達します。これらの結果は、「消費者は付加価値サービスにまだ関心がない」という現在の認識に明らかに反しています。
「有料でも利用したい」人は半数程度にとどまる
ただし、米国では5種類の付加価値サービス/アップグレードの1種類以上を「有料でも利用したい」という高級車オーナーは58%にとどまります。この質問で挙げた付加価値サービス/アップグレードは、高級な自動運転車へのアップグレード、パーソナライズされたエンターテインメント(車内でのNetflixやSpotifyアカウントの利用)、パーソナライズされた体験(音量や温度、シートポジションなどの自動調節機能など)、車載健康増進(マッサージ機能付きシートなど)、広告の無効化です。一方、ヨーロッパではこれらの有料利用に前向きな人は60%とやや高く、中国では83%とさらに高くなります。
現時点で、消費者の圧倒的多数が付加価値サービス/アップグレードを「有料でも利用したい」と考えている唯一の市場は中国です。
若干劣る関心度 米国では大衆車オーナーの85%が、自動運転車向けの付加価値サービス(ホテルサービス、音楽/映画配信、ケータリング、健康増進など)の1種類以上に関心があると回答しました。この割合はヨーロッパでは81%、中国ではまたもや最も高い99%に達しました。
有料でも利用したい人の割合はさらに少ない 米国では、5種類の付加価値サービス/アップグレードの1種類以上を有料でも利用したいという大衆車オーナーは、45%にとどまりました。この質問で挙げた付加価値サービス/アップグレードは、高級な自動運転車へのアップグレード、パーソナライズされたエンターテインメント、パーソナライズされた体験、車載健康増進、広告の無効化です。ヨーロッパではこれらの有料利用に前向きな人は42%とさらに少なくなる一方で、中国では85%という正反対の結果となりました。
高級車オーナーと同等の関心度を示している 米国では非所有者の93%が、自動運転車向けの付加価値サービス(ホテルサービス、音楽/映画配信、ケータリング、健康増進など)の1種類以上に関心があると回答しました。この割合はヨーロッパでは83%にとどまりますが、中国ではまたも99%に達しました。
有料利用に対して見られる差異 米国では、5種類の付加価値サービス/アップグレードの中の1種類以上を有料でも利用したいという非所有者は、57%にとどまりました。ヨーロッパでも有料利用に前向きな非所有者は43%にとどまる一方、中国ではやはり86%という高い数字を示し、地域ごとの差異はここでも確認されました。
結果は明白であり、「有料の付加価値サービスの利用に前向きな消費者は、中国が最も多い」と結論付けられます。
消費者の87%は、自動運転車向けの付加価値サービスの1種類以上に関心を持っていますが、有料でも利用したいという回答者は全体の約半数にとどまります。
米国同様、消費者の85%は自動運転車向けの付加価値サービスの1種類以上に関心を持っていますが、有料利用に前向きな回答者は46%にとどまります。
3つの地域の中で、中国の消費者は付加価値サービスへの関心度と有料時の利用意欲が共に最も高く、付加価値サービスに関心があるとの回答は99%、有料利用に前向きであるとの回答は84%に達しています。
調査では、音楽/映画配信、健康増進、ケータリング、ホテルサービスなどの「付加価値サービスの利用」に対する高い関心が確認されました。これを踏まえ、自動車メーカーは今後、「車に乗ること自体が付加価値サービスになるのか、それとも車に乗る際に価値を提供するさまざまな付加価値サービスを販売できるようになるのか?」という問いについて考えなければなりません。現時点では、付加価値サービスやアップグレードの有料利用に消費者の圧倒的多数が前向きなのは中国市場のみです。こうした現状に自動車メーカーはどう対処していくべきでしょうか?
ニーズが存在するからにはパイロットが必要
将来的に自動運転モビリティ・ソリューションが実現されれば、付加価値サービスは大きな収益源となるでしょう。すでにニーズがあることを踏まえ、自動車メーカーは今からパイロットを開始してサービスを充実させ、自動運転車が市場で実用化する時に備えておくべきです。
中国市場で事業を展開する自動車メーカーは別のアプローチを
中国市場で事業を展開する自動車メーカーは、車に乗るという移動手段と付加価値サービス(健康増進、宿泊、エンターテインメント、ケータリング)を組み合わせたウーバーのようなサービスのパイロットが推奨されます。こうしたアプローチによって、消費者の嗜好や価格に対する反応をうかがうことができます。さらに、メーカーは各業界の既存大手(ホテルサービスならヒルトン、ケータリングならマクドナルドなど)と連携すべきか、自社開発の付加価値サービスを提供すべきかについても検討することができます。
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