【月刊ガバナンス2018年3月号 P92-93転載】
「 農業×テクノロジー」の可能性
「農業」が岐路を迎えている。生産者の高齢化・減少に伴い、今後の国産農産物の供給力への懸念が叫ばれる上、耕作放棄地の増加という形で“まちづくり” の観点からも課題となっている。
また、流通~販売面に目を向けても、消費者の健康・安全志向の高まりとともに、“生産者の顔の見える農産物” のニーズが高まり、従来の農協・卸売市場等を経由しないルートでの流通・販売も増加傾向にある。
こうしたトレンドの中、各自治体において「農業」を維持・発展させる上での、テクノロジー活用の可能性を考察したい。
近年のIT技術の進歩やコンピュータ性能の向上により、IT技術やロボット技術を農業に応用できる可能性が高まっている。生産者の利用意向も高い一方で、その多くが農作業履歴や出荷履歴の記録など簡易な利用に留まっており、農業生産性の向上に結びつく利用は限定的である(*1)。
生産者の高齢化・減少が進む中、農産物の生産性を向上させつつ、海外の輸入農産物との競争力を高めるための生産~流通~販売までの一貫したサプライチェーンを構築することが急務であり、テクノロジーの活用によって、①生産の最適化、②需給分析まで踏み込んだ流通の最適化、③生産者と消費者の直接取引──など一連のプロセスの最適化を図ることが可能である。ここでは、国内外での最新事例を、セグメントごとに紹介し、各自治体において目指すべき姿・課題を整理する。