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Gove tech

デジタル時代の自治体イノベーション

【月刊ガバナンス10月号 P90-91転載】

クラウドはデジタル化に欠かせない要素

全世界で37億人以上がインターネットを利用しているなど、社会的にデジタル活用の環境が整ってきたこと(*1)や、IoT(モノのインターネット化)、アナリティクス、AIといった急伸するデジタル技術との親和性が高いことなどを背景に、ここ数年クラウド技術に対する注目度がこれまでになく増している。

政府・自治体においても、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」の閣議決定(*2)によりクラウド・バイ・デフォルト原則が導入され、内閣サイバーセキュリティセンターが「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」にクラウド利用に関する事項を追加するなど(*3)、クラウドを活用した行政サービスを求める機運が高まってきている。

今回は、より良い行政サービスの提供に不可欠となりつつあるクラウドについて取り上げたい。

もはやクラウド活用は前提条件

政府のデジタル・ガバメント推進方針でも謳われているとおり、今後の行政は、デジタル技術を徹底活用し、官民協働も視野に入れつつプラットフォームとして機能することが求められる。そして、ヒト・モノをネットワークで繋ぎ、様々なデータを集めるとともに、それらをオープンデータとして広く公開し、民間業者とも協働しつつ新たな行政サービスを創出していくことが欠かせない。​

その際に有効な技術基盤となるのがクラウドである。その重要性を裏付けるように、グローバルのクラウド市場は2012年の281億ドルから2018年には2001億ドルへと6年間で約7倍に市場が拡大することが見込まれている(*4)。また、国内においても、2013 年の607億円から2019 年には3500億円へと約6 倍に市場が拡大することが見込まれている(*5)。こうして飛躍的に拡大しているクラウド市場が示すのは、もはやクラウドに移行すべきか否かではなく、いつ・どうやって移行するかを検討すべき時が来ているということである。​

クラウドがもたらす効果

クラウドは提供するサービスによっていくつかに分類されるが、今回は、デジタル化に対応する際の技術基盤として最も基本的なサービスである、インターネット経由でインフラが提供されるIaaS(Infrastructure as a Service)に焦点を当て、その効果を俊敏性、柔軟性、コスト削減の観点から考えたい。

IaaSの効果としてまず初めに挙げられるのが俊敏性の向上である。従来、自社独自でICT インフラを構築した場合、製品の発注、各種機器の搬入・設置、設定・テストなど、製品を調達してから半年程度の時間が必要であった。一方で、IaaSを利用した場合、クラウド上に予め用意された機器を利用して即座に設定・テストを行えるため、半分程度の期間で新たなインフラを構築できるようになる。そのため、従来と比べ、新たなサービスを提供するまでのリードタイムを飛躍的に短縮することが可能となる。

次に挙げられるのが柔軟性の向上である。本連載2017 年2 月号でも紹介したとおり、これからの行政サービスは利用者視点でデザインしていくことが求められる。サービス提供者視点で解を見つけられたこれまでと異なり、今後は、多様化した利用者のニーズに対して最適な解を模索しながらサービスを提供していかなければならない。このような場合、小さく始め、利用者のニーズに合わせて試行錯誤を繰り返し、大きく育てていくといったアプローチが有効である。この場合、IaaSを利用すると、サーバの増強や追加といったインフラの変更を容易に実現できるため、サービスの発展に合わせて柔軟な対応が可能となる。

最後に挙げられるのがコスト削減である。従来は、ピーク時の業務量を処理可能なインフラを構築していたため、システム資源が過剰となり余分なコストが発生しがちであった。IaaSを利用した場合、ピークに合わせてシステム資源を保有する必要はなく、使用した分だけ支払えば良いため、余分なコストを抑えることが可能となる。

例えば、ニューヨーク市のNYC311(*6)では、クラウドサービスを活用して2009年より311オンラインというサービスを開始し、ウェブサイト、フェイスブック、ツイッターなど、様々なチャネルからの問い合わせを可能としている。また、このサービスでは、依頼内容に関する対応状況の確認や駐車場の空き状況などの情報を入手することも可能となっている。ニューヨーク市は、クラウドを活用することで、画一的なサービス提供から住民ニーズに応じたサービス提供にシフトし、さらに住民満足度の向上やセルフサービス化によるコスト削減を実現している。

また、アメリカでは、利用者ニーズの高かった電子申請への対応や使い勝手の向上など、既存のポータルサイトの改善を図っている省庁もある。クラウドを活用することで、電子申請数の増加に合わせたシステムの増強や新サービス提供のリードタイム短縮(従来の数か月から数週間へ)を実現しているのだ。

このように、クラウドはコスト削減だけでなく、インフラの俊敏性や柔軟性を向上し、デジタル化を加速する効果も見込めるのである。

クラウドファーストへのシフト

これまで述べてきたとおり、様々な効果をもたらすクラウドであるが、政府・自治体で利用する場合に考慮しなければならない課題もある。

例えば、従量課金のため変動しうる利用料の予算化だ。それは、一定の予算を確保した上で、想定利用料の下限で調達するといった対応が考えられよう。下限を超えた場合、予算の範囲内で落札業者の提案単価に基づき利用料を支払うことで、適正な利用料を維持するとともに、利用実績以上の支払いも回避することが可能だ。

また、内閣サイバーセキュリティセンターの「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」にどのように準拠するかについては、主要なクラウドサービスについて公開されている「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」に対応したセキュリティリファレンス(*7)を参考にするといった対応が考えられる。

現状では、過渡期であるがゆえの課題も存在するが、新たな行政サービスを効率的に創出していくためにも、今後はまずクラウドの利用を前提に検討を始めるべきであろう。


*1 WE ARE SOCIAL Digital in 2017:GLOBAL OVERVIEW
https://wearesocial.com/special-reports/digital-in-2017-global-overview

*2 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ利活用推進基本計画について」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20170530/siryou1.pdf

*3 内閣サイバーセキュリティセンター「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準(平成28年度版)」
https://www.nisc.go.jp/active/general/pdf/kijyun28.pdf

*4 総務省『平成28年版 情報通信白書』第2部第5章第2節4⑴ グローバル市場の動向
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc252410.html

*5 矢野経済研究所「クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)市場に関する調査を実施(2016年)」
https://www.yanoict.com/summary/show/id/429

*6 アクセンチュア ANALYTICS AND CLOUD COMPUTING SUPPORT GOVERNMENT SHIFT TO OUTCOMES
https://www.accenture.com/us-en/insight-deliveringpublic-service-future-analytics-cloud-computing

*7 アマゾン ウェブ サービス
https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/nisc_security_reference_session_at_public_sector_symposium_2017/

   マイクロソフト
http://www.microsoft.com/ja-jp/business/industry/gov/azurelist_security2.aspx?CollectionId=6c7e01d4-5fcc-4d3b-8453-49294eb72f47