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接客不在のデジタル化

デジタルコンサルティング本部 

マネジング・ディレクター 

小春 満義

「カスタマーサービス」という言葉を聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか? 企業のウェブサイトで右端や下の方にある「お問い合わせはコチラ」のコンタクトセンターへのリンクを想起する人も多いかもしれませんし、また、ある人は購入後のメンテナンスや修理サービスのことを想起するかもしれません。どちらもカスタマーサービスですが、全てではありません。
カスタマーサービスとは、お客様が商品やサービスを購入する前後、あるいは購入中に最適な選択や体験ができるようにサポートすることです。つまり、「接客」をするということです。それは店舗であろうと、ウェブサイトであろうと、アプリであろうと、どのチャネルであっても本質的には変わらないはずです。

接客不在のデジタル化


接客不在のデジタル化

デジタル化の本質の1つは、仲介者をなくしてダイレクトで「インタラクティブなコミュニケーション」を実現することです。郵便サービスが電子メールとなり、ここ数年はLINEやFacebookのようなメッセージング・サービスの出現で、リアルタイムに複数人がつながってコミュニケーションできるようになりました。企業もECサイトやモバイルアプリといったオウンドメディアを持つようになり、それ以前のマス広告に依存したコミュニケーションから、よりお客様とダイレクトにつながり、商品やサービスを提供するようになっています。

では、接客についてはどうでしょうか。店舗だと当たり前なのに、デジタルだと途端に接客というサービスが存在しなくなります。

アップルストア(実店舗)の新規オープンを例にみてみましょう。ご存知の方も多いと思いますが、新規オープンするアップルストアを開店時間に訪れると、スタッフから拍手で迎えられます。少し照れくさいですが、どこか特別感があって清々しいものです。面白いのが、アップルストアが来店したお客様にまず提供しているのが、製品でもなければ、詳細なスペックでもなく、スタッフからのウェルカムの拍手であり、笑顔であり、握手であるという点です。

では、アップルストアの接客のようなECサイトはないものでしょうか。サイトを訪れると接客スタッフがいて、「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょうか」と笑顔で迎えてくれる。次世代テレビを使って、チャンネルをつけると接客スタッフにつながるというのでもよいでしょう。ほとんどの企業のウェブサイトやECサイトは、ブランドイメージや商品の「陳列」(カタログ)で溢れていますが、そこに接客は存在していません。

接客のデジタル化が始まっている

Gartner社※1のレポートでは、2018年までにグローバル企業500社のうち、100社はビデオチャットでカスタマーサービス(Customer Facing Interactions)を始めるであろうと予想されています。アメリカ西海岸をベースにオンライン・コンシェルジュサービスを提供しているOperator※2という企業があります。Operatorと契約したユーザーは、Facebook MessengerやSMSといったスマートフォンにあるメッセージングアプリを使って、気楽に欲しいものをメッセージングで相談して買うことができます。花や家具、洋服といったカテゴリーがあり、それぞれ専門のコンシェルジュがメッセージング経由で接客をしてくれます。例えば、「今度引っ越しするから新しいソファを探しているのだけど」とオペレータへメッセージングすると、人工知能が初期対応をして、家具専門のコンシェルジュにつながります。担当のコンシェルジュが予算や好みをヒアリングして、お客様の欲しいものの画像を送付したりして提案してくれます。
Facebookのザッカーバーグ社長が、2016年のFacebook’s annual F8 conference で、Facebook MessengerにBots(人工知能)を組み込んで提供することを発表した際、これからは「花を送りたいのであれば、新しいアプリをダウンロードしたり、クレジットカードの登録をする必要はない、メッセージを送るだけだ」と述べています※3 。
ここには、おそらく2つの示唆があります。1つ目は、メッセージングアプリは気軽に企業とお客様が関係を構築する最も普及したチャネルとなるという点です。実際、2018年にはインターネット人口の90%がメッセージングアプリを利用するであろうと予測されています※4。
2つ目は、デジタル接客の時代が到来した、ということでしょう。これまで企業は、ブランド力のある商品(モノ)を開発し、それを最大限魅力的にアピールできるようにブランドメッセージやウェブサイトのデザインを工夫してきました(コト)。同様に、これからはブランド力のある企業イメージを体現するデジタル接客(ヒトまたは人工知能)が重要になってくることを意味しています。

デジタルこそ「ヒト」

デジタルは、「人の価値」(タレント力)が差別化要素となります。デジタルによってあらゆるものが数値化され、人と人がつながります。世界最大のタクシー会社Uberのサービスのように、ドライバーのRatingを見て、よいドライバーなのかをユーザーは判断しています。ツイッターやインスタグラムのように、タレント力がフォロワーの数に大きく影響します。
商品やブランドイメージの賞味期限は驚くほど速いのです。企業はどんどん新商品を開発し、市場に投入します。コミュニケーションコンテンツもその都度制作し、また新しい商品が出たら作りなおします。その中で色あせず、商品が変わってもお客様(ファン)との関係性を維持し続けるのが、デジタル接客のタレントです。また、経験を積めば新たな役割で活躍が期待できます。デジタル時代においても、企業最大の資産は「ヒト」であり、デジタル化によってその重要性はさらに際立つでしょう。

デジタル接客における人工知能の使い方

前述のOperatorを含めて、カスタマーサービス領域でAIArtificial Intelligence)、すなわち人工知能が活用されつつあります。コールセンターのオペレータは同時並行で1件しか対応できないのに対して、人工知能であればマシンのパフォーマンスと後続対応するオペレータのキャパシティが許す範囲で対応が可能で、圧倒的な生産性の向上が見込まれます。ただし、接客は最終的には人間が対応すべきでしょう。人工知能は初期対応や定型的な問い合わせ対応、人間の接客時のリコメンデーションデータの生成がまずは現実的な導入スコープであり、お客様の言葉を言外の意味まで察知し、お客様の心をつかむレベルで実践するのはまだまだ時間を要します。それだけ接客とは付加価値の高い仕事だということです。とはいえ、大量のメッセージングをさばくには、確かに人工知能の活用は有効です。今後は人間との役割分担が導入の肝となるでしょう。

目指すは「全員接客」

目指すは「全員接客」

接客のデジタル化は、企業にさらに大きなビジネスインパクトをもたらします。デジタル時代の接客はValue Chain全てで接客することが可能です。すなわち、社員全員が1人ひとりのお客様やコミュニティ上で接客する「全員接客」モデルの出現です。これまでの接客は、営業や店舗の販売員、コールセンターといったValue Chainの下流にある人びとが担ってきました。今日、接客のデジタル化によって、R&Dや商品企画、設計・製造といったValue Chainの上流に位置した人びとも接客することが可能となったのです。

接客のエンターテイメント化 
~ サービステイメント

上記で紹介した2016年のFacebook’s annual F8 conference で、Facebookはもう1つの興味深い新サービスを発表しました。Facebook Live Video APIです。このAPIは動画のLive中継をFacebook上で実現し、“何百人もの人たちが同じ瞬間を同じタイミングで経験できること”を目指すというものです※5。
この発表はカスタマーサービスの可能性を格段に大きくする可能性があります。ソーシャル上で商品企画会議や取り扱い説明会、トレーニングアドバイスなど、企業とファンがLIVEで開催したりできます。Facebook Live Video APIのパートナー企業であるMevoがいくつかのコンテンツをレコードして発表しています※6。
このサンプル・コンテンツは料理番組ですが、Facebookはインタラクティブ性がある環境であるので、将来的にはここからお客様が作り方のアドバイスをもらったり、レシピで必要材料をEC連携して発注できるようなサービスにつなぐこともできるようになるかもしれません。国境の壁もなく、世界中からファンを集客できるのです。エンターテイメント・コンテンツでグローバルに接客して売る「グローバル・サービス・テイメント」が出てきてもおかしくありません。

グローバル・カスタマーサービス 
~ グローバルで接客する


企業はグローバル化し、経済規模を拡大してきましたが、お客様1人ひとりにとって、グローバリゼーションの恩恵はどこまであるでしょうか?1つはコスト削減による価格の低下、もう1つはグローバルブランドとしての知名度、そして今後はグローバル規模で1人のお客様に接客して、購入や体験をサポートするということではないでしょうか。
海外旅行に行きたいので、おすすめのスタイルをメッセージングやFacebook Live Videoで企業に相談するとします。担当者は旅行先の自社店舗にSNS等で連絡し、現地の気候や流行に合わせておすすめのスタイルの提案をもらいます。ユーザーは現地の店舗で受け取ることもでき、滞在先のホテルに届けてもらうこともできます。海外店舗の担当者が直接接客の会話に入ってきてもよいのです。これは1:1のコールセンターではできなかったことです。
企業はグローバリゼーションによって得たネットワークで1人ひとりのお客様に尽くす、そんな時代がまもなく来るかもしれません。グローバル・ネットワークの広がりこそが、カスタマーサービスの差別化要因となるでしょう。
「おもてなし」の精神を持つ日本企業の接客品質は世界でもトップレベルです。日本企業だからこそ、デジタル接客のグローバル・スタンダードの時代を築けるはずです。


<カスタマーサービス事例>
R&D・商品開発:
スターバックス「My Starbucks Idea」
スターバックスは2008年より、お客様からの新規商品やサービスの提案、既存商品やサービスの改善に関するコミュニティサイトを運営しています。これまで23万件以上が投稿され、1000件以上が社内で検討され、300件近くが市場に投入されています(2016年6月、アクセンチュアによる集計)。「My Starbucks Idea」サイトでは、スターバックスの従業員がアイデアの詳細に関するヒアリング、検討結果の通知をその場で行っています※7。

カスタマーサービス(販売):
Schuh: イギリスの有名靴販売会社※8
ビデオチャットの導入により、サポートなしの状態に比べて平均注文額が10%向上し、コンバージョン率が4倍になったと報告されています※9。

SUITSUPPLY:オランダのオーダーメイド紳士服ブランド※10
ビデオチャット機能付きのモバイルアプリを活用し、コーディネートやスーツ・シャツのオーダーメイドをFace-to-Faceで
スタイリストに相談可能です。

Liveninja(サービス): 
1対1のビデオチャットで専門家に相談ができるプラットフォームサービス。法律相談、音楽レッスン、ファッションアドバイス、フィットネスアドバイス等何でも相談できます※11。

この他、アウディジャパン※12やビームス※13でも、ライブチャットを使ってキャンペーンやコンシェルジュサービスを実施しています。



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