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電子カルテ導入後に悔いを残さないために

電子カルテ導入に関するアクセンチュアの論考。電子カルテ導入後の失敗を防ぐための、病院経営モデル確立と経営管理中心のプロジェクト体制づくりの重要性を紹介します。

電子カルテ導入を主眼とした個々の病院の情報化は当初の政府目論見どおりではないが、かなり進展してきた。HIS(Hospital Information System)メーカー各社のシステム導入経験値も蓄積されてきており、いわゆる「失敗プロジェクト」の話を聞くことは以前に比べ減少した。

一方、失敗プロジェクトのラベルを貼られることは回避されたものの構築された情報システムが生み出す価値のレベルは様々のようである。以下は、今年無事にシステム稼動させ、内外ともに一旦は合格点を与えられた病院における、稼動直後の喧騒状態から1ヶ月経過した時点での病院経営層の声である。 曰く、「診療情報が概ね電子化され紙は少なくなった。患者の流れや現場の運用はスムースになりつつあるが…」

  • 職員数の削減はできず人件費にメスが入らない。せめて残業は減らないものか。

  • 指導料などの請求モレは減ったが、未収は現状のまま。督促・回収も人手による管理が続く。

  • 議会など外部説明用のデータ・レポートを迅速に正確に準備する機能が欲しい。

  • 経営者にとって原価把握は基本であり、原価がわからなければ損益分岐点が出てこないしそもそも経営が成立しない。診療単価が良くても逆ザヤではどうしようもない。どこに(無駄な)コストがかかっているかわからないと倒産する。その気持ちを汲んでくれるSEがいない。経営管理サブシステムと名のつくものはあるが、まだ動かない。電子カルテメーカーは、“データが溜まってきてから本格運用”、“病院の頑張り次第(いかに実施入力を丁寧にやるか)”経営管理メーカーは、“上流(電子カルテ)からデータが流れてくればできる“と言う。それぞれ、無責任。

  • 各部門システムの連携(電子カルテ・オーダリング、物流(診療材料)、薬剤管理、医事会計、財務会計)が大事だが、それぞれメーカが異なり、かつ力量が違いすぎる。

病院長は現場で患者と接するドクターであり、システム導入プロジェクトにおいては、熱心な病院長であるほど電子カルテの機能、操作性および運用検討に大きなエネルギーを使われる。しかしながら、システム稼動直前直後の熱を帯びた一時的な喧騒状態を脱した後にシステム構築の主目的は何であったか振り返られた時、多くの病院長は上に述べたような感想を持たれるようである。

電子カルテシステムのパッケージ化は進み、システム導入自体はそれほど難易度の高いものではなくなっているという見方もある。つまり、多額のIT投資を行って装備すべき巨大なインフラとまでは言えず、また、それ自体で経営価値を生む投資対象領域ではなくなっていく。今後重点的に取り組むべき付加価値を有無対象領域は図表に示す基幹系・ガバナンス領域と見なされている。

一方、現時点では、電子カルテの付属品扱いの経営・財務サブシステムしかない仕様書が用意さたり、電子カルテと経営管理システムの予算対比が10対1以下であるところが多数のようだ。 先行して取り組まれた病院と同じような悔いが残される可能性を懸念する。今後病院情報システムに本格的に取り組まれる場合は、仕様書準備や構築業者選定において、人材管理・調達管理・アカウンタビリティ対応を含め経営の舵取りの仕組みづくりが最大の目標であることを念頭におき、ぶれることのない準備をされることをお勧めする。

データが川上=電子カルテなどのフロントシステムから川下に流れる運用の作りこみは、HISメーカーによるサブシステム間インターフェイス検討とは異なる。図表に示す経営モデルを支えるガバナンス系システム群を構築するベンダーが、電子カルテを含む病院情報システム全体を統括し、経営情報のインプットとなるデータを発生源で取得する運用とシステム間のデータ連携検討を仕切り、経営者の期待に答えるシステム構築にコミットすることが自然である。

官公庁本部 パートナー 井形 繁雄
(株)日本医療企画 発行 「Phase3」 2007年1月号より転載