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2015年、銀行業界を占う~「再編」「グローバル化」「デジタル化」の波

FSアーキテクト Vol.36:業績の良い今こそ「再編」「グローバル化」「デジタル化」のキーワードのもと経営改革の手を打つタイミングとして最適である。

金融サービス本部
マネジメント・ディレクター
銀行グループ統括
宮良 浩二

「再編」「グローバル化」「デジタル化」―――。3つのキーワードで経営改革の実行が求められる年になる。

2014年3月期は史上最高水準の決算に沸いた。2014年9月の中間決算も高い利益水準を確保している。

ただし、銀行の経営幹部の方と意見交換をさせていただくと、このタイミングで構造改革の手を打つことが重要との認識が大半だ。

国内成熟経済下での危機意識はもちろんのこと、資本の制約・信用コストの問題など、前向きな投資のあしかせとなる経営イシューが少ない時期だからだ。

本年も、経営・IT革新に挑む金融機関の改革実行のパートナーとして、この3つのテーマを中心にしたサービス提供に力を注ぎたいと考えている。


1.再編の波:新たなモデルでの地域金融機関の合従連衡

横浜と東日本、肥後と鹿児島―。

地銀トップ行が仕掛けた再編、県トップ行同士の統合など、地域金融機関の再編の幕が開けた。地域銀行の貸出約定金利の低下が続いている。加えて、地域密着という強みが活かしづらい人口減少時代に直面している中、これまで以上に戦略的な合従連衡が必要となろう。3つの考え方を示したい。

広域商圏での合従連衡

広域商圏での合従連衡にあたっては一段の経費削減につながる取組みが必要だ。地域に根ざした営業機能以外の共通プラットフォーム化が鍵になる。

今では8割を超える地域銀行がシステム共同化の取組みに参加している。しかしながら、システム共同化とOHR(Over Head Ratio=(経費/コア業務粗利益)×100)の低下に明確な相関は見られない。これまでの取組みには共通プラットフォーム化の「範囲」と「提供者」の2点で限界がある。

まず、「範囲」について。業態は違うが、ドイツSparkassen(貯蓄銀行グループ423銀行)は、営業などフロントの独立性を維持する一方でシステム・事務・信用格付・商品開発・外為業務などを共通化して、大手独銀比でも競争力のあるOHRを達成している。本邦の地銀システム共同化のスキームやシステムソリューション自体が規模の経済を発揮できないものになっているケースがあるのも事実だが、システムだけの共通プラットフォーム化ではコスト削減の対象が小さい。

また、共通プラットフォーム化の範囲を広げる為には「提供者」となる銀行が必要だろう。ITベンダーが共同化システムを提供するという現在の構図では、共通プラットフォーム化の範囲に限界がある。同時に、地銀ITマーケット死守が死活問題であるITベンダーから抜本的なコスト削減の提案は期待しづらい。共通プラットフォームの「提供者」が銀行となるには、自ずと地域銀行間の機能分化を意味する。実行のハードルは高いがリーダーシップを発揮する銀行の出現を期待したい。

2. 同一商圏内での合従連衡

特にリテールビジネス依存度・高齢者比率の高い地域(図表1の右上のセグメント)では、利鞘縮小による収益性の低下に加えバランスシートの縮小も避けられない。さらに一歩踏み込んだ効率化が必要だ。広域での合従連衡は、規模拡大による調達力のアップやスケールメリットによる一定の経費削減が望めるものの、打てるコスト削減施策が限定的だ。

これまでのライバル同士が手を組めるかなど、実現のハードルは極めて高いが、本部コストや店舗・自行ATMの統廃合によるチャネルコストの削減に踏み込んだ同一商圏内での再編も視野に入れる必要があろう。

図表1 再編の波

【図表1 再編の波】

3. 異業態・異業種連携による新しい広域モデルの構築

多くの地域銀行がインターネット支店を開設し、地域外の顧客からの預金獲得や貸出先拡大を狙っている。魅力的な金利提示により地域外顧客の獲得に一定の成果を挙げているものの一過性となっているケースが少なくない。

地域銀行が商圏を拡大する場合、一般的に「チャネル展開」と「ブランド認知」があしかせとなる。インターネット・モバイルの進展は「チャネル展開」の障壁を相対的に低いものとした。一方、「ブランド認知」については依然悩ましい問題だ。

米国は顧客のデジタル・リテラシー(=デジタル・バンキングの受容度)が高く、取引銀行に対するロイヤリティーが必ずしも高くない(=取引銀行を変える事に抵抗が少ない)が、地域銀行の広域展開にはブランド問題がつきまとう。米国南部を中心に店舗展開をするBBVA Compassは、昨年デジタル戦略を加速する上で、Simple社を買収した。同行は、広域展開にあたってSimple社のブランドを活用し、自身は金融商品の「製造業者」に徹するという。これは一例だが、地域銀行同士の再編を超えた異業態・異業種との協業による新たな価値訴求の取組みが今後増えてくるだろう。

2.グローバル化の波:グローバル・オペレーティングモデルの構築

ミャンマー、3メガに銀行免許―。

先般、ミャンマー政府は外国銀行9行に銀行免許を交付したが、日本は3メガ銀行とも免許を取得、アジアにおける邦銀のプレゼンスの大きさを実感できる嬉しいニュースだった。

地域銀行からメガ銀行に目を転じると、引き続きグローバル展開の加速が最大の経営アジェンダの一つとなっている。2014年9月中間期決算も、利鞘確保の厳しい国内業務を、アジアを中心としたマーケットの成長果実で補完する構図が続いている。

グローバル・オペレーティングモデルの構築にあたっては、「縦串」と「横串」の両立が求められる。つまり「多様性に富む各ローカルマーケットでのプレゼンス発揮」と「オペレーション(事務・システム)部門、プロダクト部門やリスク管理部門の高度化・効率化」の2つだ。

各行ともますます国際業務の比重が増える中、「縦串」重視の姿勢から、「横串」のインフラ整備が重要なタイミングにあるのではなかろうか。邦銀では、海外システムも東京で開発・維持、それ以外はローカルの裁量という体制も珍しくない。これは、昨年弊社が実施したグローバルプレイヤーのソーシングの実態調査結果と趣を異にするものだ。内製(インソース)か外製(アウトソース)かは各金融機関の戦略に依存しているものの、一貫してオフショアのデリバリーセンター(ITや事務の提供センター)の徹底活用を進めている(図表2)。これは、「①コスト効率向上」や「②ビジネス展開のあしかせとならないキャパシティーの安定確保」に加え、「③デリバリーセンターを集約する事での業務・システム自体の標準化(=各国で類似の事務やシステムを作らせない事)」を企図している。

図表2 グローバル化の波

【図表2 グローバル化の波】

グローバル・オペレーティングモデルの構築は弊社にとって最も実績があるテーマの一つだ。また、弊社はインド・中国・フィリピン等に大規模なデリバリーセンターを抱えている。弊社の実績・人材を梃子に、邦銀のグローバル業務やITインフラ整備の実行スピードアップのお手伝いができればと考えている。

3.デジタル化の波:“脱”銀行の発想転換-“Everyday Bank”
Digital Disruption(デジタルがもたらす破壊的な変化)―。

最後のキーワードとして、地域銀行・メガ銀行の共通テーマとなる「デジタル化」を挙げたい。アクセンチュアでは、昨年アジア・パシフィック金融テクノロジーラボ(Fin-Tech InnovationLab Asia Pacific)という取組みを香港で開催した。この取組みは、ニューヨーク・ロンドンで既に成功を収めたものでアジアで初めての開催となった。新技術をもったベンチャー企業と大手金融機関が参加し、新技術と銀行ビジネスの融合を企図するものだ。注目すべきテーマとして、「ビッグデータ・アナリティクス」「モバイル・ワイヤレス」「決済」「セキュリティ・コンプライアンス」「ソーシャルメディア・コラボレーション技術」等があった。

このような取組みを銀行の経営幹部の方にご紹介すると強い関心が寄せられる。銀行のIT の考え方について変化の潮目が来ていることを実感する。旧来、銀行のIT といえば「大量処理の自動化」「安定稼働」「コスト削減」がまずもって重要であり、成熟した技術の採用が常であった。しかし、「新技術を活用して新たなサービスやオペレーションを構築できないか」といった視座でプロジェクトや専任部署を立ち上げる例が増えている。背景には「テクノロジーの進展」を「顧客理解力」「商品提供力」「顧客リーチ力」といった銀行の基本機能の強化につなげようという企図がある。同時に、「業界構造の破壊」にいかに対応するかという問題意識の高まりがある。(図表3)

図表3 デジタル化の波

【図表3 デジタル化の波】

”Everyday Bank”――。弊社は、デジタル化時代のリテール銀行の将来ビジョンとして「あらゆるものをつなぐ銀行」という考え方を提唱している。当然のことながら「お金」にまつわるニーズはそれ単独で存在するものではなく、教育・医療・健康などの「コト」消費や消費財などの「モノ」の購買に付随する。一方で一般の顧客からすると旧来の銀行は遠い存在と感じられているケースが多い。弊社では、経済活動のあらゆるものをつなぐ銀行として、顧客の経済活動の第一接点で3つの価値を提供しようとする考え方を”Everyday Bank”と称している。(図表3)

①アドバイザーとしての銀行:
銀行は信頼できるアドバイザーとしての従来の立場を活かす。ただし、「お金」のみならず、「コト」「モノ」を含めたニーズに対して顧客の比較検討から購入・ファイナンスまでを支援する。

②価値のまとめ役としての銀行:
銀行は顧客のエコシステムやコミュニティの重要な一端を担う。他企業との特別な提携やパートナーシップにより顧客に経済的メリットをもたらす。

③アクセス支援者としての銀行:
銀行は顧客との関係を利用して、医療機関・教育産業・・・等、他のサービス業との繋がりを築く。顧客のニーズやライフスタイルに合わせた特別な商品やサービスをワンストップで提供する。

昨今の他業態からの金融ビジネスの参入も、彼らの本業を起点として、上記3 つの価値提供で業界構造の破壊を企図するものと理解できる。

例えば、楽天銀行。①小売(e コマース)から得られる顧客購買データから顧客理解を深め、顧客へのレコメンドに活用。②ポイントを積極活用した「楽天経済圏」のワンストップメリットを訴求。③小売だけでなく金融取引もダイレクトで完結できる仕組みを導入。(*1)

イオン銀行は、①実店舗から得られる顧客購買データに基づく顧客理解、②ローン顧客にイオンでの小売割引等の経済的メリットを還元、③店舗内の銀行併設、みずほ銀行等とのATM相互開放等による利便性向上、など。(*2)

このように業態を超えた競争が激化する中、銀行ビジネスを”Utility Service”と位置付けるか、”Everyday Bank”と位置付けるか――。「テクノロジーの進展」と「業界構造の破壊」が銀行の選択を迫っているといえよう。(FSアーキテクト Vol.36 / 2015年冬号)

(*1)(*2)はいずれも公知情報に基づく。


(関連リンク)