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製造・流通本部
シニアマネジャー
磯部 祐子

IoTデータとは何か
昨今IoTやインダストリー4.0といった言葉がトレンドになっていますが、そもそもIoTとは何か、あるいはIoTで獲得できるデータは今までと何が違うのか、という問いを多くのお客様よりいただくことがあります。アクセンチュアでは、たとえば以下4つの点を用いて、今までのデータ活用との違いを説明しています。

  • オフライン・パッチデータ → リアルタイム分析・アクション
  • 瞬間的なデータ → 継続的なモニタリング
  • 非定形型データの未活用 → 非定型データ分析
  • 現場性 → 遠隔性

IoT活用により得られる成果とは
実際にIoTデータを活用することで得られるビジネス・業務上の成果は、大きくは次の3つのステップで捉えることができます。

第一ステップ 機器・設備の予測保全による生産性向上
第二ステップ サービス売りへのビジネスモデル転換
第三ステップ 動的な消費者理解とそれに基づく、工場をも巻き込んだ新たな体験価値提供

このうち第一ステップについては、車輌や機械に搭載されたセンサーからその稼働情報をリアルタイムに収集・蓄積し、分析することにより、故障などに向けた予測保全に役立てるというものです。こうした取り組みは、すでに多くの企業において進められており、生産性向上や業務効率化に役立てられています。

さらに先進的な企業では第二、第三ステップへと取り組みを進化させています。まず第二ステップの取り組み事例としては、バルセロナのコメディ劇場Teatreneuのケースが挙げられます。同劇場では「入場料無料、ひと笑い0.3ユーロ(上限24ユーロ)」という課金体系を採用。座席の背もたれに設置されたカメラで入場者の顔の映像を捉え、表情認識技術を用いて笑顔を検知することで、課金を可能にしています。同劇場ではこうした取り組みの結果、売上25%増を達成しました。

また、ロサンゼルス市では、パーキングメーターに埋め込まれたセンサーから駐車スペースの空き状況をリアルタイムに把握し、空車率、すなわち場所の需要度に応じて駐車料金を変更するという取り組みを実施しています。これにより駐車場の売上は全体で2%増え、逆に顧客が支払う平均駐車料金が11%減、駐車場利用率11%増という成果を実現しています。

そのほかにも、タイヤ製品の世界的メーカーとして知られるミシュランでは、タイヤに埋め込まれたセンサーから割り出した走行距離に応じて課金するという、まったく新しい発想のビジネスモデルを立ち上げています。

こうした事例は、IoTデータの活用が単に生産性向上や業務効率化だけではなく、より競争力の高いビジネスモデルへの転換に寄与するということを示しています。

そして、第三ステップに関する取り組みとしては、有名なバイクメーカーであるハーレー・ダビッドソンの事例があげられます。一般に同社バイクの愛好者は、自分の愛車を好みに合わせて改造することを楽しみとしています。同社では、「Build your own bike(自分のバイクを造ろう)」と銘打つWebサイトを開設。顧客はバイク購入時に、車輪やマフラー、シート、ハンドルなどの様々なパーツを選択し、好みに応じてそれらを組み合わせて「自分だけのバイク」をオーダーするという、マス・カスタマイゼーションの仕組みを提供しています。

顧客によりカスタマイズされたバイクの注文は、ペンシルバニア州にある同社のヨーク工場へと通知されます。ヨーク工場は2009~2011年にかけてスマートファクトリーとして刷新され、隅々まで電子化されており、すべての製造・工作機器と移動機器は、取り付けられたセンサーによって、稼働状態や位置がモニターされています。

顧客によってカスタマイズされ、1台ごとに仕様が異なる製品をスムーズに生産することができるのは、行程ごとの作業手順がきちんと標準化されているからにほかなりません。具体的には、組み立て方や構成品目、個別部品表、仕様に応じた作業手順などの詳細が標準化されており、作業員は目の前にある画面の指示に従って、製品を組み立てていけるようになっています。このため、作業に当たるのは必ずしも熟練工である必要はありません。こうしたスマートファクトリー化により、同工場では労働者数を半減させることができました。

このようにIoTデータの活用を進めることでハーレー・ダビッドソンでは、マス・カスタマイゼーションの実現や納品のリードタイム短縮などを提供価値に、コアなファン層を確実に増やしていける大きな武器を手に入れました。

もちろん、ここで示した事例以外にも、IoTデータの活用によって社内外にある多種多様な情報を組み合わせて、顧客に向けた新たな価値提供を実現している企業の例は数多くあります。まさにその可能性は無限大といってよく、まずは顧客に対してどのような価値を提供すべきかを検討し、それに向けて今あるデータ群を活用できないかを深く考え続けることで、様々なアイデアが導出されるものと考えます。


IoTデータを駆使する企業になるための3つの要諦
さて、これまでにIoTが、業務生産性や売上向上に加え、より競争力のあるビジネスモデルへの転換を促進する起爆剤になる可能性について言及しました。IoTデータを駆使するために日本企業が取り組むために3つのポイントがあると考えています。

  1. “IoT“のCEOアジェンダ化
    日本企業の経営者はIoTによる可能性をもっと強く認識する必要があります。

    アクセンチュアの調査*によると、IoTのビジネスへのプラスの効果を「オペレーションの効率化」と見るか、「新たな収益源の創出」と見るかについては、グローバル企業の経営者の57%が「新たな収益源」と見るのに対し、日本企業の経営者は68%が「オペレーションの効率化」と見ています。また日本企業の経営者は、売上面でのIoTの可能性を低く見積もっており、業界の枠組みを変える可能性があるとは見ていません。

    さらに「IoTを含むデジタルイノベーションの責任者は」という問いについては、日本の経営者は39%がCIOと最多回答したのに対し、海外ではCEO35%が最多の回答でした。IoTはビジネスモデル自体の差別化になる起爆剤と考えており、CEOが主体的に推進するべきであるとアクセンチュアは考えています。
    *グローバルCEO調査2015

  2. リーン・スタートアップのための仕組み・文化の醸成
    今後はいかにスピード感をもって新たな価値を提供できるかが非常に重要です。環境変化の激しいマーケットにおいて、今後はいち早くビジネスモデルの変革に成功した企業にすべての利益をとられる、すなわち出遅れは致命的な事態を引き起こすと考えています。

    シスコシステムズでは、スピンアウト・スピンインの仕組みを取り入れています。同社をスピンアウトした人材がシリコンバレーで育ち、その人材を再びスピンインで取り込むことをもくろんでいます。

    GEはファストワークスという考え方を提唱しています。ファストワークスとは文字通り、「素早く働く」ことを意味しており、重厚長大企業の代表格であるGEに最も欠けていた「俊敏さ」を獲得することを目的にしています。具体的には、第一線のリーダーを3日間も“缶詰研修”に送り込み、ファストワークスの考え方や方法論、実際の適用例をたたき込みます。それらを所属部門に持ち帰り、ファストワークスの導入を推進する「エバンジェリスト(伝道者)」として活動させ、働き方の変革を通じ、スピード感あるモデル変革を支える企業文化をも醸成しています。

  3. 他社との協業によるエコシステムの形成
    最後に、IoTを活用し新たな提供価値や顧客体験を提供することを前提にすると、今まで自社単独で考えていた事業ドメインだけで考えるのではなく、顧客起点で価値を再検討することが重要になります。ただし、自社単独では価値提供をできない、時間がかかってしまうこともよくあります。その場合はその領域を得意とする他社と組めばよいのです。自社にないケイパビリティやデータを持つ会社を買う(買収)・借りる(提携)などの手法を活用し、いかに競合に先駆けてスピーディに価値提供を実現するかが今後の戦いのカギになるでしょう。

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TEL:03-3588-4453 (製造・流通本部直通)