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グローバリゼーションの波と日本企業のグローバル展開の現実

製造・流通本部

シニア・マネジャー

住枝 志保

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近年の世界のGDP成長率の推移を見ると、日本は1995年にピークを迎え、その後減少の一途を辿っており、2030年には世界経済におけるシェアが約4%と予測されています。これに対し、アジア太平洋地域は欧米先進国と比較し、2030年までに1.6倍の成長が見込まれ、世界経済成長のコアとなることが予測されています(*1)。日本企業は、今後成長が見込めない国内だけではなく、成長著しい近隣諸国への進出をどのように推進していくかを考えていかなければなりません。

実際、日本企業の中にも、海外でのM&Aを推進し、海外拠点数・海外売上高を成長させ企業規模を大きくする戦略を進める企業も多くあります。しかし実状としては、時価総額ランキングのグローバルトップ50に位置するような日本企業は1社のみとなっています(*2)。グローバルに事業の拡大は進めているものの、本社からのガバナンスが上手く機能せずに企業価値向上につながっていないということが日本企業の置かれている現実なのです。

グローバル展開の過程で業務やデータのバリエーションが増大

日本企業では、M&Aを推進しても、海外事業のガバナンスにあまり注力してこなかったため、地域統括組織の立ち上げや海外事業のオペレーティングモデルの整備が遅れ、非効率な業務やコンプライアンスの課題が発生していました。

具体的に日本企業が抱えるグローバルマネジメントの典型的な課題としては、

  • 事業ポートフォリオマネジメント

  • 新規事業立上、PMIによる効果刈り取りスピード

  • グローバル人材の採用・育成

  • データを共通言語としたタイムリーな業績・課題把握と改善アクション

  • 属人化業務の排除・コンプライアンス担保

  • ルーチンワークの均質的・効率的執行

  • デジタルの活用

等が挙げられます。グローバルに事業拡大をしている過程で、業務やデータの統一化が意識されていないため、結果としてバリエーションが増加してしまっています。そのため、本社側からガバナンスが利かず、正しい状況把握・経営判断ができない状況にあります。

求められているのは攻めのファイナンス

日本企業のグローバル化やデジタル化による事業変革が急速に進む中で、「ファイナンス」も役割の変化が求められています。今やファイナンスが担う領域は拡大しており、経営における中核の一つとして考えなければならなく、この統括者であるCFOの役割も大きく変遷を遂げてきています。自社の数字やファイナンスに精通するCFOがCEOの右腕となり、正しい投資判断や事業ポートフォリオの構築、グローバル経営を共に担っていく上での将来像を描いていかなければなりません。これまで企業経営にとって補助輪の役割にあったファイナンスが、今や経営の一翼を担う役割へ、いわば“守り”のファイナンスから“攻め”のファイナンスへの変革が求められています。株主との対話や経営を支える効率的なオペレーティングモデルの整備もファイナンスに求められるようになり、お金の管理をしているだけの役割ではなくなっているのです。

ファイナンス主導のグローバルオペレーティングモデル変革

とくに現在の日本企業において、攻めのファイナンスとして急務なのはグローバルでの最適なオペレーティングモデルの整備となります。前述したように、日本企業ではグローバル展開や事業展開の際に業務やデータの統一化の意識が低く、結果としてコンプライアンスの課題が生じたり、経営の見える化ができずに迅速な経営判断ができない状況にあります。

一方で、グローバル先進企業はグローバルでオペレーティングモデルを標準化・共通化し、経営の基盤を整備することで、各事業組織がコアとなる事業活動に特化できるような仕組みづくりを進めています。具体的には、業務・ITなどの仕組みを標準化・共通化したグローバルプラットフォーム実装することで、グローバル全体での業務の品質・効率・スピード・柔軟性を担保していきます。業務・ITの標準化を進めると、データも標準化されグローバルで共通的な言語を活用することができるようになります。その結果、事業の状況をリアルタイムで正しくとらえることができ、その情報から経営のかじ取りをしています。

CFOやファイナンスが旗振り役を担い、グローバルオペレーティングモデルを整備・再構築することで、グローバルの事業拡大に合わせた、企業価値の向上を実現できるようになります。

攻めのファイナンスへの変貌

グローバルオペレーディングモデル整備の旗振りをはじめとした“攻めのファイナンス”の役割を担っていくためには、現行多くの時間が取られているオペレーショナルな業務をデジタル化や外部化して余力を創出し、より専門性が強く付加価値の高い業務にシフトしていかなければなりません。とくに、今まで“守りのファイナンス”として担ってきた業務の大半はデジタル化していくことが可能となります。

また、余力を創出するだけでなく、今後事業側のパートナーとして並走していく立場になることから、ファイナンス組織全体のスキル向上や意識改革も重要な取り組みとなります。ミッションが変革することを明示するために、CFOオフィス等新たな組織を立ち上げる企業もあり、現行のファイナンス組織の延長線上でなく、ドラスティックな変革としてファイナンス組織全体が取り組むことが求められています。

  • *1 : IMF World Economic Outlook Database October 2018 Edition, https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003060791から取得 (取得日2018/2/27)

    名目GDPについては、1980年から2017年の間は実際の値、2018年から2023年の間はIMFによる予測値を適用した。 2023年以降の期間について、 2018年~2023年のIMF予測値のCAGRの値に基づいてアクセンチュアが算出。

  • *2 : 週刊ダイヤモンド 2018年8月25日発行

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