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素材・化学企業にチャンスが広がるインド 前編

素材・化学企業にとって魅力を増すインド市場。富裕層や中間層の所得は増大し、すでにマスマーケットが巨大化しています。脆弱なインフラと面倒な法規制、流通ネットワークの未整備など克服すべき課題について解説します。

~巨大化するマーケットと7つの課題~

近年、インド経済はめざましい発展を遂げています。 2000年以降の成長率は年率平均で8%。購買力平価で見ると、すでに世界第4位の経済大国です。将来性の観点でも好材料が多いと、アクセンチュア(インド)素材・エネルギー本部 統括本部長のSandeep Biswasは指摘します。

インドの平均年齢は24歳です。32歳の中国、36歳の米国などと比べれば、非常に若いことが分かるでしょう。若者たちは将来、生産と消費の主役になります。また、インドは強固な教育システムを持ち、毎年220万人の学生を送り出しています。言うまでもなく、英語を話す学生たちです」

若者のパワーが市場を牽引
優秀な若者たちを吸収して、様々な産業が成長のスピードを速めています。先進国市場向けのアウトソーシング需要を取り込んだITサービス産業は有名ですが、製造業も強いとBiswasは強調します。

「自動車産業を例に挙げると、インドで生産した乗用車の2割程度は輸出されています。スズキや現代自動車は、インドを輸出のハブとして位置付けています」

いま、インドの各地域が特色ある産業の育成を競っています。ニューデリーとデリーは政治と様々な産業の中心ですが、ムンバイの金融、バンガロールのIT、チェンナイの自動車とエレクトロニクスというように、世界的な産業集積を持つ都市が育っています。

こうした経済成長を受けて、中間層の厚みも増しています。インドの中間層は約4億人で、その数は急増しつつあります。

「家計消費が年間1400ドル以上の世帯は2009年度に1億に達し、年々増えています。富裕層も同様です。インドの上位10%の富裕層は、年間1000億ドルを消費していると言われています」とBiswas。自動車やカラーテレビ、冷蔵庫といった耐久消費財の普及率も急上昇中です。それぞれの普及率は、ここ10年間で数倍に高まりました。

インドにおける7つの課題
インド市場にはチャンスがあふれていますが、一方では様々な課題があることも確かです。

「インド市場で成功するためには、克服すべき7つの課題があります。(1)脆弱なインフラと(2)面倒な法規制、(3)複雑な税制、(4)やっかいな労働問題、(5)小規模事業者が分散する小売市場、(6)流通ネットワークの未整備、(7)消費者の好みの多様性です」

1つひとつが難しいテーマですが、グッドニュースもあるとBiswasは言います。

「一部を除けば、難しさのハードルは徐々に下がりつつあります。例えば、交通インフラや発電設備などの社会インフラに対して、政府と民間は巨額の投資を計画しています。インフラ整備には時間がかかりますが、改善に向かっていることは確か。また、税制をシンプルにする取り組みも進められています」

そのほかの課題についても、解決に向けて着実な前進が見られます。

日本との経済関係について言えば、2011年8月に包括的経済連携協定(CEPA)が発効しました。両国間の一層の貿易拡大、協力関係の強化が期待されています。また、化学産業については、インド準備銀行(RBI)による事前承認手続きが廃止されました。

難しい労働問題も改善の方向にあります。

労働争議は減少傾向にあり、特にホワイトカラーの人材流動性が高まっています。

小売、流通の市場も変わりつつあります。大規模なショッピングモールが次々に建設されており、多くの消費者を集めています。ウォルマートやメトロといったグローバルリテイラーの進出も本格化しています。

消費者の嗜好も同様のようです。所得の増大を受けて、西洋的なライフスタイルを好む消費者が急増中。インドのマスマーケットは、ますます巨大化しつつあります。

以上のような変化の波を上手にとらえた企業は、インド市場で大きな成長を遂げつつあります。ただし、失敗例も少なくありません。Biswasはある自動車メーカーのケースを話します。

そのメーカーは本国で販売している車種の機能を落とし、価格を下げてインド市場に投入しました。インドでの価格は2万ドルです。落とした機能の1つはパワーウインドウでした。前席のパワーウインドウは残したのですが、後席は手動です。しかし、インドで2万ドルのクルマを買える人は、運転手を雇うことが多い。運転手はパワーウインドウを使えるけれど、オーナーは手動で窓を上げ下げするというおかしなことになりました」 インドで成功するためのカギは現地化ですが、それだけではありません。後編では、自動車やエレクロニクス、素材・化学産業などを例に、インド市場へのアプローチについて考えてみたいと思います。

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