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企業がデジタル活用でスピード経営を実現するには――「CEO調査 2014」から導く3つの提言

アクセンチュアが全世界で実施した、大企業の経営幹部に対する意識調査の結果をベースに、デジタル時代の経営課題やその解決策についてのアクセンチュアの提言を紹介しています。
ジェフリー・ベッグ

アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
統括本部長
ジェフリー・ベッグ
(Jeffrey Beg)



清水 新

アクセンチュア
戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
清水 新



デジタル・テクノロジーがあらゆる業種・業界のビジネスに大きな影響を及ぼすようになっている。そのような中、企業の経営者はどのような課題を抱えているのか。アクセンチュアが全世界で実施した、大企業の経営幹部に対する意識調査の結果から、その実態が明らかになった。デジタル時代の経営課題とは何か。その対策は。日本企業に向けたアクセンチュアの提言とともに紹介する。


企業トップは2014年の経営環境をこう見る
アクセンチュアは2014年2月12日、グローバルの企業経営幹部(CEOをはじめとする、いわゆるCxOの役職者)を対象に実施した経営意識調査「グローバルCEO調査 2014:CEOが直面する課題~デジタル時代を迎えて」の結果を日本で発表した。この調査は、グローバルの企業経営幹部が今、抱えている課題や懸念を明らかにする目的で、アクセンチュアがエコノミスト誌の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)と共同で実施したものである。

調査対象となったのは、日本を含む世界20カ国の企業経営幹部1041人(うち33%がCEO)。日本の回答者は全体の7.3%に当たる76人(うち42%がCEO)である。2013年11月に調査を実施した。

全世界の回答を見ると、まず2014年の経営環境については、多くの企業が自国の経済や自社のビジネスを楽観的にとらえている一方、グローバル経済の見通しについては半数以上が懸念を持っていることが分かった。

今後の経営上のリスクを複数回答で聞いたところ、「新規市場参入による競争激化」「主要な市場での景気低迷と需要低下」「既存産業における企業統廃合」の3つの要因が全世界の回答者のうちそれぞれ30%を超える比率を占めた(図1)。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部のジェフリー・ベッグ(Jeffrey Beg)統括本部長はこの全世界の結果から、「予測できない市場変化やマクロ経済の動向、産業構造の変革といった点を、経営環境の不安定要素ととらえている回答者が多い」との見解を示した。


図1 世界の企業トップが挙げる2014年の経営リスク(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

【図1 世界の企業トップが挙げる2014年の経営リスク(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】


浮かび上がる3つの経営課題
では、日本企業がそうした不安定要素のある経営環境を生き抜くためには、どのような点にフォーカスすべきなのか。今回の調査結果から明らかになった日本企業の課題は、「グローバリゼーション」「組織・人材への投資」「デジタライゼーション」の3つである。

なぜ、この3つの課題が浮かび上がってきたのか。アクセンチュア 戦略コンサルティング本部の清水新マネジング・ディレクターは、「今回の調査結果において、グローバルと日本の違いをひもとくと、この3つが課題として見えてきた」として、それぞれについて次のように説明した。

まず、グローバリゼーションについては、グローバルおよび日本の回答結果ともおよそ60%がBRICsをはじめとした新興国市場に注目しており、投資を行う構えを見せている。しかし、今後1年間で自国市場と海外市場のどちらに投資を優先するかを聞いたところ、グローバルでは58%が海外市場だったのに対し、日本企業のみに着目すると55%が自国市場を優先するとの回答結果となった。

この結果に、グローバリゼーションに対するグローバルと日本の取り組み姿勢の違いが端的に表れている。すなわち、日本企業は、日本を中心とした先進国市場からの転換ができておらず、新興国市場における収益力の低さがその足かせになっている。

次に、組織・人材への投資については、グローバルでは75%が今後1年間に人的資源への投資(採用、トレーニング、定着、その他の能力開発)を増やすとの回答結果だったが、その中で日本は63%と他国に比べて最も低い割合となった。また、アクセンチュアが別の調査で、日本を含むアジア諸国の企業を対象に、競争力のあるトレーニングや人材開発プログラムを実施しているかどうかを聞いたところ、アジア諸国が57%だったのに対し、日本は30%と大幅に低い回答結果となった。

これまで日本企業の多くは、「機能ドリブン」の組織構造をとっていた。特定の機能を担い、個々の専門性を追求する組織単位を積み重ねた組織構造である。そこに(OJT On-the-Job Training:職場内教育)を中心とした人材育成モデルを適用してきたため、モノカルチャーが深く根付いている。これでは、急速に拡大する新興国市場において他のグローバル企業に追随していくことは難しい。日本企業は組織・人材への投資に対して一層の増強を図っていくことが求められている。

そして、デジタライゼーションについては、日本企業はデジタル・テクノロジーの重要性を非常に強く認識しており、ビジネスの成長に寄与することも十分に理解していることが今回の調査の回答結果から明らかになった。この背景には、“技術”で社会を変革させてきた日本企業の成功体験があるだろう。

しかし、今回の調査でグローバルの回答結果との違いが明確に表れたのは、「デジタル・イノベーションの責任者は誰か?」という点だ。グローバルの回答結果ではCEOが35%でトップだったのに対し、日本はCIOが39%でトップだった(図2)。つまり、日本企業ではCEOがその責任をCIOに委ねているケースが多いのである。日本企業は先に述べた通り機能ドリブン組織であり、それが「デジタル・イノベーションは技術担当の仕事だ」とみなされる土壌になっている。

だが、CEOが自ら指揮を執らずして、果たして企業はデジタル・イノベーションを推進できるのだろうか。デジタライゼーションが課題として浮かび上がったポイントはここにある。


図2 デジタル・イノベーションの責任者は誰か?――日本とグローバルに大きな差(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

【図2 デジタル・イノベーションの責任者は誰か?――日本とグローバルに大きな差(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

日本企業がこれから立ち向かうグローバル化は、2つの側面がある。1つは、新興国市場の争奪戦。もう1つは、新興国市場にとどまらず既存市場においても待ったなしで進む、デジタル変革による破壊的再創造への適応戦である。ここにおいて、日本企業が上述の課題を乗り越え、強みを打ち出して世界各国の企業と戦っていくにはどうすればよいのか。清水マネジング・ディレクターは3つの提言を行い、それぞれについて次のように説明した。


[提言1]スピード経営へのモデル転換
1つ目の提言は、「スピード経営へのモデル転換」である。図3はその全体像を示したものだ。左側が「これまで」、右側が「これから」を表している。この図で最もポイントになるのは、中段にある「事業運営モデル」の転換である。スピード経営へのモデル転換を図るためには、まず組織内の情報流通の仕組みをこれまでの「機能ドリブン組織/情報積み上げ型」から「情報共有型組織」へ変えていく必要がある。


図3 スピード経営モデルへの転換(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

【図3 スピード経営モデルへの転換(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

この変革を進めていく上で、考え方や実際の取り組みとして変えていくべき点としては、「個別/部分最適中心から全体最適中心へ」「業務精度・品質重視から変化対応スピード重視へ」「OJT中心の人材育成からトレーニング型人材育成へ」「職位型報酬制度から職務型報酬制度へ」、そして「個人依存度の高い経営モデルから仕組み依存度の高い経営モデルへ」といったことが挙げられる。

また、図3の下段にある「変化対応」では、「状況把握→分析→アクション」といった事業運営の流れにおいて、これまでの組織とこれからの組織の違いを挙げている。これまでの機能ドリブン組織では、組織間を連携・報告によってつなぐ必要があるため、状況把握に時間がかかるケースが少なくなかった。また、個々の組織がそれぞれに業務を進めているため、組織間のKPI(Key Performance Indicator:重要評価指標)をすり合わせようとすると食い違いが出ることも多々あった。

これに対し、これからの情報共有型組織では、最前線から最細粒度のデータを自動的に取得する仕組みが機能する。さらにアナリティクスを活用し、そのデータを「単なる数値の羅列」から「ビジネスにとって意味や価値のある情報」へと変換した上で、組織内で共有できるようにする。それにより、状況把握から分析、アクションといった流れをスムーズに運ぶことが可能になる。

こうした組織では、担当者がいちいち報告しなくても、必要な情報が組織の壁を越えて自動的に共有される。さらにこの一連のプロセスを社内に定着させることができれば、まさしくスピード経営へのモデル転換を果たすことができるのである。


[提言2]スピード経営のための5カ条
2つ目の提言は、1つ目の提言を具体的に推進するうえでの「スピード経営のための5カ条」である。図4はその5カ条を情報共有型組織に当てはめたものだ。


図4 スピード経営のための5カ条(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

【図4 スピード経営のための5カ条(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

ただ、情報共有型組織が新たな経営モデルになるとはいえ、組織形態そのものはこれまでの機能ドリブン組織と同様の階層型から変えようがないところがある。肝心なのはそうした組織形態ではなく、組織間の情報流通の仕組みを変えることにある。スピード経営のための5カ条は、そのための具体的な施策である。

5カ条の1つ目は、「最前線を変革」することである。最前線から最細粒度のデータを取得することがまず重要となる。そのためには、最前線の業務をできるだけ単純化するよう再定義すべきである。

ここで言う最前線とは、業界や業種によってさまざまだが、例えば営業や販売、顧客サポート、製造、物流などの“現場”を指す。最細粒度とは、これまでは担当者が報告する際にレポートに盛り込まれなかったり、報告の頻度が低いために可視化されなかったり、関係者が“情報のバケツリレー”をしているうちに実際からかけ離れてしまったりしていた情報を、漏れなく取得することを意味する。

2つ目は、最前線の上部組織において、最前線から上がってきた最細粒度の「データをつなぐ」ことである。ここで重要なのは、最前線から「報告」させるのではなく、自動的にデータを吸い上げて、そのまま上層部へ流し入れるようにすることだ。逆に言うと、この段階でデータをいじったり分析したりしてはいけない。そうすると、どの階層でも同じデータを使って議論できるようになる。

3つ目は、さらにその上層部で経営層と近い組織部門が対象となるが、この段階では最前線から上がってきた最細粒度のデータをそのまま経営層に流すとともに、データ分析を行って「データを情報に転換」し、その情報から読み取った最前線の個々の状況に応じて的確なアクションを講じることが求められる。つまり、管轄する最前線をマネジメントする役割と責任を担うのが、この段階である。なお、データを情報に転換するうえでは、シンプルな指標を設定するとともに、結果指標ではなく先行指標を重視すべきである。

4つ目は、経営層において、そうして上がってきた「情報に基づく意思決定」を行うことである。場合によっては最前線から上がってきた最細粒度のデータにも注意を払う必要がある。経営層はこうして、最前線から本社トップまでエンド・ツー・エンドでの意思決定を行うように心がけながら、会社全体の課題に取り組んでいくことが求められる。

そして5カ条の5つ目となるのは、4つ目までの一連のプロセスにおいて、常に「必ず振り返る」ことである。振り返った結果に対する考察が次の前進につながる。ただし、ここでもPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルをいかに高速に回せるかが、スピード経営の決め手になることを肝に銘じておきたい。


[提言3]デジタル(SMAC+S)を社内に取り込め
提言の最後となる3つ目は、これまで述べてきたスピード経営を実現するために、「デジタル(SMAC+S)を社内に取り込め」である。図5はそのイメージを情報共有型組織に当てはめたものだ。


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【図5 デジタル(SMAC+S)を社内に取り込め(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

SMAC+Sとは、最新のITトレンドのキーワードとなっているSMAC(ソーシャル:Social、モバイル:Mobile、アナリティクス:Analytics、クラウド:Cloud)にもう1つの要素(+S)としてSensorを加えたアクセンチュアの造語であり、「スマックス」と読む。SMAC+Sはそれぞれ、図5の右側に示したような役割を果たすことができる。

スピード経営を実現には、このSMAC+Sからなるデジタル・テクノロジーを社内組織に取り込むことが最も近道である。これによって、2つ目の提言に掲げたスピード経営のための5カ条をすべてカバーすることができる。言い換えると、SMAC+Sを駆使してこそ、情報共有型組織を実現することが可能になる。

本稿の冒頭で説明したように、今回の調査結果から、日本企業はデジタル・テクノロジーの重要性を非常に強く認識していることが明らかになった。そのメンタリティをもってSMAC+Sを社内に素早く取り込めば、日本企業はグローバルで大いに戦えるスピード経営を実現できるだろう。


調査レポート「グローバルCEO調査 2014:CEOが直面する課題~デジタル時代を迎えて」の概要/主な知見/提言のまとめはこちらへ。


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