調査レポート

概略

概略

  • 利ざやと収益の低下により、数で勝負する従来の自動車販売モデルの魅力は薄れています。
  • 顧客行動の変化は「モビリティ」という新たなコンセプトの方に有利に働いており、収益性に優れた新たなバリュープールを生み出しています。
  • 差し迫った創造的破壊を前に、自動車メーカーとディーラーは新たに顧客中心の販売戦略を策定することで、共に発展し続けることができます。


大手自動車メーカーは今、激動期を迎えています。自動車の売上は世界的に減少傾向にあり、各国政府からはCO2排出量の削減を迫られ、そしてテクノロジーの進化によって業界そのものが記録的なスピードで変わりつつあります。電化やコネクティビティ、シェアリングエコノミーの普及によって、自動車販売ビジネスはまさに創造的破壊に直面しているのです。

このわずか数年の間で、市場にはモビリティに革命を起こすべく何百もの新たなプレーヤーが参入してきました。さらに、それと並行して従来の自動車販売モデルに背を向ける顧客も現れ始めました。

アクセンチュアは、大手高級車/大衆車メーカーの経営幹部をはじめ、新規参入組やサードパーティプラットフォームプロバイダー、テクノロジー大手などを対象に、自動車業界に迫りくる創造的破壊について話を聞きました。そこで得られたさまざまな知見を総合的に踏まえ、自動車メーカーとディーラーが追求すべき3つの有望な道筋を明らかにしました。

自動車メーカーから顧客への直販

顧客はAmazonやNetflixといったデジタルプレーヤーに触発され、ショッピングやブランド体験に新たな基準を求めるようになっています。これらの例と比較してみると、自動車の購入プロセスは時代遅れなもののように思われます。これからの自動車販売ビジネスが顧客中心主義を一層強めていくことを考えると、未来の自動車は従来の販売チャネルでは、もはや販売すること自体が難しくなるのではないでしょうか。

自動車メーカーは直販戦略を用いることでエンドユーザーと直接つながり、一貫性のあるエンドツーエンドのオムニチャネル体験を提供できるようになります。ディスラプティブなメーカーのほぼすべてが直販戦略を主体としており、米テスラ、中国のニオ(NIO)、バイトンなどはその最たる成功例です。

「メルセデス・ベンツの今後の成功のカギを握るのは、顧客への新たな直販モデルかもしれない。私たちはディーラーと共に販売モデルの変革を推し進め、真に顧客中心の販売体験の実現に取り組んでいきたい」

— マーカス・ブライトシュベルツ(MARCUS BREITSCHWERDT)、メルセデス・ベンツ・バンズ社長、ダイムラー

大手自動車メーカーにとっても、直販モデルは財務面で大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。

  • 現地価格ベースで小売販売コストを最大4%削減できる
  • 典型的な中規模市場において、年間10億ドル以上のコストを節約できる
  • メーカーレベルでの正社員の増員とディーラーレベルでの正社員の減員により、全体で3~7%の正社員の減員を実現できる
  • システムとプロセスの成熟度、市場の複雑性、直販モデルの導入のタイミングといったさまざまな要因に基づき、2~4年で投資を回収できる

自動車のサブスクリプションとシェアリングモデル

自動車のサブスクリプションとカーシェアリングは、今日の顧客が求める利便性を的確に満たすことにより、目覚ましい成長を遂げています。新たなプレーヤーが業界に参入し、柔軟性に富んだ条件に加え、リーズナブルに利用できるモビリティサービスを提供しています。2010年以降、モビリティ関連のスタートアップには1,000億ユーロ以上が投資されてきました。

「過去のチャネルで未来の自動車を売ることはできない。(中略)自動車を購入して所有する従来のアプローチは、もはや時代に即したものではない」

— スティーブン・クラウス(STEFAN KRAUSE)、諮問委員会メンバー、カヌー

新規顧客の獲得やポートフォリオの多様化といったゴールを掲げる自動車メーカーが、自らモビリティプロバイダーへの転換を図ることも可能です。私たちの調査では、若い顧客層の54%が都市部での主な移動手段としてすでにカーシェアリングを利用していると回答しており、将来的にシェアリングモデルのレリバンスはさらに高まることが予想されます。

2030年までの見通し

  • カーシェアリングはマイカーの4~10倍安くなる
  • 自動車の所有率は80%低下する
  • 街頭を走る自動車の10台に1台はシェアードカーになる

プラットフォームビジネスモデル

Apple、Amazon、Facebook、Airbnbなどの成功企業は、プラットフォームエコノミーが持つ力をはっきりと証明しています。自動車販売市場でも、カーワウや米カー・グールー(Car Guru)、ドイツのmobile.deといった新たなプレーヤーは独自のプラットフォームをローンチし、個人販売事業主や専門のディーラーがそれらのプラットフォームを介して新車/中古車を多くのオンラインユーザーに販売しています。自動車メーカーがプラットフォームエコノミーを活用する方法は他にもあります。たとえば、自動車そのものをプラットフォームにするというアプローチが考えられます。AppleやGoogleがApp StoreやPlay Storeでアプリを販売して利ざやを得ているように、自動車メーカーも位置情報サービスやインフォテインメント、その他のスマートかつフレキシブルな車載ソリューションを提供すれば、新たな収益源を確保することができます。

「プラットフォームエコノミーの時代に顧客が求めているのは、ワンストップショップだ。このニーズに最も巧みに応えることができる企業こそが、未来のモビリティリーダーになるだろう」

–アレクサンダー・シクスト(ALEXANDER SIXT)、CAO兼運営委員会メンバー、シクスト(Sixt)

自動車販売の未来は刺激にあふれている

2030年までに、世界の自動車業界の収益はほぼ2倍の3,440億ドル以上に達する見通しです。この中で新たなテクノロジーは、全収益の30%に寄与するとみられています。



自動車メーカーは、顧客を中心に据えた新しい販売戦略を展開することで、この大規模なバリュープールを有効活用できるようになります。適切なテクノロジー、ツール、専門知識に投資し、業界の持続的な成長気流に乗れば、メーカーはどのような創造的破壊に直面しても、発展し続けることができるでしょう。

自動車販売ビジネスの未来は、すでに始まっています。

Axel Schmidt

Senior Managing Director, Lead – Global Automotive


​Johannes Trenka

Managing Director – Accenture Strategy, Customer Insights & Growth Strategy

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