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ERPはアプリケーションからプラットフォームへ

デジタル・トランスフォーメーションのロードマップとしてエンタープライズのデジタル化は最も重要なテーマです。

「System of Record」から「System of Interaction」へ

製造・流通本部
マネジング・ディレクター
橘田 裕子

デジタル化が加速する中、ERPは変革の時を迎えています。従来の機能を超え、顧客起点でエコシステムまで包含した新しいプラットフォームとして構築する。デジタルエンタープライズの実現は、デジタル世界で勝ち組になるための最優先課題と言えます。ERPはこれまで各企業「内」の業務プロセス・システムの標準化、統合化を推進するためのツールとして、また、取引データの整合性を担保する「System of Record」の意義で活用されてきました。しかし、外部のデジタル世界と各企業の境界が薄まり、よりフラットに繋がるデジタル世界の進化に対して、ERPも無縁ではいられません。デジタル世界に対応するERPでは顧客や消費者、取引先、IOTの先につながる機器などのEcosystemも包含した形で、企業「内」「外」含めたプロセスの最適化を考え、付加価値の創出を可能とするプラットフォームであることが求められてきます。

アディダスでは、消費者が自身の好みに応じてスマホアプリでスポーツシューズのデザインをできるサービスを提供し、個々のデザインに応じた生産を開始しています。しかも、顧客に即日・翌日で届けられるよう、「スピードファクトリー」というオートメーション化され効率的なマスカスタマイゼーションを可能とする工場をドイツ国内に立ち上げたのです。*1従来のバリューチェーンは、事前にトレンドを予測しマス用の商品を設計、長期のサプライチェーンを前提とした低賃金諸国による生産、グローバルのロジスティクスを経て、ようやく店頭での販売となり期間も距離も長いものでした。スピードファクトリーでは、モバイルでリアルタイムに顧客需要を捉え、その顧客カスタマイズオーダーに基づき即座にマーケットに近い工場で生産し、顧客に届ける一連の流れをデジタルで連携する革新的なプロセスを実現しています。スピードファクトリーの背景にはドイツが国家的に推進しているIndustrie4.0があります。Industrie4.0で工場生産機器をIOTでつなぎ、サイバー・フィジカル生産システムやセマンティック・プロダクト・メモリーの導入によるソフトウェア中心の工場制御を行い、モバイルからのカスタムオーダーとリアルタイムに繋ぐことが可能になったのです。消費者の世界だけでなく、生産などを含めた各企業内の仕組みもデジタル化が進むことで、その屋台骨となるERPも求められることは変わってくるはずです。他の例では、今後増えてくるトレンドだと考えていますが、AR(Augmented Reality拡張現実)を活用した工場設備等メンテナンスがあります。作業員がSmart Glassを通じて原因部品の推測、直近のメンテナンス時期などを現場で把握し、マニュアルや作業ステップのビデオを確認しながらその場でメンテナンスを行います。

Smart Glassで指示を出すことにより、メンテナンス作業の効率化、コスト削減を実現し、また新しく雇ったスタッフでもより早く作業ができます。*2

ARをビジネスで活用するためには、Smart Glassで得る画像データや設備に付随するIOTデータ、ERPの設備メンテナンス履歴など複数のデータソースを統合しての状況把握・原因の解析、インタラクティブなリアルタイム連携が前提になります。

エアバスでは、アクセンチュアが提供するアイウェア・テクノロジーによって、バーコード・スキャン、クラウドからのデータ取得、音声コマンド、AR(拡張現実)といった多彩な機能とインタラクティビティが実現しています。

上記の例を見てもわかるように、ERPは従来のSystem of Recordを超えて、System of Interaction(顧客、消費者、取引先、IOTなどのEcosystemとの相互やり取り)を担う必要性が出てきます。

一方、日本企業においては現状のERPに課題を抱えているケースもあります。過去にERPは導入したが多くのアドオンにより標準機能を活かせていない企業、会計など限定的にERP導入したものの、その他の仕組みは個別最適で積み上げてきた結果、システム全体としては煩雑になってしまっている企業からの相談をお受けすることがよくあります。高いTCOかつ、身動きがとりづらく柔軟性が低い基幹システムとなっており、刷新の機会を考えつつも、複雑化したシステム全体をどう変えていけばよいのか、何を効果として経営陣の合意をとっていけばよいか悩んでおられます。あくまで従来のERPの範囲にとどまって標準化を進めTCO削減を目標に据える企業様もありますが、デジタル化が進む世の中で将来に向けてその土台を作りにシフトしていくことを考え始めている企業様も徐々に増えている実感はあります。

第4世代ERPとは

ERP業界では、デジタル化の進行を見据えた新たなERPのあり方が模索されており、SAP社のS/4 HANAをはじめとして、各ERP企業でまさに形、そのコンセプトが生み出されつつあります。

アクセンチュアでも新しいERPのあり方を「High-Velocity ERP」という名前で定義しており、第四世代のERPと捉えています。


The Backbone of a Digital Enterprise


自社のプロセスやオペレーションを統合化し、効率化することを目的としていた従来のERPから、自社をとりまくEcosystemを含めた最適化までにその範囲を拡大します。Ecosystem(Mobileでつながる顧客や消費者、サプライヤーや取引先、IOTでつながる設備や機器等)と直接かつリアルタイムに相互連携し、企業として付加価値サービス・商品を提供していくための土台となる「デジタルエンタープライズ」の実現を目的とするという点が第四世代ERPの特徴です。ERPは「アプリケーションからプラットフォーム」に確実に転換しているのです。

High-Velocity ERPがもつべきケイパビリティは何か。

Digital Enterpriseの実現に対し、High-Velocity ERPが提供していくべき4つの要素があるとアクセンチュアでは考えています。

  1. より早く:ERPへの投資に対してより早いビジネス上のリターンを可能にすること。そのためにはリアルタイムで動くデジタル世界に対応するため、ERPもより早く、究極的にはリアルタイムの処理を可能とすること

  2. より賢く:各プロセスや処理にアナリティクスを埋め込み可能とすること。そのためにはデータの統合が重要であり、SCMや財務など領域毎にデータは統合され分析のためにアクセス可能とすること

  3. よりアジャイルに:ビジネス上の付加価値を出すようなシステム・アプリケーションに関してはその成果の実現を実感し、意識しながら導入をすすめられること

  4. コネクテッド:Ecosystemの顧客・消費者、取引先、IoTで繋がる機器、外部ソリューションにシームレスつながり、イノベーションの後押しができること

High-Velocity ERPの姿はどのようなものか。


このようなケイパビリティをもつERPはどのように実現されるのでしょうか。重要なケイパビリティの一つにリアルタイム性がありますが、Digital世界の中でリアルタイムに動く顧客/消費者の要望に対して、企業側がリアルタイムに処理、回答できなければその時点で取引は成り立たず、終了してしまうことになります。

個別最適で積み上げて作ってきた日本のシステムにありがちなシステムの二重化・重複、システム毎に異なるデータ、オンラインではなくバッチ処理での判断、これらは全てリアルタイム性という観点では足枷になります。ですから、リアルタイム性の実現に向け、システムの統合、データの統合、より早い判断を導くための業務処理ルールの変更などが求められるでしょう。

また、アナリティクスを活用していくために、大量データのリアルタイム分析を可能とするような超高速データベースの活用も検討すべきです。そして、分析すべきデータが分散していたり、システム間でデータが不整合している状態では、どんなにすぐれたエンジンを持っていても活かすことはできません。そのために、アナリティクスの観点からもSCMやFinanceといった領域毎のデータは統合化が求められます。

スピードに関していえば、Digital世界で起きるビジネス、テクノロジー両面の進化から破壊的な変化に備えるための方法として、バックエンドとフロントは切り離して2層構造とするという考え方があります。フロントアプリケーションは外部環境の変化に応じて柔軟に変えて対応していかねばならないため、システム変更の影響が大きく腰が重くなりがちなバックエンドと切り分けることでよりスピーディな対応が可能となるのです。画面、プロセス、DBすべてが密結合で統合管理されていたERP Suiteから、フロントアプリケーションに関してはバックエンドと疎結合につないで柔軟に作り変えていけるアーキテクチャを検討すべきです。疎結合のアーキテクチャとするため、APIを管理するミドルウエアの位置づけ、その活用ルールについての重要性が増します。フロントはビジネス価値を意識しながらも、移り変わりの激しさからクラウドサービスをうまく使いこなしていくマインドセットも求められますし、バックエンドについては逆にできうる限りシンプル化し、疎結合にフロントとつなぐ際の複雑性は排除していくべきです。

下図はHigh Velocity ERPの階層を示していますが、これらがコンセプトに従い全体設計され、モジュール化されながらしっかり統合されていることがデジタルエンタープライズ構築の鍵となります。


High-Velocity ERPの姿はどのようなものか。

High-Velocity ERPを実現するアプローチ


既存のERPとは考え方が大きく異なることから、ゼロベースに近い形で自社への適用、活用方法について検討する必要があります。そのために、まず大きな方向性を導きだすための議論を行い「デジタル トランスフォーメーションのロードマップ」を策定することを弊社では推奨しています。業界のビジネス・テクノロジートレンド、デジタルの最新テーマ、High-Velocity ERPの業界別システムアーキテクチャ、バリューチェーン毎のイノベーションアイディア、SAP社のS/4など先進ERP製品のRoadmapなどをインプットに、「どう未来を形作るか」という変革者の視点で討議を重ねることが必要です。

その結果を人やプロセス、テクノロジーを含めたハイレベルな変革・導入プランに落とすことが第一歩となります。

また、第四世代のERPプラットフォームに適した製品を選ぶことも重要になってきています。従来のERPはSystem of Recordの世界である意味コモディティ化してきており差別化要素が少なくなってきていましたが、デジタル世界で差別化できるフロントソリューションや、フロントとバックの柔軟かつスピーディな連携、クラウド対応などカバーすべき領域が増えて発展しており、そのコンセプトが実現できる製品、もしくは継続的に投資して、デジタル世界に価値を発揮できる次世代ERPとしての成長が見込める製品、ERP企業を選ぶ重要性が増してきています。

日進月歩のデジタル世界を完全に予測することは難しくトライ&エラーでチャレンジして経験値を重ねていくことも必要ですが、企業全体として一歩引いて大きな視点でトランスフォーメーションの検討を開始することは大きな意義、将来の差につながると考えます。


High-Velocity ERPを実現するアプローチ

*1 : Adidas News Stream,アディダス、業界を変える工場「スピードファクトリー」による、初のFuturecraft(フューチャークラフト)シューズを発表(2016/9/23)http://news.adidas.com/jp/Latest-News/adidas-futurecraft/s/f248c396-427f-4e87-9b61-bd625e76014f(最終閲覧日:2017/8/23)

*2:エアバス:ウェアラブルで新たな飛躍https://www.accenture.com/jp-ja/success-airbus-wearable-technology(最終閲覧日:2017/8/23)

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