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業界の垣根が無くなる

デジタル化や購買行動変化を背景としたライフシーン視点からのニーズに対し、業界横断のサービスで応える必要が出てきています。

サービス想起の視点の転換


曽根 貢

製造・流通本部
マネジング・ディレクター
曽根 貢


坂田 裕実子

製造・流通本部
シニア・マネージャー
坂田 裕実子

欲しいものがすぐ手に入り、便利で快適な暮らしと様々な売り方・買い方に慣れた現代の消費者は、デジタル化が進む世界を自由自在に行き来しながら、自分にとって最適な物やサービスを上手に手に入れるようになってきています。
こうした中で企業が選ばれ、生き残っていくためには、あらゆる企業―従来のサービス業だけでなく、特に製造業・金融などこれまでBtoBを中心に、個々の商品を磨きより良いモノ作りをすることに特化してきた企業でさえも、消費者の潜在ニーズを意識し、ライフシーンの中でどういったサービスが求められているのかを意識しながら、新たなサービスを生み出すように変化しつつあります。この動きは、デジタル化によって、会員顧客情報や購買履歴・IoTの活用などが広がり、これまで商流の川上にいたプレイヤーであっても自社で顧客動向の把握が可能となってきたことも一因となり、近年一層加速してきています。
振り返ると、成長のための企業変革はいつの時代にも起きており、例えば、富士フィルムによる機能性化粧品事業参入*¹やセコムの介護事業参入*²、セブンイレブンのカフェ参入など*³、異業種参入という形で、個々の企業が既存の強み・技術を転用して成長市場・分野に展開して市場の成長に沿った業績伸長を目指したり、マツモトキヨシとローソン*⁴、ココカラファインとサークルKサンクス*⁵のように業種を超えて提携することで新規の顧客獲得を狙うといったことは、これまでもみられました。
ただ、今起きつつある変革は、それらとは比べものにならない莫大なスケールで迫ってきています。それは、『企業側からみて何を提供するか』ではなく『顧客のライフシーン全体で何が求められるか』という風に、真逆からの視点で捉えることで、これまでとは全く異なるスケールでのサービス提供余地が広がり、サービス提供者側としては、既存の業界の枠組みはもはや意味をなさなくなってきており、これを抜本的に破壊しながら、企業の在り方を一変させようとしているのです。

サービス想起の視点の転換

小売業から「総合育児サービス」へ

元々顧客との接点を持つ小売業では―始めからそのように意識したかどうかは別として―少し早い段階からこのような取り組みが始まっていました。
例えば、イギリスの大手スーパーTescoは、世界5位の流通業者であり、バフェット氏の投資先となっていることでも知られていますが、従来よりポイントプログラムによる顧客ロイヤリティ戦略に力を入れてきました。彼らはクラブ・カード(ポイントプログラム)を活用した顧客管理手法で有名で、近年、ビッグデータの活用で改めて注目されています。Tescoのポイントプログラムはシンプルで、顧客ごとの購買パターンにあわせたポイント券が送られてくるのですが、属性情報を分析するだけでなく、“買い物習慣”クラスターに基づいて『これから何を買いたいか』まで捉えて、次の購買につながりそうな提案をしています。こうして顧客との密接な絆を作ることで、Tescoブランドは顧客から信頼されるプレイヤーとしてのポジションを獲得し、シェアを押し上げることにつながりました。
彼らは、ワンストップショッピングをする顧客への利便性向上のため、金融危機後の既存銀行市場への不信感を捉え、それまで寡占状態だった(小口)銀行市場に参入して、顧客との関係性構築のノウハウを生かして成功を収めました。
そして、さらなる進化系として、Tescoの『Baby & Toddler』では、「育児」世代の親に向けて、赤ちゃんと家族用の衣料・家具・食品などあらゆる商品カテゴリー横断で、最適なタイミングに最適なものを手に入れられるようにしており、物だけではなく同世代の子供を持つ親の育児アドバイス・習い事・レジャー・子供と家族の健康管理といったサービスまで受けられるような事業を展開しています。これを実現するため、小売業としてのモノだけではなく、情報チャネル、ECチャネル、食品、教育、旅行、金融などを複合的に組み合わせて「育児」サービスとして実現しており、入り口として、商材を扱う小売店頭だけではなく、育児雑誌や自社メディア・SNSの口コミといったデジタルサービスも積極活用しています。*⁶,⁷,⁸

スポーツメーカーから「健康エンタメサービス」へ

最近では、いわゆる製造業においても、同様の動きが次々とみられるようになってきています。特に健康は関心の高いテーマで、大小様々な多くの企業が取り組んでいます。
例えば、ナイキというと、スニーカー・スポーツウエア企業というイメージがありますが、同時にスマートデバイスやウェアラブル技術・健康サービスのパイオニアでもあり、2006年にはランニングアプリのNike+、2012年には睡眠や歩数を計測できるフィットネストラッカーFuelBandをリリースしました。*⁹,¹⁰ Nike+では、これまでのアパレル業としての枠を超え、ランニングの距離・ペース・消費カロリーを記録してリアルタイムで音声で教えてくれたり、地図上にランニングヒストリーを描画したり、走った距離の合計からそろそろ新しいシューズが必要ということまで分かるなど、個人の生活におけるスポーツシーンをサポートしているのです。さらには、Facebookに投稿すれば仲間の応援を受けることができたり、友人とデータを共有して競争したり、走れば走るほどランクUPしてトロフィーがもらえモチベーションアップにつながったり、といった仲間と共にスポーツを楽しむためのサービスも提供されています。こうした取り組みは彼らのビジネスにおいて重要な役割を担うようになり、ファッション性や快適さだけでなく、収集したデータや分析が他社との差別化ポイントとして消費者に選ばれる要因の一つとなるなど、製品を通じて顧客のライフシーンにおけるスポーツ・フィットネスの領域へと深く入り込んでいくことにつながっています。これを実現するためには、製造業としてのモノ作りだけではなく、アプリを開発するSIer、デバイスを開発するハイテク、通信、ECチャネル、SNS、などを複合的に組み合わせ、「健康エンタメ」サービスとして実現しているのです。


スポーツメーカーから「健康エンタメサービス」へ

新たな市場創出へのインパクト

このように、テクノロジーの進化・浸透を背景として、消費者の期待に応えるべく、既存の業界の壁は無くなってきています。ここで重要なのは、「小売」「アパレル」「医薬品」のような提供者視点、物視点ではなく、「育児」「健康」のように消費者にとってのライフシーンの中で、消費者視点からみて実現したいことがサービスの起点になっているということです。このような変化はあらゆる市場においてみられ、「自動車・航空業界」は「移動や旅行」へ、「習い事・塾業界」は「学び」へ、「製造業」は「モノやサービスづくり」へと、進化していっています。
このようなサービスを検討している企業は急速に増加しており、IoTの発展や顧客のデジタルリテラシー向上を受けて、ますます広がっていくと思われます。そして、結果として、おおよそ6年間で、「小売市場」⇒「買い物市場」は約1.3倍、「医療市場」⇒「健康管理市場」は約1.4倍、「自動車市場」⇒「移動市場」は約1.6倍へとそれぞれ拡大すると予測され、業界の枠組みを超えてビジネスドメインを広げる企業は、より大きな新たな市場を手に入れる可能性が出てくるのです。


新たな市場創出へのインパクト
出所:アクセンチュア リサーチ調べ

*1: 写真フィルムで培った技術を化粧品の開発に応用する日経BPnet 2008年6月27日
最終閲覧日:2017年7月30日

*2: セコム医療システム株式会社 ホームページ
最終閲覧日:2017年7月30日

*3: セブンカフェは失敗の歴史から生まれた 日経ビジネスオンライン 2014年7月2日
最終閲覧日:2017年7月30日

*4:ローソン、マツキヨ業務提携で加速するのか業界再編 日経BPnet 2009年9月7日
最終閲覧日:2017年7月30日

*5:ココカラファイン&サークルKサンクスヘルスケアコンビニ開発へ首都圏4店舗で実験開始 ダイヤモンドオンライン 2010年4月7日
最終閲覧日:2017年7月30日

*6:テスコ成長の切り札は「ビックデータ」日経ビジネスオンライン 2013年12月16日
最終閲覧日:2017年7月30日

*7:Tesco社 ホームページ
最終閲覧日:2017年7月30日

*8:英小売り各社、リテール銀行業参入狙う WSJウェブサイト 2010年2月23日
最終閲覧日:2017年7月30日

*9:「ゲーミフィケーション」─ゲーム要素でファンを作る日経ビジネスオンライン 2012年9月18日
最終閲覧日:2017年7月30日

*10:腕で活動量を計測、LEDで“見える化”も――ナイキ、iPhone対応のリストバンドを発売IT Media Mobile 2012年1月20
最終閲覧日:2017年7月30日

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