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最先端のワークスタイルが最先端のサービスを生み出す

新井 美帆

製造・流通本部 

マネジャー 

新井 美帆  

これまで企業は同業他社との差別化に焦点を当ててきましたが、Amazonの品揃えや配送スピード、Googleの検索性能の高さなど、グローバルのデジタルリーダーたちが提供するサービスレベルが業界の垣根を越えて期待されるようになりました。こうした先進的な企業と同等のサービスを提供できなければ、それはすぐにギャップとして顧客に認識される「Liquid Expectation(流動する期待値)」の時代になっているといえます。

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多くの企業が顧客のLiquid Expectationに応えようと最先端のサービス創出に取り組んでいますが、新たなサービスを生み出す土壌となるワークスタイルの変革に企業は取り組んでいるでしょうか。 今日、私たちはメッセージングやSNSでコミュニケーションし、モバイルデバイスひとつで買い物や調べものなど、日常の雑務をこなしています。一方、企業は未だにメールと電話を主なコミュニケーション手段とし、専用の機材を用いて決まった人と情報共有を行い、固定された席でパソコンに向かって仕事をするワークスタイルのままとなってはいないでしょうか。社員のワークスタイルが変わらないままで、最先端の顧客体験をグローバルに提供できるでしょうか。つまり、サービスと同様にグローバルレベルでワークスタイルのイノベーションが求められているのです。先進的な企業のグローバルワークスタイル・イノベーションを例に、最新のトレンドを①プロジェクト型チーミング、②スキルエコノミー、③Diversity 2.0の3つに分けて紹介します。

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1)プロジェクト型チーミング

これまでの部署から部署へと順番に業務をリレーするバリューチェーン型のプロセスでは、流動する顧客の期待値のスピードに付いていくことはできなくなっています。部署や機能の隔たりをなくし、必要に応じてその場でプロジェクトチームを編成する必要があります。

Amazonでは、共同創設者/CEOのジェフ・ベゾス氏が唱える「The Two Pizza Rule(2枚のピザ理論)」という少人数制のプロジェクト型チーミングを全社的に適用しています*1。チームの生産性と意思決定のスピードを最適化できるチームの人数は、2枚のピザで賄える人数、つまり5-8人だとする理論です。必要に応じて必要最低限の人材がチームとして稼働することで、スピーディな意思決定と高速PDCAサイクルを可能にし、顧客の期待値の変化へ迅速に対応しています。

アクセンチュアでは、37万人以上の社員がプロジェクトベースでチームを編成しています。クライアントが抱える課題に応じて、その時々に必要なスキルを全社からかき集めます。固定の勤務地や勤務形態は存在せず、クライアントの課題解決に必要な働き方を見つけ、自らを適応させます。

~プロジェクト型チーミングを支える自走組織~

プロジェクト型チーミングを運用する組織形態として、「自走組織」というものがあります。下が上の命令に従うトップダウン型組織とは異なり、自走組織ではプロジェクト単位でPL責任を持ち、各自が経営者としての意識を持ち行動します。 2009年にAmazonが高額で買収したことで注目を集めたZapposは、自己管理型の組織を目指し、2015年に「ホラクラシー」という組織形態を取り入れています。ホラクラシーは従来のヒエラルキー(中央集権型・階層型)の反対語として使われており、分散型という意味を持ちます。Zapposにはマネージャーなどの管理職は存在せず、「サークル」と呼ばれる独立したチームが社内に点在しています。各サークルには特定の役割とポイントが設けられており、リードリンクと呼ばれる責任者がサークルの責務とポイントを管理します。社員には「People Point」と呼ばれるポイントが一律100ずつ配布され、どのサークルに自分の何ポイントを費やすかを自分で選択します*2。そうすることで、社員自らが自分の役割を考え決断する環境を作り出しています。

2)スキルエコノミー

スキルエコノミーとは、一人ひとりが持つスキルに合った対価を報酬として支払う経済を意味します。必要に応じてプロジェクトチームを構成する場合、必要なスキルはその都度変わり、常に必要な人材を企業の社員として確保していくことは困難です。そこで、フリーランサーやクラウドソーシング等、社外のリソースを活用する必要があります。フリーランサーの数は年々増加しており、2015年3月時点で日本のフリーランサー人口は1228万人、16兆円の経済規模に達しています。米国では2014年時点で5,300万人(米国労働人口の34%)、72兆円の経済効果を生み出しています*3。この傾向は今後右肩上がりになり、会計サービス大手Intuitは2020年までに米国の労働力の43%をフリーランサーが占めると予測しています*4

米国に拠点を置くZiptaskというスタートアップ企業は、フリーランサーのグローバルデータベースを作り、面接や採用の交渉まで雇用プロセスに必要な手続きを全てオンラインで完結可能なクラウドソーシングのプラットフォームを提供しています *5。フリーランサーは自分のスキルと希望報酬額をアピールし、雇用側は必要な人材をグローバルに検索、かつその場でビデオ通話による採用面接を行うことが可能です。雇用後に実際のスキルが期待に見合わなければ、週単位での解約が可能です。

~スキルエコノミーを後押しする人工知能(AI)の発展~

スキルエコノミー化には、人工知能(AI)の発展も大きく関与しています。オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授は、今後10~20年で47%の仕事が人工知能に取って代わられる可能性があるとしています *6。例えば、2016年8月に欧米で配信が開始された「Wonder」は、秘書のような役割を担うチャットボットです*7。SMS経由で覚えておきたい情報をWonderに記憶させておけば、必要な時に適切な回答を引き出してくれます。こういった技術は日に日に精度を増し、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる人々は今以上の価値創出を要求されることになります。

3)Diversity 2.0

多くの企業が高いスキルを持つ人材を求め、人材市場の競争は激しさを増しています。必要な人材の確保に成功したとしても、いかにその人材の能力を個人・チームの双方の観点から最大限引き出せるか、つまり彼ら/彼女らに最高の社員体験を提供できるかどうかが重要です。これまで多くの企業は、性別や人種、セクシャル・マイノリティなどの観点で多様性の受け入れに取り組んできました。しかし、今はその一歩先である様々なスキルや専門性、モチベーション、ゴールを持つケイパビリティの多様性に対し、一人ひとりが魅力的と感じる体験を提供するDiversity 2.0*8へのシフトが求められています。 

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ケイパビリティの多様性を受け入れるには、評価制度やオフィスの施設・設備、使用するテクノロジーやデバイスなど、インフラからハード、ソフトまで、全体的な視野からのアプローチが必要となります。Cisco Systemsは2010年以前より、年次評価においてダイバーシティの枠を取り入れており、CSRレポートでもスキル別に人種の多様性を報告しています。勤務場所においては、社員が好きな場所で働けるようワークステーションやコラボレーションエリア、集中室、防音室、カフェ、クリエイティビティゾーンなど様々な場所を用意し、選択の自由を提供しています。*9 Adobeは組織面から社員体験の向上に取り組んでおり、2015年11月に「Customer and Employee Experience」という顧客体験と社員体験の双方を検討する新たな部門を設立しています。*10

~重要性を増すチームコラボレーション~

Diversity 2.0に取り組む際、決して忘れてはならないのがチームコラボレーションの重要性です。これまで企業は「自社文化に合う人」を採用してきましたが、これからは様々な背景知識、文化、スキルを持った人たちとチームを築くことになります。一人ひとりが持つ能力とクリエイティビティを掛け合わせることで相乗効果が生まれ、最先端のサービス創出に繋がるという観点から、チームコラボレーションはその重要性を増しています。IBMが実施しているグローバル経営層の調査でも、社内外とのコラボレーションに取り組むCEOは今後3~5年間で倍増するとされています。*11

グローバルワークスタイル・イノベーションとは、「新たな企業文化の創造」

3つのトレンドが示すグローバルワークスタイルは、コミュニケーションツールやビデオ会議システム等のツール導入だけで完結するものではありません。組織、業務プロセス、オフィス環境、ITプラットフォーム等、企業運営における根幹から見直す必要があります。例として、フリーランサーを含むプロジェクトチームを導入しようとした場合、下記のような項目が検討事項として挙がります。

  • 組織・人事 :組織設計、評価制度、人員配置、フリーランサーの採用、採用基準、雇用形態

  • 業務プロセス :チーム内の業務フロー、意思決定プロセス、チーム外との連携方法

  • オフィス環境 :勤務場所、会議室、カフェテリアの利用方法、通勤手段

  • ITプラットフォーム :メッセージング・ビデオ会議・クラウドストレージ等のモバイルコミュニケーション基盤、情報セキュリティの担保

これまで多くの企業が、自社の働き方・価値観・社風など、いわゆる企業文化に合う人材を採用してきました。しかし、これからは今まで関わったことのないような価値観・文化・スキルを持った人々とコラボレーションし、彼ら/彼女らが最高のパフォーマンスを発揮できるようなワークスタイルを生み出す必要があります。 つまり、グローバルワークスタイル・イノベーションとは、「企業文化そのものを新たに創造すること」を意味しているのです。

アクセンチュアでは、プロジェクト型チーミングやDiversity 2.0への取り組み等、既にグローバルワークスタイルトレンドの一部を導入している経験と知見を活かし、お客様のワークスタイルのコンセプト設計からコンセプトに基づいた人事制度、業務プロセス、テクノロジー導入の検討・導入展開まで、首尾一貫した支援を行っています。


*1:Amazon: http://gentosha-go.com/articles/-/718
*2: Accenture調べ
*3: Career Hack:http://careerhack.en-japan.com/report/detail/484
*4: Accenture Technology Vision 2016
*5: Ziptask: https://www.youtube.com/watch?v=xtHB99lzW24&t=39s
, https://pitchbook.com/profiles/ziptask-profile-investors-funding-valuation-and-analysis
*6: Diamond Online: http://diamond.jp/articles/-/76895

*7: Wonder: http://jp.techcrunch.com/2016/08/14/20160812wonder-is-a-bot-that-will-remember-anything-for-you/

*8: Diversity 2.0: http://www.milkeninstitute.org/events/conferences/global-conference/2010/panel-detail/2309

*9: Cisco CSR Report 2015: http://www.cisco.com/assets/csr/pdf/CSR_Report_2015.pdf#page=30

*10: Adobe:http://sloanreview.mit.edu/article/adobe-reinvents-its-customer-experience/

*11: IBM Global CEO Study 2015: http://www-935.ibm.com/services/multimedia/c-suite-study-ceo-pov-ja.pdf

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