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Gove tech

デジタル時代の自治体イノベーション

【月刊ガバナンス11月号 P92-93転載】

ロボットによる事務の自動化とは?

企業の人手不足感が25年半ぶりの水準まで高まっている中(*1)、人手不足の緩和や生産性向上に役立つデジタルテクノロジーとして、RoboticProcess Automation(RPA)の進化が著しい。RPAとはパソコンを操作して行っている比較的定型的な事務作業をソフトウエアが代替して自動的に処理する技術である。今後は行政機関においても人手不足が顕在化してくるものと見込まれ、そのような中でも市民の高い期待に応えていくためには、RAPなどを活用して事務処理は“ロボ ット” に任せ、“ひと” が付加価値の高い業務に注力することで、市民サービスの向上に最大限の 能力を発揮できるようにすることが重要となる。

2016 年12 月号で、デジタル時代に注目すべきキーワードの一つとして紹介したが、導入対象の業界・業務も多様化していることから、今回は最新動向も踏まえ、改めてRPAについて取り上げたい。

広がりをみせるRPAの活用場面

RPAは元々、国内では金融機関中心に導入が盛んになっていたが、RPA関連技術の進歩に歩調を合わせて、製造業やサービス業、さらには自治体など、多種多様な業界での導入事例が急増している。RPAの国内市場規模は2030 年度に16 年度比8.9倍の9063億円に達する(*2)とも言われており、導入の規模も深度も引き続き拡大していくものと見込まれている。

アクセンチュアが数十の金融機関に対してRPA導入を手掛けたケースでは、最大で約50%の事務量削減が可能との試算結果も出ており、金融機関同様に事務処理が多い行政機関でも高い効果が期待できるであろう。例えば、市役所で言えば、引っ越しや出産にかかる申請書類や年金・児童手当にかかる書類の受付業務には非常に多くの事務処理が付随しており、これらのプロセス全体をRPAで自動化することができれば、事務量の大幅な削減が見込める。さらには、事務処理速度の短縮や24 時間/365 日フル稼働が可能になることで、申請にかかる期間を短縮できる可能性も高く、ひいては市民サービスの向上にもつながってくる。実 際に、英国セフトン市の市役所では、地方税の自動引落口座の登録業務にRPAを導入。従来は92時間かかっていた800件分の登録が、約5分の1にあたる19時間で完了できるようになった。職員がより主要な業務に集中できるようになっただけでなく、単純な事務作業から解放されることで、仕事の満足度も上がったとの事例もある(*3)。

RPA導入における陥りやすい罠と成功の秘訣

RPAは行政機関を含む様々な業界で高い効果が期待できるが、一方で、闇雲に導入すれば良いわけでもないことが近年の事例より明らかになってきた。複雑なプログラミングが不要で、既存のパソコンにインストールし、各端末上で処理を自動化できるという手軽さは、RPAの利点である一方、欠点にもなりうる。つまり、手軽さゆえに各部門が単独でRPAを導入してしまうと、得られる業務効率化の効果は一定程度に限られてしまうこともあるのだ。そうすると大幅な事務コスト削減や生産性向上という効果を享受することはできず、中長期的には導入や運用にかかる費用に対して得られる効果が見合わない形となってしまうリスクさえもありえる。 

その理由の一つは、RPA導入後も、不備対応や処理結果のチェック業務など一部の事務は人が継続して実施する必要性があるからだ。そのため、部門単独で導入を進めた場合、その残存事務を部門内で担当する必要性が生じ、想定通りの効率化ができないケースもあるようだ。また、RPAツールを一定期間使用していくと、ツール自体のバージョンアップ対応や、RPAで自動化した事務処理で使用するシステムが刷新された場合などにも対応する必要があるが、各部門での対応には限界があろう。加えて、近年はセキュリティリスクへの対応も課題として挙がっている。万一に不正アクセスで悪意的にプロセスを変更された場合に、検知する仕組みを築いておくべきだが、これも部門単独で実施するのは困難な作業になる。

したがって、RPAの効果を最大限享受するためには、組織の横断的な取り組みとして「集約化」⇒「標準化・最適化」⇒「自動化」のステップで進めていくことが重要となる。このステップに沿って導入することで、ロボットが担う処理と人が担う処理の分担や、導入後も継続して人が担う業務自体を最適化できるようになるため、大幅な事務コストの低減や生産性向上を実現できる。加えて、導入に際してIT部門も参画することで、最適なツールを選択し、自動化後の処理をモニタリングできる体制やセキュリティにかかるガバナンス体制を適切に確立できるため、永続的な運用とリスクへの対処を進めることができる。

また、これまで述べてきた通り、デジタル化社会においても、“ひと” が主役で、テクノロジーは道具であり続けることに変わりはない。したがって、RPAの導入によって事務作業から解放された人がどのようなことに注力し、いかに市民サービスの向上を実現するかを同時に考えることも成功への重要なカギだ。

まずは行政サービスの向上を見据え何を実現したいかのゴールを明確にすること、そして実現に向けて全体最適の観点から計画的にRPAというツールを導入していくことを忘れてはならない。特に、信頼性が重要となる行政機関においては、RPA 導入とセキュリティ対策を同時に進めることで、行政サービスの向上と市民の安心、生産性・効率の向上の三立を図ることが要諦になると考える。


*1 日本銀行 第174回 企業短期経済観測調査(2017年9月調査)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/yoshi/tk1709.htm/

*2 富士キメラ総研 2017サービスロボット/RPA関連市場の将来展望
https://www.fcr.co.jp/pr/17083.htm

*3 blueprism 社 Robotic Process Automation (RPA) set to drive public sector transformation in the UK
https://www.blueprism.com/7266

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