このような構造変化の局面において有効なアプローチが、「シナリオ・プランニング」です。これは想定されるいくつかのシナリオの中で、コストやサービスレベルを具体的に検証していく手法です。
シナリオ・プランニングは、現状の改善を目的とした手法ではありません。将来の変化に対応した多数の選択肢の中から、シナリオのあるべき姿を評価するためのラフスケッチを与えてくれます。既存の物流アセットはどれくらい使えるのか? 将来に備えてどれほど拡張すべきか? 自前投資か、外部リソースの活用か? シナリオ・プランニングによって、こうした投資の方向性を判断するための示唆を得ることができるのです。
そして、いよいよ実行です。従来の店舗を起点としたサプライチェーンを抜本的に見直し、顧客を起点としたオムニチャネルを構築するためには、以下のような点が大きなテーマとなります。
【在庫の持ち方を変える】
オムニチャネルの消費者は、店頭の棚以外にも、携帯端末や店舗にあるタッチパネルなどから商品を選び、注文します。これに対して企業は、どこの在庫を引当、どれくらいのリードタイムで配送するかを即時に判断しなければいけません。
これらのオペレーションを成立させるには、物流センターや店頭の在庫、店舗のバックヤードなど、物理的な在庫を適切に配置し、一元的に管理することが重要となります。特に店舗にある在庫予約と現品確保を実現するために、どれだけリアルタイムで店頭の現品数を把握できるかがポイントとなります。
【物流センターを進化させる】
オムニチャネル戦略の中では、物流センターの役割も変わります。これまでは、特定の店舗だけに出荷をしていたのが、新たに不特定多数の消費者向けに1ピース(バラ)単位でピッキングし、宅配便で出荷することになるのです。しかも、他社との競争においては、物流センターのピッキングや梱包のリードタイムの短縮が要求されることも珍しくありません。
【オンデマンド配送を実現する】
輸配送の領域は今後、劇的な変化が見込まれます。すでに自動運転車やドローンによるマイクロデリバリーのトライアルも始まっています。また、最近はシェアリングの発想によるローコスト配送サービスも注目されるようになっています。これらの技術が本格的な実用化段階を迎えると、現在のトラック配送コストの約4割を占めるといわれる人件費が圧縮され、より緻密なオンデマンド配送が安価に実現します。
これらの技術の動向を踏まえて、個人宅へのラストワンマイル配送や店舗間配送のあり方をデザインすることで、より付加価値の高いサービスを実現することができます。