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技術革新を背景に発展するグローバリゼーション

Anil Dwivedi

テクノロジー コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
Anil Dwivedi

蒸気機関の誕生をきっかけに200年前に始まったグローバリゼーションは、技術革新と大量生産を背景として、大きな発展を遂げてきました。まず、産業革命と共に起きたグローバリゼーションの第1フェーズでは、電力の活用による大規模な革命が西洋社会にもたらされ、大幅なコスト削減とシェアードサービスが実現しました。

このフェーズでは、フォードをはじめとする大手グローバル企業が隆盛を誇りますが、第一次世界大戦によって唐突に終わりを迎えます。次のグローバリゼーションの波は、拡張政策を掲げる東西諸国によって高まりを見せたものの、やはり第二次世界大戦をきっかけに鳴りをひそめました。

1950年代に入ると、大量生産と米国主導の国際秩序を基盤として、効率性に優れたグローバルサプライチェーンが確立され、GDP(国内総生産)と世界の貿易取引が爆発的に拡大します。しかし、この成長も1970年代の石油危機によって、またもや歯止めがかかりました。続くフェーズにおいては、1990年代初頭に日本企業の急激な成長と破綻が見られたことは、記憶に新しいところです。

そして、私たちの目の前に広がる現在の世界で急速に進行するグローバリゼーションは、ネットワークを介した相互接続の技術を背景としたものです。ここでは、さまざまな産業がサービスコストの削減をこぞって追求するようになり、グローバリゼーションはこれまでにない新たな次元へと突入しています。

グローバリゼーションを加速する要因


グローバリゼーションはすべてのフェーズにおいて、以下のような共通点が見られます。

  1. イノベーションの進行と技術の飛躍的な進化により、生産性が著しく改善

  2. すべての人々にもたらされるメリット-先進諸国に好景気が訪れ、途上国においても数十億人が貧困から抜け出す

  3. グローバリゼーションがもたらす巨大な価値の前で、地域経済や保護主義が意味を失う

  4. グローバリゼーションの波は周期的に訪れ、そのサイクルは次第に短縮化

  5. 特定の国が主導する国際秩序が、標準化やより一層の市場の均質化を促す

一般的にグローバリゼーションがもたらすメリットは、あらゆる社会階層で共有されると考えられてきました。しかし調査の結果からは、最大の利益を手にしているのは、富裕層およびアジアの中流層の上位1%であることが明らかになっています。この事実は、先の米国大統領選でも大きなテーマとなり、英国がEU(欧州連合)からの脱退する要因にもなりました。*1

デジタルがもたらす新たなパラダイムシフト

21世紀に入り、グローバリゼーションはかつてないペースと様相で変化を遂げるようになりました。その背景にはデジタル化、および通信費と通信距離の劇的な改善があります。その結果、次のような非常に興味深いパラダイムシフトが起こりつつあります。

役割の逆転-デジタルを介した相互接続と所得の増加により、アジア諸国でまったく新しい消費者層が生まれています。一方で昔ながらの消費者は、依然として自らの生活基盤であるローカルでの商品やサービスの利用を期待しています。

リスクの回避-これまで「成長」は、いわば世界共通のスローガンでした。しかし現在は、国も企業も個人も「成長」に対して以前よりも慎重な姿勢を見せるようになっており、投資レベルの低下と貯蓄の増加が起きています。2008年以降、米国企業の現金資金は約4倍に拡大しており、GDPに占める投資の割合も減少を続けています。*2

市場の多様化とローカリゼーションの拡大-消費者の選好は多様化し続けています。これを背景に、企業はよりローカルな事業展開を強化するようになっています。

仲介業者の役割の低下-Eコマースなどのテクノロジーの進化に伴い、企業と消費者は直接つながるようになりました。これにより、消費者に付加価値を提供できない仲介業者はもはや消滅の一途をたどっており、市場への製品/サービス提供は、より低コスト、かつ短時間で実現されるようになっています。

シェアリングエコノミー(共有経済)-120年前に発電と電力の共有が実現したときと同じ原理が、あらゆる経済領域に働いています。技術、運輸、不動産、人材といったさまざまな資産は、シェアードサービスとして提供されるようになっています。その結果、膨大な遊休資産が活用されるようになり、著しいコスト削減が実現しています。

破壊的なイノベーションとオートメーション-創造的破壊は、今やあらゆる業種/業界で当たり前の事象となっています。また、オートメーションは新たな次元での生産性の改善を後押ししています。

世界的な広がりを見せる経済ナショナリズム

グローバリゼーションの未来は、デジタルプラットフォームの広範な普及をはじめとするテクノロジーの進化によって、著しい影響を受けると考えられます。その反面、世界秩序の分散化がグローバリゼーションを抑制し、かつてない新しい機会が生み出されるという予測もあります。

グローバリゼーションにおいては、国と国との境界が一定の制約になっているという現実があります。一方、デジタルプラットフォームによって世界中に張り巡らされた見えないネットワークはイノベーションをますます加速し、新たな市場を形成しつつあります。たとえば、インドのFMCG(日用消費財)市場でまったくの無名だったパタンジャリ・アーユルヴェーダ(Patanjali Ayurved)は146%もの収益増を達成し、現在は同市場で第3位に位置付けられるほどの業績を達成し、ますます成長を加速しています。この勢いを維持して成長を続けることができれば、世界のFMCG市場のリーダーとなることも夢ではありません。*3

パタンジャリの破壊的な勢いを後押ししているのは、今やインドだけではなく、世界的な広がりを見せる経済ナショナリズムです。たとえば、中国が推進する広域経済圏構想「OBOR(One Belt, One Road:一帯一路)」は、新たなサプライチェーンから日本とインドを除外することになるだろうと考えられています。企業はローカルなビジネス要件にこれまで以上に警戒の目を向けなければ、こうした変化によってビジネスに支障をきたす恐れがあります。グローバルでの標準化と最適化は、もはや昨日までのスローガンに過ぎません。ローカルな要件への対応なくして、明日の成功を語ることはできなくなっているのです。

世界的な広がりを見せる経済ナショナリズム

テクノロジーがビジネスの屋台骨となった今、テクノロジーの急速な浮き沈みはビジネスのさまざまな側面に大きな影響を及ぼすことになるだろうと考えられます。たとえば、ブロックチェーンのような技術によって、仲介業者を必要としない直接的な取引はますます加速します。デジタルプラットフォームはこれまでの境界を壊し、俊敏な企業だけが生かせるさまざまな機会を生み出しています。たとえば、ウーバー(Uber)はわずか6カ月間で市場を80カ国まで拡大し、シェアリングエコノミーを宅配サービスにまで拡大しました。中国のGioneeやXiaomi、Oppoといったモバイルデバイスメーカーは、Eコマースを活用することで実店舗網への投資を最小限に抑えながら、急速に成長するインドのスマートフォン市場において40%以上のシェアを獲得しました。任天堂はわずか1年で、世界150カ国以上を席巻した「Pokemon Go」からの収益で黒字転換を果たしました。こうした状況を見ても、世界のGDP成長率が3%台に低迷し、テクノロジーがさまざまな産業に破壊をもたらし、内向きになる国が増えている中で、グローバリゼーションの未来はまさにジェットコースターのように目まぐるしいものになることが予想されます。*4

「速い魚が遅い魚を食べる」次なるグローバリゼーションの波

経済学者のクラウス・シュワブが言うように、「新しい世界では、大きな魚が小さな魚を食べるのではなく、速い魚が遅い魚を食べることになる」と考えられます。*5これからの時代をリードする最良のポジションを獲得するためには、企業は常に新しい世界に目を向けながら、次のようなビジネス基盤を構築して、デジタルプラットフォームの価値を最大限に生かしていかなければなりません。

グローバルな思考と組織の多様化:企業は世界のダイナミクスと新たな機会のホットスポットを、これからも注視し続ける必要があります。そのためにはローカルチームの業務環境の強化と、本社機能の一層の多様化を同時に図らなければなりません。パナソニックは数年前に上級経営幹部のひとりをインドに異動し、インド事業の梃入れを実施しました。現在、インド事業はパナソニック・グローバルの中でも最も急速な成長を遂げています。

デジタル戦略:経営主導のデジタル戦略をバリューチェーン全体に導入し、製品のデジタルプラットフォームを構築して、顧客やエコシステムとつながらなければならないのは、IT企業にとどまらず、すべての企業の最優先の経営課題です。たとえば、テスラは自動車にソフトウェアプラットフォームを搭載することで、車の製造から販売、アフターサービスに至るライフサイクル全体の一元管理を実践しています。万一の不具合が発生した場合にも、同社はリコールではなく、ソフトウェアパッチの適用を遠隔操作で行うことで、より迅速かつ低コストな修理対応を実現しています。また、ソニーは次世代TVをAndroidプラットフォームに導入しているほか、多機能プリンターメーカー各社も製品の設置を遠隔で管理しています。

コアコンピタンスの多様な活用:新しいテクノロジーの誕生に伴って、新たな産業や製品/サービスを創出する機会が生まれている現在、企業は自社製品の新たな活用方法を体系的に評価し、あるいはコアコンピタンスを生かして、新しい市場を形成していく必要があります。たとえば、デジタル映像企業はコアコンピタンスである動画をIoT向けのセンサーとして用いることによって、分析ベースのサービスを提供したり、農業用ドローンや小売企業の倉庫管理、一般家庭向けの児童監視システムなどに動画を活用したりすることが可能です。

贅肉のない組織:ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)や機械学習、人工知能(AI)は、大幅な時間短縮を促して、タスクの最適化や不要タスクの廃止などを実現し、経営効率を飛躍的に高めます。ある大手自動車メーカーはRPAを活用することで、送り状作成業務にかかる時間を90%以上も削減しました。このように企業は積極的に組織の贅肉をそぎ落とし、競争優位性を高めていく必要があります。

イノベーションの加速:ヨーロッパのある大手家電メーカーはスタートアップとの協働を通じて、次世代歯ブラシを開発しました。クラウドに接続して、磨き残し、磨くときの圧力、唾液の化学組成といった歯磨き習慣に関する情報を収集し、歯科健康保険会社にデータを送ることができる歯ブラシです。AIや機械学習、認知分析といったテクノロジーは、イノベーションの領域に変革をもたらしつつあります。こうしたスタートアップとの連携が、イノベーションをますます加速する大きな鍵を握ることになるでしょう。

企業の社会的責任(CSR):機械が人に取って代わる脅威が日々高まり、現在の雇用のいずれ喪失することは、もはや自明の理と言えます。それだけに、企業はこれまで以上に社会全体に貢献することで、地域社会に利益を還元し、高い企業ブランドを維持するためのより一層努力を行っていく必要があります。


*1: Why the Global 1% and the Asian Middle Class Have Gained the Most from Globalization (2016.5.13)

https://hbr.org/2016/05/why-the-global-1-and-the-asian-middle-class-have-gained-the-most-from-globalization (最終閲覧日2017.07.21)

*2: An Agenda for the Future of Global Business(2017.227)

https://hbr.org/2017/02/an-agenda-for-the-future-of-global-business (最終閲覧日2017.07.21)

*3: Patanjali biggest disruptive force in FMCG space, says report (2017.1.1)

http://www.livemint.com/Companies/19OMOB8SdCTvhSWE8wxLTJ/Patanjali-biggest-disruptive-force-in-FMCG-space-says-repor.html (最終閲覧日2017.07.21)

*4: Chinese firms shipped 51% smartphones to India in March quarter: IDC report (2017.5.17)

https://www.idc.com/tracker/showproductinfo.jsp?prod_id=103 /_(最終閲覧日2017.07.21)

*5: http://www.azquotes.com/quote/1237221 (最終閲覧日2017.07.21)

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