ではテスティングにはどのような影響があるでしょうか。こうしたプラットフォームと連携するシステムは、単一システムで閉じていません。自社のシステムは、デジタルプラットフォーマーや戦略的パートナーとAPIで連携する必要があります。そのため、APIに関連したテストをいかに効率化するのかが課題です。
プラットフォームを通じてビジネスパートナーと連携するシステムは、連携によって初めてバリューチェーンが完成します。そのため、バリューチェーン全体に対する検証をするためのテストステージが発生します。
また、外部のAPIを活用しますので、その品質に対するコントロールが困難です。そのためバリューチェーンに組み込んだときのトータルの可用性や信頼性、品質をどう担保するかが課題です。もしシステムを構成する要素の品質が低ければ、トータルの価値を高めることができません。すなわち、自社提供分のファンクションの品質だけでは完結しない時代に突入しているのです。
トレンド3「人材のマーケットプレイス」とテスティング
現在は人材の在り方も多様化しています。固定化されたフルタイムの従業員による内製の働き方から、アウトソーサーを利用する方法、クラウドソーシングやフリーランスマーケットの有効活用などまで、段階化しています。
これはテストにおいても全く同じことが起きているといえるでしょう。UXや探索的テストでクラウドソーシングの重要性が高まっているのです。日本ではまだ少数ですが、海外で事例が出始めています。
画一的な人材を利用する従来のテストは標準書やガイドラインを定めてメンバをトレーニングすることで、標準化を目指していました。ですが多様化された人材をコントロールする際は、テストマネジメントの難易度が大幅に上がります。今後はテクノロジーによってテスト人材をコントロールする仕組みが求められるでしょう。
トレンド4「“ひと”のためのデザイン」とテスティング
今日の業務システムには、膨大な量の顧客の行動データが蓄積されているほか、様々なカスタマーリレーションやパーソナライゼーション施策によって、長期的な関係が構築されていることがほとんどであるといえるでしょう。過去に実施してきた接客対応などのコミュニケーションを通じて蓄えられたデータをAIに取り込ませることで、孫の代までデータが蓄えられる時代です。そしてこの先に待ち受けているのは究極の「パーソナライゼーション」です。
テスティングにおいては、大量の行動データや個人情報を扱うパフォーマンス・テスティングが必要になります。キーファクターは信頼性であり、要素としてセキュリティ・テスティングがより一層重要性を増してくるといえます。
“ひと”のための設計を行うには、テスト、品質の考え方も自ずと変わってきます。それには新しい思考法を用いる開発アプローチが有効でしょう。特に近年はデザイン・シンキングが広く認知されています。
トレンド5「未踏の領域へ」とテスティング
新規の取組みを推進するには、それに伴う制度設計が必要です。そしてその取組みを完遂した者が新たな業界の覇権を握ることができます。新たな産業が形成されるためには、次世代の標準が創出される必要があります。一般的な政策決定スピードはテクノロジーの進化に追いつけない時代が来ています。
テスティングも同様です。トレンド1から4までで問題提議してきたようにAIが新しいテクノロジーのエコシステムの中核に位置付けられます。現在、どのようにしてテスティングの新しい標準を確立できるかが課題です。
次世代型の企業は、どのようなアプリケーション戦略を採択するのでしょうか。アクセンチュアがアプリケーションを考える上では、Liquid、Intelligent、Connectedの3要素で構成された戦略が必ず考慮されます。この3要素を起点として検討しなければ、近い将来、業務システムも含めてエンタープライズ・アーキテクチャーは成立しません。
以上のように、「Accenture Technology Vision 2017」から得られる示唆をもとにテスティングの未来像を予測してきました。テクノロジーの進化は、テスティングにもこれらのチャレンジを予測させます。
