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AI&ロボティクスが切り開く未来


現在、第3次AI(人工知能)ブームと言われるように、AIに関するニュースや情報が毎日のように報じられ、注目を集めている。ビジネスの最前線ではAIやロボティクス(特にソフトウェア・ロボティクス)の導入が爆発的に増えているが、まだまだ誤解や過信、過剰な期待も散見される。本稿ではAI・ロボティクスがなぜ必要なのか、国内外におけるその背景を解説するほか、インテリジェント・オートメーション進化のステップやAI導入の効果を最大化するためのアプローチなどを紹介する。



マネジング・ディレクター

アクセンチュア株式会社
デジタル コンサルティング本部
アクセンチュア・デジタル・ハブ統括
マネジング・ディレクター
保科 学世


産業や雇用の未来とAI


2013年から2016年までのわずか3年間で、アクセンチュアによるインテリジェント・オートメーションの年間導入件数は約100倍に迫る勢いで増加しており、生産性の飛躍的な上昇に貢献している。特に今日では「定型業務など単純作業の自動化」のみならず、「特定業務のスペシャリストや高度な専門知識を要するアドバイザー(会計士や弁護士業務など)の補助業務の自動化」など、AI・ロボティクスを適用できる業務領域は確実に拡がっている。

英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン氏らが発表した論文「雇用の未来(THE FUTURE OF EMPLOYMENT, 2013年)」によると、今後10~20年の間に仕事の機械化は進み、米国では現在の総雇用の約47%が機械に代替され、日本では労働人口の約49%がAIやロボット等で代替可能になるとされている。

一方、日本が直面している社会課題である「労働力不足」においては、2030年までにGDP比で約1100万人分の労働力が不足すると試算されている(※)。現在の社会状況への対策や取組みは行政を中心に進められており、女性の就業環境の改善、外国人労働者雇用の問題解決、若者の就業ミスマッチの解消などがあるものの、依然として日本の将来的な労働力不足は深刻であり、解決策としてAIとロボティクスへの期待は高い。

機械が人間の仕事(雇用)を奪うという「脅威論」は欧米では論じられることが多いものの、こうした日本独自の背景から日本では脅威論よりむしろ、AIとロボティクスの活用が不可避な状況である。またAI・ロボティクスの発展についても、米国では軍事利用との連携も進んでいるが、日本はもともと広く社会的にロボットへの理解が浸透しており、平和利用・産業利用での発展が期待できる。

AIの積極的な利用は、具体的に企業の成長や経済発展にどの程度の貢献するのだろうか。アクセンチュアが2016年11月に発表した調査結果を見てみよう。AI活用が進まないケースを想定した「ベースラインシナリオ」では、2035年までに日本のGVA成長率(GDP成長率にほぼ相当)は0.8%と先進国の中で最低水準となる。一方、AIの影響力が市場に浸透した場合に期待される経済成長を示す「AIシナリオ」では、ベースラインシナリオの約3倍の2.7%であり、この伸び率は先進国で最も高い。革新的なAI技術により、人間は効率的に時間を利用でき、よりイノベーティブな仕事に集中することが可能になり、労働生産性の大幅な向上が期待できる。日本経済の将来はAIを使いこなせるかどうかにかかっていると言っても過言ではない。

(※以下の情報にもとづき、アクセンチュア推計 内閣府「年産業社会・労働市場の未来の姿と求められる人材像」(2014年7月23日)第13回「選択する未来」委員会(2014年11月14日)成長・発展ワーキング・グループ報告書より)


産業や雇用の未来とAI


AI・ロボティクスの得意分野


AI・ロボティクスを率先して導入すれば経済成長は維持され、社会課題は即座に解決できるのかというと、そう単純な話ではない。重要なテーマとして挙げられることは「人間とAI・ロボティクスをどうやって協調させるか」である。具体的には「AIにどのような仕事を任せ」、「どのような仕事は人間が引き続きやるべきなのか」を人間が自ら判断することだ。

AIとロボティクス、それぞれの得意とする業務領域は何か。まずAI・ロボティクスは業務の処理スピードが圧倒的に速い。そして大量のデータを容易に扱えることから分析やパターン検知に優れている。そしてヒューマンエラーのようなミスが起こらない安定性も特徴として挙げられる。

AI・ロボティクスの優位性に対し、改めて「人間に得意なことは何か?人間がやるべきことは何か?」を考えると、「人に対する共感」、「個々人の感情に応じた柔軟な対応」、「物事の価値判断」などが挙げられる。たとえば病院で医師が重要な診察結果を患者に告げる場面を想像してみても、ロボットが機械的に告知するのと、人間の医師が患者の表情を見ながら、患者に寄り添い診断結果を説明するのとでは、その後の患者の病気に対する立ち向かい方も変わってくるだろう。我々はこのように、「人間の仕事として何を残すべきか」を日々検討している。



インテリジェント・オートメーション
導入の4ステップ



ここまで、AI・ロボティクスの重要性について解説したが、「インテリジェント・オートメーションを導入するとはどういうことか」を改めて考えてみたい。多くのビジネスパーソンがAIといえば、コグニティブ・コンピューティングなど人間の認知機能を代替するようなAIを想像しがちである。しかしコグニティブはAIによるインテリジェント・オートメーションの導入ステップとしては、最後に対応するべき領域と考える。インテリジェント・オートメーションの導入ステップを俯瞰すると、次のように分解できる。


ステップ1 作業の自動化
Excelのマクロやバッチ処理といった定型業務の自動化。このAI以前の機械的自動化はすでに幅広く利用されている。


ステップ2 一連のプロセスの自動化(ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)など)
顧客からメールで受けた注文を基幹システムに受注登録するといった一連の業務の自動化。ワークフローに則った一連の作業を自動化することで、大量の人手による事務作業を自動化することが可能となる。


ステップ3 分析業務の自動化
データサイエンティストが実施するような、高度なアナリティクス手法を組み込んだ業務自動化。


一例として、アクセンチュアが提供している「 AFS(アクセンチュア・フルフィルメント・サービス/在庫・補充最適化サービス)」について説明する。このサービスは、高精度な需要予測と発注業務を大量のデータに基づいてクラウド上で実施し、欠品の解消、在庫の最適化、受発注業務の負荷軽減を実現する。実際に、ある小売チェーンではそれまで平均11%だった店頭欠品率が2.2%まで減少、全体の在庫や発注業務を減らしつつも、売上を大きく改善させた。

ステップ4 人間の認知機能をも代替する高度な自動化
コールセンターの自動化のように、人とのインタラクションがある業務にAIを組み込み、業務を自動化する。


ここで留意したいのは、これらのステップのうち、必ずしもステップ4に取り組めば良いという訳ではないということである。現在のビジネスシーンにおいて、人的リソースを大量に消費する業務が多いのは実はステップ2であり、企業の利益率を高めるにはステップ3の取組みが重要な場合が多い。ステップ4はAI活用のケースとしては非常に華々しいが、AI導入においては「何を目的としてAIを導入するのかを密に検討すること」が重要であり、導入のアプローチを誤らないことが必要である。現時点では、人間の作業の代替というよりは、人間が対応しきれない部分をコグニティブなAIで補完するなど、活用方法を見極めることが肝要であると考える。



Intelligent Automation

インテリジェント・オートメーションの効果


インテリジェント・オートメーションの導入は企業にとってどのようなインパクトがあるのだろうか。たとえば既存業務の生産性向上だけでなく、人間が作業するよりも総コストが低減される。作業に要するリードタイムも短縮され、精度も上がる。近年の「働き方の改革」という点でも機械が代替することは大きなメリットがある。従来の定型業務から解放されて高付加価値業務へシフトすることで、従業員のモチベーション向上も実現できる。

人材の流動性が低く、長時間残業が問題となっている日本においては、繁忙期の業務をいかに平準化させるかがインテリジェント・オートメーションの肝となる。業務量の変動幅が大きい業務を見極めて自動化すると共に、人間のミスが発生し易い業務を自動化することで、作業品質の向上を図る。

導入にあたっては、膨大なコストが必要となる基幹システムには手を入れず、RPAツールをクイックに導入することで、コストの削減も可能になる。


バーチャルアシスタントによるヘルプ業務の自動化


近年はインタラクティブに業務を支援するAIの研究開発と実用化も進んでいる。アクセンチュアでも「Accenture myWizard」というインテリジェント・オートメーション・プラットフォームの提供を始めている。このプラットフォームの導入することで、開発作業の自動化や人間を戦略的な業務に集中させることができ、最大で60%生産性を向上できると試算している。

「Accenture myWizard」では、AIを搭載した6人の「仮想エージェント」が登場する。それぞれの仮想エージェントは、プロジェクトの全体管理やビジネス目標達成に向けたアナリティクスの活用、判断を要するタスクにおけるアドバイス提供、アジャイル開発プロジェクトの監視・モニタリングなどの役割を持っており、ユーザーは、自分の役割に相当する仮想エージェントを選択し、仮想エージェントと会話しながら協働作業を行う。



Accenture myWizardの6人の仮想エージェント

Accenture myWizardの6人の仮想エージェント



こうした対人業務を自動化するAIは、コールセンターやサービスデスクの「バーチャルアシスタント(VA)」としての活用が有望視されている。バーチャルアシスタントによるユーザーヘルプ業務の実装例を紹介しよう。

この例では、エンドユーザーが企業へ問い合わせを行うケースとなるが、そのエンドユーザーからの問い合わせへの第一次対応はVAが行う。VAはエンドユーザーの課題を音声認識や自然言語解析の技術を用いて理解し、FAQなどから解決策を提案する。しかしAIが提供可能な一般的な解決策では解決できない場合は、ライブエージェント(人間による対応)が引き継いで対応する。ライブエージェントがマンツーマンでエンドユーザーの問題を解消し、その対応に関連した商品提案を行う際に、この例では再びAIが対応を引き継いで、顧客に最適な商品やプランを提案する。ここで処理をAIに戻しているのは、このケースにおいては、膨大な商品の中から個々人の志向に応じた商品を紹介するといった作業が、人間のオペレーターよりレコメンドエンジンの方が優れた提案が可能だからで、AIとVAそれぞれの得意分野で顧客対応を行うことにより、より高い顧客満足を得ることができる。
実際に「顧客サポートへの満足度」を調査すると、真に顧客満足度が高いのは「人とAIが協働する場合」であることが我々の調査でも判明している。「人のみ」の場合は満足度68%、「AIのみ」の場合は60%であるが、「人とAIによる対応」では88%もの満足度が得られており、人とAIを適材適所で使い分けることが重要であることがわかる。

また、我々がVAを実装する際には、「人間が対応した内容を機械学習でAIに学ばせるかどうかを人が判断する」仕組みを入れるなど、やみくもに人間とのやりとりを機械に学ばせるのではなく、そのやりとりを学習させるべきかどうかを人間が判定し、良質なやりとりのみ学習させる、といった品質向上策にも気を配っている。

近年、ユーザーとのコミュニケーションにおいても、PCからモバイルまでデバイスは様々であり、アプリやWeb、電話、チャットツールなどチャネルも多様化している。そのため、一度VAが問い合わせを受け、そこから人間のエージェントに対応を振り分けたり、あるいはバックエンドにあるシステムのAPIを叩いて回答したり、ソフトウェアロボットを使って後続業務を自動で進めていくような実装も必要となる。


AI活用に向けた3つの要諦


最後に、本稿のまとめとしてAI導入における重要な3つの要諦を説明したい。

  1. AIは万能ではない

    現在のAI関連技術はまだ、特定目的向けの要素技術であり、画像認識や音声認識といった技術を選択し、組み合わせて利用するものである。したがって、AIの導入においては、様々な技術を組み合わせ、全体としての振る舞いが目的に沿ったものになるように、組み上げていく必要がある。

  2. AI構築は適切なパートナーを見つけることが肝要

    大手企業ではAIを単独で作ろうという考えをお持ちの担当者が少なからず存在するが、AIに関する技術の変化は激しく、市場には様々なプレイヤーが参入している。多大なコストをかけて自社でAIを構築することは非効率的であり、高い技術を有するパートナーを見つけ、技術を組み合わせて利用することが肝要である。

    アクセンチュアも常に先端技術に触れるべくAI領域に関わる200社近くをウォッチし、月次で世界中のAI技術についてのレポートを作成しており、実際のプロジェクトへの応用や成果の共有を行っている。

  3. AIは優れた技術/アルゴリズムだけでは完成しない

    優れたアルゴリズムがあればAIに関する課題は解決するという誤解もあるが、特に、近年のAIブームを牽引している機械学習のアルゴリズムでは、良質なデータを取り込み学習させることが不可欠だ。つまり、優れたアルゴリズムを持つことも大切だが、良質なデータを保有することが企業としての価値となる。                                                                                                                                                                                                         

日本でこそAI開発が必要である


冒頭でも述べたように、日本は労働人口減少が避けられず、経済成長を堅持するにはAIの活用が不可欠である。一方、日本には高い技術を持つ製造業が多く、高いデバイス開発力を擁しており、またサービス領域においては厳しい顧客や消費者によって磨かれた良質なデータ(サービス対応ログ)を持っている。これらがそろっている日本でこそ、単なるアルゴリズム開発にとどまらない“人と協業するスマートマシーン”の開発が可能だと考える。

AIの適用範囲は広く、小売業や製造業(特に工場)はインテリジェント・オートメーションへ投資することが自社の競争優位性を高めるために有効な施策である。良質なアルゴリズムとデータで、日本が誇る製造業の技術、工場内の改善によるスマートファクトリーの実現はもちろん、高い顧客サービスを実現するより良い製品の製造に結び付けていただきたい。今こそ日本でしか生み出せないAIサービスの創出に挑む時期なのである。


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