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世界共通の経営プラットフォームで
グローバルガバナンスを強化

Ishikawa 

マネジング・ディレクター

戦略コンサルティング本部

顧客戦略グループ

アジア・パシフィック統括

石川 雅崇

ビジネスの持続的な成長を目指す上で、グローバル企業の大きな経営課題の1つが、M&Aを通じて事業規模拡大と収益向上を図るインオーガニック戦略です。近年、メディアでもしばしば取り上げられるように、世界におけるM&Aの件数は加速度的に増加しています。特に国内市場がますます成熟、飽和する中で、グローバル市場に新たな成長の活路を見いだそうとする日本企業にとって、M&A戦略は大きなテーマとなっています。

とはいえ、M&A戦略で成功を収めているのは、世界でもごく限られた一部の企業です。では、一体何がM&Aの成否を分けるのでしょうか。このことを考察するための成功モデルとして、私たちアクセンチュアが支援するグローバル飲料会社をご紹介したいと思います。この企業はM&Aを繰り返しながら、過去5年間で1兆円規模だった営業利益を約2倍に拡大することに成功しました。この過程における同社のM&A戦略からは、世界の競争市場でトップクラスのプレゼンスを維持するハイパフォーマンス企業に共通する成功のポイントが見えてきます。

そもそも、M&Aの理想的な手法とはどのようなものなのでしょうか。M&Aは買収が完了すれば、それで成功というわけではありません。その後の事業運営の中で、1+1=2以上のシナジー効果をもたらしてこそ、はじめて成功したと評価することができます。そして、M&Aの成否を左右する必須要件の1つとして挙げられるのが「グローバルビジネスにおけるガバナンスの強化」、つまり世界共通の経営プラットフォームの確立とその徹底です。

買収先となる企業は、たとえ同業であったとしても、経営方針から現場の業務まで異なる考え方、企業文化を持っています。それだけにM&Aのシナジーはすぐに発揮されるわけではなく、そこに至るまでには生産拠点やプロセスの統合といったオペレーションの見直しが必要となります。

実際、このグローバル飲料会社も新たな企業を買収するたびに、過去の経緯や伝統的な事業体制を考慮しながら、どのようなオペレーティングモデルが最適かを慎重に検討した上で、新たなガバナンス体制を構築しています。

最適なオペレーティングモデルによる
早期のシナジー創出

オペレーティングモデルの設計について、もう少し具体的にお話しします。複数の事業拠点がグローバルに分散する経営環境においては、それぞれの事業で共通するファンクションの横断的な管理(横串の管理)が不可欠となります。つまり、共通する業務の標準化(あるいはグローバルで集約)によって業務の生産性が高まり、そこからキャッシュが生まれ、成長領域に新たな投資を振り向けることができるのです。このグローバル飲料会社のケースでも、以下のポリシーに基づいてオペレーションモデルの最適化と徹底が図られています。

  1. 管理系/支援系業務はシェアードサービスセンターに集約

    ・ファンクション毎にプロセスオーナーを配置し、グローバルで業務を標準化

    ・業務をテンプレート化し、素早く効果が創出できる仕組みを構築

  2. 直接材/間接材にもグローバル・オーナーを配置し、調達コストを抑制

    ・原料毎、間接材の費目毎にコストオーナーを配置

    ・各コスト削減の項目において事業側よりも強い権限を持つ

  3. 地域特性が強い業務はローカルに配置

    ・販売、生産、商品企画などの業務において、地域特性が強い一部の業務はローカルで管理

    ・ローカル/グローバルの役割はポリシー化(M&A時の業務の切り分け)


Folie

1のシェアードサービスセンターについて、このケースでは経理財務、人事、コールセンター、分析、調達などの管理系/支援系業務については、インド、北米、南米、欧州、アジアのシェアードサービスセンターで横串の管理が行われています。また、各ファンクションの業務はすべてテンプレート化され、新たな買収先にも素早く適用できる体制が整えられ、これによって重複機能の削減とシナジーが生み出されます。同様に、2のコストオーナー制度もコスト削減を徹底するためのグローバルガバナンスの重要な機能です。

ただし、グローバルビジネスにおいては3の地域特性への配慮も見逃せない要素です。特に製品の重量がかさむ飲料品ビジネスでは物流コストが収益に大きな影響を及ぼすため、地産地消という原則があります。この他にも、販売、生産、商品企画など地域特性が強い業務は、ローカルへの権限委譲が合理的です。 こうしたローカル/グローバルの役割はポリシー化して、M&A時に業務を的確に切り分けることで、高い収益につながる仕組みが迅速に構築されます。逆に言うと、M&Aのシナジーを最大化するためには、地域に特化した業務以外はすべてグローバルで集約していくことが望ましいということです。

企業買収を行った直後は、統合のイニシャルコストが発生することによって、一時的な収益の低下が避けられません。その後のプロセス統合とスケールメリットを生かして、いかに速やかに高収益体質に移行できるかは、ガバナンス効果に高い経営プラットフォームが整備されているかどうかにかかっているのです。私たちは、このような戦略を“プラグイン戦略”と呼んでいます。コンセントにプラグを差し込めば、すぐに電気が供給されるように、買収した企業を用意した経営プラットフォームに『差し込む』ことによって、1つの企業として稼働し始めることが可能となるという考え方です。プラグイン戦略は、M&Aによって成長を目指す企業にとっては、極めて有効な戦略と言えます。

日本企業のポテンシャルを最大化する
グローバルビジネスでのチャレンジ

このグローバル飲料会社の場合、M&A実施後の3カ月間程度で統合効果の見極めを行い、その後3カ月で具体的な効果を創出し、約1年前後で完全な統合、つまりプラットフォーム化されたガバナンス体制への定着を完了し、当初設計した高利益体質を確立する、というのが平均的な時間軸となっています。競争がますます激化するグローバル市場で高い収益を維持するためには、M&A戦略にもこれほどのスピードが求められているのです。

こうしたハイパフォーマンス企業の成長戦略と比較すると、日本企業は効果的なM&A戦略において後れをとっていることが否めません。買収自体が1つの難関ではありますが、買収企業の事業にさらに磨きをかけて、収益を上げるためのプラットフォームがまだまだ未整備なのです。

そこでは事業、インダストリー、ケイパビリティ、ファンクション、それらのすべてでガバナンスを徹底するための仕組みが必要になってきますが、日本企業は潤沢な内需をターゲットに事業を発展させてきた経緯があり、これまではグローバルな事業体制を横串で管理する必要がありませんでした。

しかし、グローバルビジネス時代の到来によって、こうした伝統的な経営手法はすでに通用しなくなっています。マーケティングをグローバルで横串に見る、財務経理をCFOとして横串に見るための組織作りや運営にチャレンジしていくことが今後の大きな課題と言えます。

これはいずれの業界の企業にとっても大きなチャレンジになりますが、日本企業には世界のハイパフォーマンス企業と同等に競い合えるだけの豊富な経営資産とポテンシャルがあることは間違いありません。M&A戦略をオペレーションモデルの設計・運営まで、幅広い領域で俯瞰・一貫した取り組みを推進することが成功の鍵となるでしょう。

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