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Gove tech

デジタル時代の自治体イノベーション

第4次産業革命の進展とEBPM

これらのEBPMの取り組みは、テクノロジーの発展により活用余地が大きく広がりつつある。

例えば、IoTやAIといった第4次産業革命の技術を活用して、センサー情報・画像情報などをリアルタイムで取得し、自動で解析することで、従来取得できなかった情報をリアルタイムで精度高く、かつ低コストで取得・検証できるようになった。これにより、従来の事前・事後の効果検証だけでなく、事業の実施期間中にトライアンドエラーを繰り返し、成果を追求することができる。実際、海外の行政機関では、こうした新たな技術に着目し、民間企業とも協業しながら、新しいアプローチのEBPMを模索する萌芽が見られる。

Googleの親会社であるAlphabet 傘下のSidewalk Labs は、2017 年10月、より高度なスマートシティの実現を図るため、カナダのトロント市においてウォーターフロント地区の一部の再開発を担うと発表。様々な場所にセンサーを埋め込み、そのデータを活用することで、環境やコミュニティに配慮した安心安全なスマートシティの設計・運営を行うとしている(*3)。

また、アイルランドのダブリン市は、スマートシティ推進プログラム「Smart Dublin(スマート・ダブリン)」の一環として、マスターカードと3年間にわたるイノベーションパートナーシップを締結。同社の持つ取引情報を分析することで、住民や観光客の消費パターンを理解し、観光業の発展などに活用することを考えている(*4)。

国内における取り組み

国内の地方自治体などにおいて、先進的な取り組みを支援するケースも生まれている。

佐賀県は2014年から政策課や統計分析課が各課と連携してデータ分析に基づく政策立案に取り組み始めている。救急搬送に関する事例では、救急搬送実績情報など、複数のデータ分析をすることで救急搬送の受け入れ困難事例を40%減らし、搬送時間を平均1.3分短縮できることを示した。この成果などが認められ、第1回「地方公共団体における統計利活用表彰」の総務大臣賞を受賞した(*5)。「ビッグデータ・アナリティクス産業を創出することによる地方創生」を目指す福島県会津若松市は、都市経営を網羅した7領域(エネルギー、観光、医療、教育、農業、金融、移動手段)を横断した社会基盤の構築を推進している。その1つとして進む「会津若松市IoTヘルスケアプラットフォーム実証事業」では、産学官医10団体以上を巻き込み、ウェアラブルデバイスやベッドのセンサー、検診データなどから得られた健康状態に関する情報を収集。市民モニターは自身のデータをもとに分析された、食生活の改善や健康増進に向けたサービスを受けることができる。

実現に向けた3つの壁

こうした取り組みを進める上で、「データ」「人材」「行政府の仕組み」の3つの壁を意識することが肝要だ。1つ目の「データ」は、民間企業とも協業しながらテクノロジーを活用することが重要になる。予め、データの取得源になるセンサーを必要なところに整備し、誰もがセンサー情報を活用できる環境を整えておくことが有効だ。当初は特区などエリアを限定して費用を抑え、投資対効果を検証しながら、対象地域・領域を拡大していくことも検討できよう。収集したデータの扱いにも注意が必要である。日本では2017 年5月に改正個人情報保護法が施行され、個人情報の定義が明確になるとともに、情報利用のルールが整備された。一定の条件の下、データの第三者提供も可能になり、今後データを利活用した取り組みも進んでいくと考えられるが、特に公共サービスにおける活用では情報を提供することによるメリットをきちんと市民に理解してもらうことや情報を提供する側に不利益がないようなデータ活用のルールづくりなど、引き続き検討が必要であろう。

2つ目の「人材」については、冒頭でふれたような英国の取り組みのように、専門人材の確保を図ることが必要だ。ここでも民間企業との協業が有効となるだろう。

これらの要件に加えて、「行政府の仕組み」の壁にも注目する必要がある。例えば、会計サイクルについて、事業期間内に効果検証を行うためには、単年度会計よりも複数年度会計が適切かもしれない。同様に、概算払いであっても入札時点の金額が(ほぼ)固定的な調達契約の形態よりも、成果連動型の契約形態などの方がEBPMの発想と相性が良い可能性がある。こうした行政の基本的な仕組みについてもEBPMの推進とセットで議論が必要だ。

EBPMのポイントは、費用対効果の分析に留まらず、その結果を通じて政策見直しを図ることにある。そのためには、従来のように事前評価、事後評価を行うだけでなく、上記のケースのようにテクノロジーや民間企業の力を活用しながら、政策実施期間においてリアルタイムで情報把握と分析を行い、走りながら政策展開を見直していくことが重要ではないか。


*1  独立行政法人経済産業研究所(2017) 日本においてエビデンスに基づく政策をどう進めていくべきか
「日本におけるエビデンスに基づく政策の推進」プロジェクト中間経過報告

*2  Office of Management and Budget. (2013). 2013 Draft Report to Congress on the Benefits and Costs of Federal Regulations and Agency Compliance with the Unfunded Mandates Reform Act, pp.63
https://obamawhitehouse.archives.gov/sites/default/files/omb/inforeg/2013_cb/draft_2013_cost_benefit_report.pdf

*3  Sidewalk Labs Toronto
https://sidewalktoronto.ca/

*4  Mastercard ""Mastercard and Dublin City Council partner to use data to improve city intelligence and performance
https://newsroom.mastercard.com/eu/press-releases/mastercard-and-dublin-city-council-partner-to-use-data-to-improve-city-intelligence-and-performance/

*5  佐賀県 データ分析に基づく政策立案手法の導入
http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00351634/3_51634_29166_up_wavaqbgh.pdf