CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)という4つのメガトレンドにより、今モビリティの世界が大きく変わろうとしています。向こう10年以内に人口の一極集中が進む先進都市部を中心に消費者向けの車両販売マーケット(所有)が縮小し、自動運転タクシーなどを中心としたモビリティサービス(利用)に軸足が移り替わっていきます。EC市場の成長を背景に急速に増加している物流も、倉庫から配送まですべて無人化が進みます。この市場の覇権を握る可能性がある企業として注目されているのが、GAS(Google、Amazon、Softbank)です。
ここで言うGoogleは正確には親会社のAlphabetグループで、特によく知られているものでいうと子会社のWaymo(ウェイモ)が業界髄一の自動運転システムを保有し、既に自社で自動運転タクシーの運営に乗り出しています。この他にも車の車載システムのOSとも言える、グローバルOEMに対しAndroid Automotiveの導入を進めており、AudiやNissan、Renault等の主要なグローバル自動車OEMが導入を明らかにしています。 GASの何が脅威かというと、携帯電話のビジネスでも見られたように自社開発のソフトウェアをさまざまなメーカーのデバイスに埋め込み、自社は手数料や広告料で儲けながらもハードウェアをコモディティ化してしまうことです。ご存知の通り、現在のスマートフォンメーカーは自社で垂直的に作っている米Appleを除き、いずれの企業も大きな利益を出すことはできていません。また、Googleはいざとなれば自社で車の設計・仕様まで影響を及ぼすこともできてしまいます。実際、既に自動運転車のセンサー類を組み立てる自社工場をミシガンに立てることを計画しており、そのセンサー類は自社開発設計品も含まれており、システムの核となるチップ類の開発も進んでいるようです。 自動運転タクシーの普及により、タクシー価格が数分の一に減少が見込まれる中、都市部においては向こう10年以内に「所有」から「利用」へ移行することは間違いなく、その中でGoogle Mapの様な移動の起点となる消費者接点や、自社モビリティサービス、どの車両にも組み込めるOS、自動運転システムを保有しているGoogleは自動車業界にとって大きな脅威です。ともするとモビリティサービスの市場においては、これまで頂点に立っていた自動車OEMが下請けになり、将来は他の業界でも見られたように品質と価格のバランスで勝る一部のメーカーのみが残る構図となりかねません。 本稿ではスペースの関係上、AmazonやSoftbankについての詳述は省きますが、Amazonは圧倒的なECの物量に加え、自社の自動倉庫、自社流通インフラを持っており、昨今では自動車向けのクラウドサービスやAlexaの車載版を積極的に展開しています。徹底的な自前主義の彼らは、最近では自動運転技術やEVメーカーのスタートアップにも積極的に出資を行い、将来は自社で自動運転車の開発まで踏み切る可能性もあります。ソフトバンクについてはご存知のとおり、Uber、Didi、Grab、Olaなど世界中のライドシェア企業への出資を行っており、最近ではロボットを活用した物流の自動化に取り組みを始めているようです。