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アクセンチュア・ジャパンのデジタル コンサルティング部門が読み解くTech Vision 2014

グローバルの年次レポートの最新版「Technology Vision 2014」をアクセンチュア・ジャパンが独自の視点で解説。果たして企業はデジタル化時代にどう生き抜いていけばよいのか。

概要

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アクセンチュア株式会社
デジタル コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
立花 良範


アクセンチュアがグローバルでこのほどまとめた年次レポートの最新版「Accenture Technology Vision 2014」では、前年度版(同2013)に引き続いて“すべてのビジネスがデジタルに”を主題に据えた上で、新たなテクノロジー・トレンドを踏まえ、独自の視点でビジョンを示しました。果たして企業はデジタル化時代にどう生き抜いていけばよいのか。その道標となる情報をお届けします。

デジタル化の進展で大企業が復権へ
アクセンチュアが2014年5月15日に日本語版を公開した最新年次レポート「Accenture Technology Vision 2014(クリックで特集サイトが開きます)」は、デジタル・テクノロジーが今後数年間にビジネスにもたらすインパクトをさまざまな視点でとらえ、6つのトレンドを導き出しました。本稿では、日本の皆さまに向けて、アクセンチュア・ジャパンのデジタルコンサルティング本部マネジング・ディレクターの立花良範がこのレポートを解説します。

Technology Vision 2014では、前年度版に引き続き、“すべてのビジネスがデジタルに”を主題に掲げています。本年度版はそれに、“デジタル化時代の創造的破壊者へ”という副題を付けました。これは、今後デジタル化の進展が大企業の復権をもたらすとアクセンチュアではみているからです。

もう少し具体的に言うと、これまでのデジタル化はAmazon.comやGoogleが代表するようなWebサービスを手掛ける企業が主導してきました。デジタル・テクノロジーのプレイヤーが既存市場を侵食するという構図です。そうしたプレイヤーは大規模な投資を一気呵成に行って、ユーザーにとって吸引力の高い“場”を作り出し、その場をテコに多くのサービスを立ち上げてデジタル化をけん引する。そうして、リアルビジネスにも侵食を図ってきたわけです。

これに対しテクノロジーの新興企業ではない、いわゆる伝統的な大企業は、これまでそうした動きを横目で眺めてきました。ところが、そうした大企業はここにきて、「自社の持つ膨大な顧客ベースや設備などのビジネス資産は、デジタル化時代にも生かせるのではないか」と考えるようになっています。デジタル・テクノロジーとビジネス資産の組み合わせによって新たな価値を創造することで、大企業が復権を遂げる可能性が大いに出てきたわけです。この動きはまさしく、デジタル・テクノロジーとビジネス資産の活用による“破壊的創造”につながる。そのようにアクセンチュアではみています。

ここからはTechnology Vision 2014でアクセンチュアが導き出した6つのトレンドについて、事例を交えて1つずつ解説していきます。

トレンド1:デジタルとリアルの融合

1つ目のトレンドは、「デジタルとリアルの融合:インテリジェンスをリアルとの境界へ拡張」です。これは、現実世界のあらゆる行動・事象が、モノ・端末・機械を通じてデジタル情報として吸い上げられ、消費者や企業にリアルタイムに還流することで、その行動や判断の最適化や迅速化を促進する――というトレンドです。

事例として、アクセンチュアがPhilips社と共同研究している取り組みを紹介しましょう。Google社が開発する眼鏡型ウェアラブル端末「Google Glass」を医療現場に応用する取り組みです。

たとえば外科医は、患者と対面する前から、手術室に向かって歩いていく途中でGoogle Glassを介して患者の状態を確認することが可能です。手術中も、患者から目を離したり手を止めたりすることなく、Google Glassに映し出された患者のバイタルサインをモニターしながら異変に対応することができます。

図1 「Google Glass」を医療現場に応用する取り組み(画像をクリックすると拡大画像が開きます) 【図1 「Google Glass」を医療現場に応用する取り組み(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

この事例は、リアルな実体である患者の情報が、デジタルに写像されて「個」として統合されたデータになり、手術前や手術中に活用されるという、まさしくデジタルとリアルが融合した形です。特に、デジタル・テクノロジーによるインテリジェンスをリアルとの境界でフル活用した事例といえるでしょう(参考リンク:この取り組みの動画をYouTubeで公開しています)。

[トレンド1]デジタルとリアルの融合:Accenture Technology Vision 2014特集サイトもご覧下さい

トレンド2:ワークフォースからクラウドソースへ

2つ目のトレンドは、「ワークフォースからクラウドソースへ:ボーダレス・エンタープライズの出現」です。優れた人材や外部の資産が、場所や所属する組織を問わずにインターネットを介して企業とつながることで、企業の課題解決やイノベーション創出のための原資になるという意味です。

クラウドソースの“クラウド”はCloud(雲)ではなくCrowd(群衆)を指しています。これまで企業におけるリソース活用は組織に閉じたものでした。今後のリソース活用は、インターネットを介してつながるCrowdの中で圧倒的な量と質を兼ね備えたヒト・モノ・カネの活用へと変革される――このようにアクセンチュアはみています。

これからはCrowdによって新たな事業やサービスが創出されるようになるでしょう。その代表的な動きが、資金などリソースの新たな調達手段として注目されているクラウドソーシングだといえます。

事例として、Appirio社が運用するクラウドソーシグ型の開発プラットフォーム[topcoder]を紹介しましょう。[topcoder]はもともと競技プログラミングサイトとして出発したもので、現在はユーザーインタフェース(UI)およびユーザーエクスペリエンス(UX)のデザイン、ソフトウェア開発、データサイエンスの3つの分野で世界最高レベルの品質のスキルを調達可能にするコミュニティを形成しています。

図2 世界最高レベルの品質のスキルを調達可能にするコミュニティ[topcoder]エコシステム(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

【図2 世界最高レベルの品質のスキルを調達可能にするコミュニティ[topcoder]エコシステム(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

具体的には、依頼主が[topcoder]に仕事を発注すると、同サイトに登録している世界中の腕利きのプログラマーたちが競ったり手を組んだりして高品質な成果を上げてくれる仕組みです。現在、220カ国から約60万人のスペシャリストがコミュニティに参加しており、[topcoder]の巨大なエコシステムを実現しています。腕利きのプログラマーを発掘する場にもなっており、クラウドソースを活用することで新たな変革が起こっている典型的な事例といえるでしょう。

ここで、日本においてのクラウドソーシングの成熟に向けた障壁について触れておきたいと思います。日本でクラウドソーシングを普及・活性化させる上では、人材や法規制などの障壁が少なくないことから、テーマを絞って取り組むことが肝要です。

クラウドソーシングにおけるチェックポイントを挙げておくと、まずソーシング元(受託側)では、ソーシングスキルの向上やソーシングマーケットの理解、さらに規制緩和や情報のオープン化といった点に留意しなければなりません。

一方、ソーシング先(委託側)では組織や働き方における柔軟性がポイントになります。また、デジタル・プラットフォームでは委託側の要求と受託側の成果レベルにおいて食い違いが生じないように留意しなければなりません。つまり、ソーシングしやすいプラットフォームを形成する必要があるということです。

[トレンド2]ワークフォースからクラウドソースへ:Accenture Technology Vision 2014特集サイトもご覧下さい

トレンド3:データ・サプライチェーン

3つ目のトレンドは、「データ・サプライチェーン:循環する“情報”」です。企業が扱うデータの循環サイクルに、物流におけるサプライチェーンの考え方を導入するというトレンドです。

サプライチェーンマネジメントが単一の企業に閉じることなく物流の川上から川下までを統合的に取り扱うのと同様に、データ・サプライチェーンについても、提携するパートナー企業をはじめとした外部のデータとつなげることで、“デジタル・エコシステム”の大循環を作り出す取り組みが加速しています。具体的には、データの「収集」「加工」「管理」「利用」というプロセスからなる一連のサイクルにおいて、各プロセスで適正な処置を施した上で、全体を効率良く回せるようにデザインします。

各プロセスにおける適正な処置とは、例として以下が挙げられます。

  • データの「収集」:社内だけでなく社外も含めて必要となる情報源を特定し、それを取得するサイクル、粒度、手段などを定義・確立する。

  • データの「加工」:集めたデータをクレンジングしたり変換したり、分析して得られたインサイトを付加したりする。

  • データの「管理」:データ管理ソリューションを選定・構築する。また、運用コスト効率の最適化や、データ管理の自動化・自律化に取り組む。

  • データの「利用」:データフォーマットを定義したり、社内外でデータをつなぐためのAPI(Application Programming Interface)を定義したりする。また、分析結果を活用するとともに、さらなるデータ活用施策に取り組む。

このトレンドの事例としては、中小規模のEコマース会社を対象に資金を融資するKabbage社と大手運送会社のUPS社の協業を紹介しましょう。両社は、強力なパートナーシップのもと、発送データを活用した貸付審査エコシステムを構築しています。具体的には、Kabbage社がUPS社の出荷・発送データから融資先が扱う商品の出荷状況を把握することで、融資の判断に役立てる仕組みです。

図3 中小規模のEコマース会社を対象に資金を融資するKabbage社と大手運送会社のUPS社の協業(画像をクリックすると拡大画像が開きます) 【図3 中小規模のEコマース会社を対象に資金を融資するKabbage社と大手運送会社のUPS社の協業(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

つまりKabbage社は、UPS社のトランザクションデータを、自社が持つ信用履歴などと照らし合わせることにより、融資判断の精度を向上させているわけです。複数の企業が連携して“データ・サプライチェーン”を構築し、効果を上げている事例だといえます。

[トレンド3]データ・サプライチェーン:Accenture Technology Vision 2014特集サイトもご覧下さい

トレンド4:ハイパースケールを味方につける

4つ目のトレンドは、「ハイパースケールを味方につける:ハードウェアの復権」です。ハードウェアの高性能化および低価格化によって超大規模なコンピューティングリソースを確保できるようになり、それがビジネスの競争優位につながる可能性が大きくなっています。

すべてのビジネスにおいて、ハードウェアを適材適所に用いた“ハイブリッド型のハイパースケール・システム”が競争力の分かれ目になる――このようにアクセンチュアはみています。だからこそ、ハードウェアの復権なのです。

ここで言う“ハイブリッド”とは、コモディティ・ハードウェアと専門ハードウェア、プライベート・クラウド・アーキテクチャとパブリック・クラウド・アーキテクチャなど、さまざまな要素の組み合わせを指しています。最適な組み合わせを選ぶことによって、最大の効果を引き出すことが可能です。

したがって、今後は「どのようなハードウェアを選ぶか?」という目利きがビジネスの競争力に大きく影響する可能性があります。ハードウェアが汎用化し、ソフトウェアに価値が偏在化するという時代を経て、いま再びハードウェアが復権しようとしています。これからはハードウェアのパフォーマンスがビジネスのパフォーマンスに直結すると言っても過言ではないかもしれません。

このトレンドの事例としては、高性能なアプライアンス(特定用途に専用化することで性能を高めたコンピュータ)を活用し、卓越した在庫回転率を実現した家庭用品メーカー大手のユニリーバ社のケースを紹介します。同社では全世界から収集される46億レコード(27テラバイト相当)のデータを高性能アプライアンス上で分析することで、在庫配分をリアルタイムに最適化しており、同業種では非常に高い6.5という在庫回転率を実現しています。

図4 ユニリーバ社の高性能なアプライアンスの活用による、卓越した在庫回転率の実現(画像をクリックすると拡大画像が開きます) 【図4 ユニリーバ社の高性能なアプライアンスの活用による、卓越した在庫回転率の実現(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

なぜ、同業他社より圧倒的に高い在庫回転率を実現できるのか。それは、販売情報の扱い方に決定的な違いがあるからです。他社の多くは、前年同月もしくは前月、あるいは直近でも数日前に小売店から受け取った注文の情報に基づいて在庫を調整しているのに対し、ユニリーバ社は小売店のレジから直接入手したリアルタイムの販売情報を基に在庫を最適化しているのです。

そしてユニリーバ社は、その大規模データ(いわゆるビッグデータ)のリアルタイムでの分析を、インメモリ型データベースのSAP HANAプラットフォームを採用したアプライアンスで実現しています。逆に言えば、そうしたハードウェアプラットフォームがあるからこそ、卓越した在庫回転率を達成できているわけです。まさにハードウェアの復権を象徴した事例といえるでしょう。

[トレンド4]ハイパースケールを味方につける:Accenture Technology Vision 2014特集サイトもご覧下さい

トレンド5:アプリケーションビジネス

5つ目のトレンドは、「アプリケーションビジネス:ソフトウェアを競争力の源泉に」です。最前線・最先端のニーズに応える“アプリ”を実現し続けることが、企業にとって競争力の源泉になるという新しい潮流が起きています。この潮流に乗るには、ソフトウェアを迅速に開発することに加え、外部公開を前提としてAPIを定義して開放することで、他社や業界を巻き込んだエコシステムを作り出す取り組みが不可欠です。

ソフトウェアにおいて、これから非常に重要になるのは、カスタマーエクスペリエンス(CX)と呼ばれるユーザーとの接点です。カスタマーエクスペリエンスをどのようにデザインしていくか。それが、デジタル化時代を生き抜こうとする企業にとって大きな勝負どころになってきます。そして、カスタマーエクスペリエンスに基づくAPIをどんどん外部に公開していくことによって、デジタル・ビジネスの創出に向けた新たなエコシステムを形成していくのが望ましい姿といえます。

このトレンドの事例としては、マネックス証券のAPI公開による顧客サービスの拡充が挙げられます。同社では、APIを社外公開して顧客自身でのアプリケーション開発を促すとともに、開発されたアプリケーションを流通させるアプリケーションマーケットを構築することで、ユーザビリティ(顧客満足度)を高めています。

図5 マネックス証券のAPI公開による顧客サービスの拡充(画像をクリックすると拡大画像が開きます) 【図5 マネックス証券のAPI公開による顧客サービスの拡充(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

具体的な取り組みとしては、APIを公開することで顧客(個人トレーダ)側でのトレーニングアプリケーション作成を促進したり、個人トレーダが作成したアプリケーションをマネックス証券が買い取り、他の顧客にもアプリケーションマーケットで一般公開したりしています。

優秀なトレーダが顧客目線でアプリケーションを開発することになり、アプリケーションのユーザビリティが飛躍的に向上するとともに、顧客を巻き込んだアプリケーション開発によって、自社提供ではカバーできない多様なニーズへの対応が可能になったということです。

[トレンド5]アプリケーションビジネス:Accenture Technology Vision 2014特集サイトもご覧下さい

トレンド6:回復力をデザインする

6つ目のトレンドは、「回復力をデザインする:“障害ありきの開発”がノンストップ・ビジネスのカギに」です。デジタル・ビジネスの重要性が増すほどに、故障や攻撃などの有事においても“Always ON”を維持するITインフラと、セキュリティを継続して担保することが、ビジネス自体の継続性に直結するようになっています。

特に、システムが停止すると影響が大きいデジタル・ビジネスに対しては、「大量・分散リソースによる究極の冗長システム」「大量・分散リソースの自動的/効率的コントロール」「サイバー攻撃やトラブルを刈り取る継続的改善」といったポイントを重視しながら回復力を意図的に作り込んでおくことが肝要です。

この事例では、Facebook社が数千台のサーバー管理・設定変更を自動化しているケースを紹介します。同社は、サーバー設定をコード記述した“レシピ”によって、サーバーの構成を管理するとともに、状況に応じた変更が自動的に適用される仕組みを構築しました。これにより数千台のサーバー設定を自動化し、開発しながら運用する体制(いわゆるDevOps)を実現しています。

図6 Facebook社におけるサーバー管理・設定変更の自動化(画像をクリックすると拡大画像が開きます) 【図6 Facebook社におけるサーバー管理・設定変更の自動化(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

Facebook社ではこうした取り組みを「Infrastructure as Code」と呼んでいます。これによって、サーバーの状況に応じた自動反映によりオペレーションミスや作業工数を大幅に削減するとともに、迅速な障害切り戻しによって、トラブル発生時にもサービスのダウンタイムを縮小したとしています。こうしたFacebook社の取り組みは、システムの回復力をデザインするという観点からも、今後ますます注目されるものになるでしょう。

[トレンド6]回復力をデザインする:Accenture Technology Vision 2014特集サイトもご覧下さい