調査レポート

概略

概略

  • モビリティ・サービスの台頭は、自動車メーカーの将来的なブランド価値と、その役割に疑問を投げかけています。
  • 私たちの調査では、ブランドは今後著しいプレッシャーに直面するものの、すべてのブランドがあらゆる市場でその価値を失うわけではないことが明らかになりました。
  • 従って、自動車メーカーは顧客の声に耳を傾け、モビリティ・サービスに関する彼らの嗜好を把握して、それを中心にブランドのポジショニングを見直す必要があります。


現在の認識:ブランドという概念はまだ有効である

自動車メーカーとその経営幹部の一部は、「当社のブランド価値を生かせば、今後もモビリティの分野で成功を収められる」と考えています。一方で、自動車メーカーは航空機メーカーと同じ道筋をたどるのではないかという見方もあります。つまり、航空機の利用者が航空会社とそのサービスだけを重視し、航空機そのものはエアバスでもボーイングでも構わないと思うように、ドライバーもまたフォルクスワーゲンでもBMWでもどちらでも良いと思うようになる、といった意見が多く聞かれるようになっているのです。では、後者の意見は本当に当たっているのでしょうか?もし本当だとしたら、自動車メーカーはこうした傾向がもたらす課題に、いかにして対処するべきでしょうか?

アクセンチュアの調査:明らかになる複雑性

ウーバーやリフト(Lyft)、フォルクスワーゲン、ダイムラーなどが参入するモビリティ・サービス市場では、競争が日ごとに高まっています。そこで私たちは、7,000人の消費者(高級車のオーナー、大衆車のオーナー、自動車を所有していない人)を対象に、自動車の購入やカーシェアリング(モビリティ・サービス)の利用において、「ブランド」などの選択基準をどの程度重視するかについて調査を実施しました。

その結果、さまざまな選択基準(価格、スピード、柔軟性、快適性、環境、プライバシーなど)の中で、「ブランド」は自動車購入に際しては6番目、カーシェアリングに際しては10番目に重要な要因であることが分かりました。

ブランドの総合的な重要度――全所有カテゴリー、全市場

カーシェアリングで「ブランド」はさほど重視されていませんが、「ブランド」の重要度は国や自動車のタイプ(高級車か大衆車か)によっても異なります。メーカーはこれらの違いに基づき、個別の対応を求められることになります。



所有カテゴリー別の結果

高級車オーナー――ブランド価値が衰えつつある

高級車オーナーの場合、米国では自動車購入時に「ブランド」を3番目に重視しますが、カーシェアリングでの重要度は9番目にとどまります。同様に、ヨーロッパでも「ブランド」の重要度は購入時には4番目、カーシェアリング時には11番目とさらに低下しています。一方、中国での重要度はそれぞれ2番目と4番目となり、重要度の差異が少ない傾向にあります。

高級車オーナーにとってのブランドの重要度

大衆車オーナー――ブランド価値が急速に低下しつつある

大衆車オーナーの場合、米国では自動車購入時に「ブランド」を6番目に、カーシェアリング時には12番目に重視しており、落ち込みが見られます。ヨーロッパでも、購入時の「ブランド」の重要度は6番目、カーシェアリング時では11番目に下がります。しかし、中国では購入時の「ブランド」の重要度は5番目、カーシェアリング時は9番目となり、高級車オーナーの場合と同じく重要度の差異が少ない傾向にあります。

大衆車オーナーにとってのブランドの重要度

アクセンチュアの考察

ブランド価値だけでは足りない

カーシェアリング時の「ブランド」の重要度の総体的な低さを踏まえると、ブランド価値だけでモビリティ・サービス分野での成功はほとんど期待できません。このことは、特にヨーロッパと米国に当てはまりますが、中国では無視できない特徴があります。従って中国市場については以下に詳細を示す通り、別の考え方や対応が求められると考えられます。

現状とこれから

大手をはじめとする自動車メーカーは目下、そのブランド価値を生かしてライバルと差別化する販売・サービス価格を実現しようとしています。しかし、何も変えずに現状のまま突き進んだ場合、サービス分野における消費者マインドの「ブランド」の重要度は、今後大きく低下すると考えられます。

ブランドの重要度は総体的に低下しています。カーシェアリングに際して重視される選択基準は価格、安全性、柔軟性/可用性になっていくでしょう。この3つの要因こそ、消費者が真に求め、期待するものです。ここで問題となるのが、自動車メーカーやモビリティ・サービスのプロバイダーは、消費者の声に耳を傾けていけるかどうかです。この問いにどう答えるかによって、これからのモビリティ・サービス市場で勝利を手にするか、後塵を拝することになるかが決まります。

カーシェアリングに代表されるモビリティ・サービスにおいて、重視される選択基準は価格、安全性、柔軟性/可用性になっていくでしょう。

すでにモビリティ・サービス市場に参入しているブランドについて見てみましょう。たとえば、ウーバーのブランドは240億米ドルと評価されており、BMWの230億米ドルをやや上回っています。自動車メーカーと自動車ブランドが重要度を失っていく一方で、サービスブランドは今後も生き残っていけると結論付けられます。つまり、ブランディングの基本概念は廃れることはないと思われます。

アクセンチュアの提言

各市場の特性を踏まえ、今すぐ行動を。

カテゴリーや顧客のタイプ、国に関係なく、モビリティ・サービス市場への参入を目指すすべての自動車メーカーに向けたアクセンチュアの提言は、「今すぐ行動に移すこと。現在のリーチ力と顧客との関係を生かし、新サービスとそのブランドのポジションを見直すこと」です。ただし、カテゴリーや国によって取るべき行動は異なります。

ゆえに、自動車メーカーは市場ごとに顧客がモビリティ・サービスに「何」を求めているかを確実に見極め、その知見をもとにブランド戦略を策定する必要があります。

米国

価格、安全性、利便性

ヨーロッパ

価格、安全性、柔軟性/可用性

中国

安全性、自動車の性能、価格

全て見る

中国の高級車メーカーへの提案

中国の高級車オーナーをターゲットとする自動車メーカーにとって、購入時とカーシェア時のブランドの重要度の落ち込みは、2番目から4番目とごく小さい範囲にとどまっています。従って中国の高級車メーカーに対するアクセンチュアからの提案は、「ブランド価値を強化して、モビリティ・アズ・ア・サービスのステータスシンボルとして打ち出す」ことです。そうすることで、大きな差別化を図れるはずです。

大衆車を提供するグローバル自動車メーカーへの提案

米国、ヨーロッパ、中国の大衆車オーナーは、カーシェアリング時にブランドをあまり重要視していません。従って、大衆車メーカーがブランド価値という課題に向き合い、ブランドの価値を守る上では、次の2つの方法が考えられます。

オプション1

従来のような自動車の所有カテゴリー(高級車、大衆車、未所有)ではなく、サービスやライフスタイル製品といったより広い観点からブランディングを考える。

オプション2

「新たなモビリティ」ブランドのリーダーを目指す(中国ではすでに競争が激化しているため、ヨーロッパと米国にターゲットを絞る)。

全て見る


著者について

Axel Schmidt

Senior Managing Director, Lead – Global Automotive


Juergen Reers

Managing Director – Mobility X.0 Lead


Alexander Huber

Managing Director – Automotive


Daniel Tegtmeyer

Senior Manager – Automotive


Tobias Kruse

Business Design Director – Fjord, Regional

関連コンテンツはこちら


Subscription Center
最新コラム・調査をニュースレターで 最新コラム・調査をニュースレターで