日本企業へのご提言として1章特別書下ろし
ヘルスケア産業で現在進行している急速な変化の背景には、一体どのような状況があるのでしょうか?
絶え間ない政策の変更、技術の進化、業界構造の転換によって、ヘルスケア産業にはかつてない大変動と創造的破壊、また新たな機会がもたらされ、世界におけるヘルスケアサービスの基準が大きく引き上げられようとしています。
避けられない課題 :「戦略的選択」
ライフサイエンス企業の経営層は目下誕生しつつあるヘルスケア・エコシステムにおいて、自社の成長を持続していくためには、次の3つの課題を達成する必要がある:
これからの課題は、このような新たなヘルスケアの時代に組織としていかに適合し、さらに時代の定義を塗り替えていけるかです。
製薬および医療機器の分野では今、4つの新たなビジネスモデルが誕生しつつあります。その背景には、このところ相次ぐ異業種からのヘルスケア市場への参入があります。業界の今後の成長性や高い収益性に勝算を見いだした起業家たちが、最新のデジタルテクノロジーを携えて市場への参入を果たし、「ケア」の定義を拡大しようとしているのです。
新デジタル医療企業
これらの新たなビジネスモデルを実践していくためには、従来とはまったく異なる協働が不可欠です。
自社が選択するビジネスモデルのいかんにかかわらず、ヘルスケア産業のあらゆるビジネスモデルは協働を前提とした新たなテクノロジーの迅速な導入によって、価値創造につながるパートナー・エコシステムの構築に取り組まなければなりません。これは戦略的および経営的観点からも、欠かすことのできない重要なテーマです。なぜなら、この新たな協働は、多くのヘルスケア/ライフサイエンス企業にとっての新天地を切り開く大きな可能性を秘めているからです。
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新たなヘルスケア・エコシステムにおける人材戦略
急速な進化を遂げる業界において競合を凌駕していく上で、最も大きな強み(あるいは最大の弱点)となるのが「人材」です。とはいえ、新たなスキルやマインドセット、ならびに管理能力を備えた最適な人材の確保は、現在のヘルスケア/ライフサイエンス業界において容易なことではありません。価値の創造にフォーカスした組織への変革を実現するには、患者を第一に考えるマインドセットと規範、行動、また共感力を従業員に身につけさせると同時に、ヘルスケア・システム全体における継続的な価値創造に向けて、従業員を啓蒙していく必要があります。
新たなヘルスケア時代の業界をリードするには?
ヘルスケア産業では今、かつてない変化の到来と新たなビジネスモデルの台頭が同時に進行しています。この中で、過去数十年にわたって成功を手にしてきたヘルスケア関連企業/機関およびそのリーダーたちには、大きな混乱がもたらされようとしています。今後、企業とリーダーたちが責任をもって既存の体制の刷新を図るには、大きな決断が必要であることは言うまでもありません。ただ、こうした状況にあっても、自らの力で未来を形成するチャンスも残されていることを忘れてはいけません。その一端を担うのが政府や政策立案者です。両者は今後、新たな業界のルールの制定によって、これまでになかったアプローチの誕生やイノベーションの実現を後押ししていくことになるでしょう。
医療を中核としてその周辺に広がるヘルスケア産業を見てみると、デジタル革命の兆候は見られるものの、いまのところ、それらがうまく統合され、患者のQOLや医療従事者の生産性向上につながるレベルには、まったく到達していない。ヘルスケア産業において、「本格的なデジタル化」という点では日本はまだ「夜明け前」の段階かもしれない。
本書では、日本特有の課題に取り組むためのインサイトを事例を交えながら変化する産業、加速するデジタルを乗りこなしていくロードマップを提示:
アクセンチュア・ストラテジーのマネジング・ディレクター。プレディクティブ・ヘルス・インテリジェンスおよび患者パスウェイ分野のグローバルリード。いくつかのヘルスケア関連企業の創業者、取締役でもある。医療のイノベーション、分析および価値をテーマにした著述も多い。マサチューセッツ・バイオテクノロジー協議会の役員。最近はボストン大学クエストロム・スクール・オブ・ビジネスの健康管理プログラムで講師を務める。ライフサイエンスの分野において、グローバル・エグゼクティブおよびコンサルタントとして25年以上にわたる経験を有す。
アクセンチュア・ライフサイエンスのグローバル・インダストリー・シニア・マネジング・ディレクター。製品ビジネスのオペレーティングボードメンバー。2007年より中国を拠点に、ヨーロッパ各国、米国、およびアジア諸国において25年間にわたり活動する中で、医薬品、医療技術、消費者向けヘルスケア業界におけるビジネスモデルの見直し・再構築の支援を通じて、より良い患者アウトカムの実現に貢献してきた。中国に拠点を移す以前にはロンドンで9年間を過ごし、ヨーロッパにおけるアクセンチュアのヘルスケア&ライフサイエンス・ビジネスを統括。ライフサイエンス産業に関する数々の論考を発表している。
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