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デジタル時代において求められる真の顧客体験とは

デジタル化により企業と消費者との関係性が激変した今、本当の意味で良質な顧客体験を提供するために何をすべきなのでしょうか?

ビジネスの主導権は企業から消費者へ

澤ひそか

アクセンチュア・インタラクティブ
シニア・マネジャー
小澤ひそか

関根佑輔

アクセンチュア・インタラクティブ
シニア・マネジャー
関根佑輔

デジタル時代の今、ビジネスの主導権は企業から消費者へと移り変わったと言えます。

過去、ビジネスの主導権は企業側にありました。マーケティングの手段がマスメディア中心だった頃は、企業が発信するメッセージを基に、消費者はさまざまな商品・サービスの購入を決める、という企業から消費者への一方通行型のマーケティングが主流でした。

翻って、現在。ソーシャルメディアの登場やオウンドメディアへの注力により、企業はマスメディアを介さずとも、また、小売業やサービス業ではなくとも、あらゆるタッチポイントでいつでも直接消費者と繋がることができるようになりました。一方、消費者は自らの体験をソーシャルメディアで積極的に発信・共有するようになり、ネット上の商品レビューや口コミは購入の意思決定において、マス広告の3-5倍の影響力を持つまでになっています*1。しかし、それは、ひとたび消費者が商品・サービスに不満を抱けば、瞬く間にその失望体験は世に広がり、ブランド価値の低下、さらには業績悪化を引き起こすことと表裏一体であり、企業は従来以上に最終消費者の存在を意識せざるを得なくなっています。

また、GoogleやAmazonなどの良質なサービスが生活に浸透し、消費者の企業に対する期待値は、無意識的に高まっていると言えます。少しでも気に入らないことがあれば、気軽にブランドスイッチをする”気まぐれな”消費者が増えた今、どの業界業種かに関わらず、最も優れた体験を提供する企業が選ばれるようになっています。その意味では、企業はまさに業界問わず、”顧客体験競争”に突入していると言えるでしょう。

パーソナライズマーケティングが顧客体験の質を決める

では、企業はどのようにして顧客体験の質を高めていけばよいでしょうか。

顧客体験とは、詰まるところ、商品・サービスの検討・購入・利用における個々人の体験の集合体であり、Aさんにとって最高のサービスも、Bさんにとってはそうではない、ということが起こり得ます。また、体験の良し悪しも、その人の置かれている状況やタイミング、場所などにも影響を受けるため、前回上手くいったことが今回も上手くいくとは限らないところにその難しさがあります。

従って、顧客体験を高めるためには、その商品・サービスへの需要が見込める人(=Right Targeting)に対して、需要が高まるタイミングで(=Right Timing)、需要を喚起するのに適切なチャネルから(=Right Channel)、実際に狙った行動を起こしてもらうための”心に響く”メッセージ(=Right Content)を届けること、すなわち、パーソナライズマーケティングが必要不可欠です。


パーソナライズマーケティングが顧客体験の質を決める

パーソナライズマーケティングの進化形態は3つある

アクセンチュアは、デジタル時代におけるパーソナライズマーケティングには3つの進化形態があると考えています。

1つ目は、一人ひとりの顧客を識別し、彼らとの接点が生じる度にパーソナライズマーケティングを実施できる仕組が、自社内で出来上がっている状態です。

例えば、旅行代理店であれば、既顧客を一つのIDで管理し、店頭であれ、コールセンター、Webサイトやアプリであれ、一人ひとりの顧客の接点・購買履歴がCRMに格納されています。また、DMPとも連携し、顧客が自社のWebサイト以外で、何を閲覧し、今どんなことに興味・関心があるのか、も把握できている状態です。

そして、過去の接点・購買履歴や興味・関心データに基づき、旅行ニーズが高まっているだろう顧客を特定し(=Right Target)、その人が旅行に行きたくなる季節やタイミングに(=Right Timing)、その人がよく使うチャネルから(=Right Channel)、その人がよく行く、またはまだ行ったことのない旅行先や気に入るだろう旅行プランを提案します(=Right Content)。もし顧客の反応が芳しくない場合は、属性や行動パターンが似ている別の顧客の接点・購買履歴を参考し、別の提案をします。このサイクルを有機的に統合されたマーケティングソリューションを駆使して、スピーディに何度も繰り返し、それぞれの顧客に合った体験を提供するのです。

現在、多くの日本企業はこの1つ目の進化形態を目指し、組織や業務、プラットフォームの再構築をしている途中です。しかしながら、パーソナライズマーケティングはここで終わりではないとアクセンチュアは考えています。

真のパーソナライズマーケティングの実現は1企業では困難

パーソナライズマーケティングの2つ目の進化形態は、業界を超えた複数の企業群が、継ぎ目のない顧客体験を実現するために小さなエコシステムを形成している状態です。

先ほどの例では、旅行代理店の視点から、旅行におけるパーソナライズマーケティングを論じましたが、それは本当の意味でパーソナライズマーケティングではありません。

なぜならば、”旅行をする”という顧客の一連の体験において、旅行代理店が担っている機能は、旅行を計画し、航空券やホテル、ツアーを予約する、というごく一部を担っているに過ぎないからです。自宅を出発してから現地のホテルに着くまでの旅行体験を想像してみても、公共交通機関やタクシー会社、空港、航空会社(グラウンドスタッフ、キャビンアテンダント)、現地のタクシー会社、ホテル、レストラン、など旅行代理店以外の業種・企業が多く関わっています。

ここで重要なのは、それぞれの企業からしてみたら自分たちの事業の範囲内でベストを尽くしているつもりでも、旅行者の立場になってみるともっと顧客体験の改善の余地はあるかもしれないとうことです(下図*2)


真のパーソナライズマーケティングの実現は1企業では困難

業界を超えた企業間連携に新たな顧客体験の可能性

では、旅行に関連する異業界の企業が、One IDで統合された顧客データを基に連携できたら、どのような体験が実現できるでしょうか。

例えば、自宅からの出発日時や目的地が決まっているのであれば、事前に旅行会社とタクシー会社が連携して自宅前までお出迎えにあがり、当日の渋滞状況を加味して最適なルートで空港までお連れすることができるかもしれません。また、空港に着き次第、チェックインカウンターの案内が手持ちのスマートフォンに通知されたり、カウンターで並んだり、その場で席や荷物の確認をされたりせずにチェックインが完了できたりしたら、空港での手続きの煩わしさが少しは軽減されるかもしれません。

他にも、搭乗前に機内食のメニューが選べたり、空港内で機内食と料理が被らないレストランが案内されたりしたら嬉しいかもしれませんし、機内で選べる映画は、過去の映画閲覧履歴からその人が興味を持ちそうなものが優先的に表示されたり、前回機内で観ようと思って見逃した映画が観ることができたりしたら、気分が高まるのではないでしょうか。

現地の空港に着いたら、あとどれぐらいで自分の荷物が出てくるかわかれば無駄にイライラしなくて済むかもしれませんし、タクシー運転手に片言の英語で目的地を伝えずともホテルに連れて行ってくれたら楽かもしれません。ホテルに着いたら、そもそもチェックインが不要で、ホテル到着のタイミングに合わせ、室内の空調が整えられ、バスタブの好みの温度でお湯が溜まっていたら、なんと快適なことでしょう。

このように、顧客の体験軸で、関連する業界の企業が連携し、一人の顧客に対してその人の文脈や興味・関心などに合わせて継ぎ目のないサービスを提供できれば、1企業では実現しえないような顧客体験が創出でき、関わる企業群に競争優位をもたらすことが考えられます*3


究極的には顧客の体験全体が最適化される

パーソナライズマーケティングの最終形態は、顧客体験を軸とした小さなエコシステムが結合し、顧客の体験全体が最適化されることです。

旅行に限らず、今後、従来の業界軸ではなく、顧客の体験軸で企業間連携が加速することが予想されます。例えば、”健康を維持する”という体験軸で、病院、製薬会社、薬局/ドラッグストア、スポーツジム、生命保険会社、ウェアラブルデバイスメーカーが連携することは容易に想像でき、実際に一部で企業間連携は進んでいます。

また、一つの体験だけでなく、複数の体験に跨って異業種の企業が連携することも予想されます。

わかりやすい例でいえば、”移動する”と”買い物をする”という体験は親和性が高い組合せです。実際に海外ではアクセンチュアの支援の下、VisaとPizza Hutが組み、移動中の車の運転手に対し、Pizza Hutの店舗が近づくと通知がカーナビに届き、車内でピザのオーダーができるとともに、店舗に到着したタイミングで車までピザを届けてくれるサービスの実証実験を開始しています*4

仮に複数のエコシステムが結合した場合、パーソナライズマーケティングはどう変化するのでしょうか。

例えば、Aさんは海外旅行から帰ってきたばかりで高額な出費を控えようと思っているかもしれません。その場合は、旅行前にどんなに自動車メーカーのHPを訪れ、とある車種に興味を示していても、今は自動車のDMを送るのは控える、ということができるでしょう。逆に、旅行中で初めて体験したスキューバダイビングに魅了されたのであれば、今度は国内のスキューバダイビンググッズをメーカーは訴求してもよいかもしれません。いずれにせよ、消費者は、そうした”気遣い”や”おもてなし”ができる企業を積極的に選ぶようになり、より一層パーソナライズマーケティングがビジネスの成否を分けることになるでしょう。


社内変革と並行して企業間連携を早めに模索する

既に述べたように、多くの日本企業は、パーソナライズマーケティングの仕組化を検討または着手している段階であり、なかなかその先にある業界を超えた企業間連携まで意識がいかないかもしれません。しかしながら、1企業がカバーできる顧客体験の範囲は限定的であることが多く、自前主義にこだわると取組が途中で頓挫してしまうケースが見受けられます。従って、早い段階で顧客の体験軸での企業間連携を模索するのが、結果として社内の変革を加速させ、日本企業の本来の強みである”おもてなし=パーソナライズマーケティング”の成果をより早く確実に享受できるのではないでしょうか。

*1:アクセンチュア・インタラクティブのGlobal Consumer調査(2016年)より

*2:アクセンチュア作成

*3:アクセンチュア作成

*4: https://www.visaeurope.com/newsroom/global-news/detail?id=2021674

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