【月刊ガバナンス2018年2月号 P94-95転載】
自動車の進化と「移動そのもの」の変化
自動運転技術の発展やカーシェア、Uber などのライドシェアの普及を中心に、人々の移動に関わる進化が昨今著しい。現時点の日本では、まだ運転支援技術として安全性を高めたり、レンタカーやタクシーが便利になったりする程度の変化しか感じられないかもしれないが、これらは今後10年で最も大きく進化する生活要素の一つと考えられる。今回は、移動に関するテクノロジーの進化が、都市計画・街づくりに、どのような変化を及ぼすのかについて論じたい。
日本政府がうたうSociety 5.0においても「移動革命の実現」は大きなテーマのひとつとなっており(*1)、その要素は、自動車業界の変化を示すキーワードである「CASE」に表れている。欧米主要メーカーはすでに全車種が情報網とつながり(Connectivity)、日本の自動車メーカーも2020年までに全車種で実現する見込みである。20年代中盤には主要メーカーは完全自動運転(Autonomous)を商用化する見込みである。カーシェア(Shared)は既に日本でも普及しており、Uber を筆頭に海外ではライドシェアが業界行政当局と衝突しながらも急速に普及している。EUが2040 年までに内燃機関自動車の販売を終了させることを表明してから、各社は大きく電気自動車(Electric)にシフトしている。
この変化の先には、完全自動運転の無人タクシーが交通インフラとして鉄道網と連携し、人の移 動そのものがドア・ツー・ドアでサービス化されることも考えられる。