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銀証連携におけるデジタル・テクノロジーの活用

FSアーキテクト Vol.35: 銀証連携を成功に導くためには連携サービスの提供にデジタル・テクノロジーを活用することが欠かせません。その活用のポイントをご紹介します。
金融サービス本部

シニア・マネジャー
銀行グループ担当
佐藤 修康

弊社は最新のグローバルレポート「The Bank of Things」(あらゆるものをつなぐ銀行)において、近年のデジタル化の波は銀行が担うべき役割を変え、銀行が業種・業態を超えた連携を主導する新たな役割を担うと紹介している。

一方、ファイアウォール規制の一部見直しから5年が経過し、大手銀行はグループ会社の証券会社や信託銀行との連携をさらに強化していく方針を掲げている。

また、大手地方銀行とインターネット証券会社の資本提携が実現するなど、以前にも増して「銀証連携」(本稿では「銀信証連携」を同様の用語として使用)に光が当たっている。

そこで、異業種連携の古くて新しい課題である銀証連携において、リテール銀行での成功のポイントをテクノロジー活用の観点から探ってみたい。

依然として期待が高い銀証連携
「貯蓄から投資へ」のスローガンが掲げられて久しいが、リスクマネーとして個人金融資産を資本市場に提供していく流れに変える取り組みは進んでいないようだ。2013年3月末時点で家計が保有する金融資産は約1,630兆円。内訳を見ると、現金・預金は約864兆円(53%)、株式・投資信託・債券は約261兆円(16%)であり、現預金偏重の姿勢に改善は見られない。日本経済の活性化に向けた視点からも、銀証連携への期待は依然として高い。

マス富裕層を狙う
ではどうすれば良いのか。基本的な方向性は、プライベート・バンクが富裕層に提供してきたサービスをテクノロジーの力を活用して可能な限りデジタルチャネルに組み込み、マス富裕層に提供することではないかと考える。資産保有割合を考慮しても全ての銀行顧客を狙うのは非効率なため、投資余力のあるマス富裕層にターゲットを絞り、その層を「面」でとらえて投資へ向かわせるのに必要なオペレーションを構築することが重要だ。

意識すべき3つの力点
リテール銀行ビジネスを取り巻く環境の厳しさが増す中、顧客1人当り収益の最大化を目指すことが不可欠であり、そのためには3つの提供価値~顧客理解、商品・サービス、チャネル~にて差別化を図ることが必要だと弊社では考えている。(図表1)

  1. 顧客理解力(Smart Bank)
  2. 商品提供力(Lifetime Bank)
  3. 顧客リーチ力(Everyday Bank)

【図表1 リテール銀行の提供価値】

グローバルのハイパフォーマンス銀行はこの3つの力点にて他行との違いを作り出している。銀証連携におけるテクノロジー活用のポイントもこの観点でまとめることができるため、以下に紹介する。

  1. 大量送客モデルの構築(顧客理解力)
    先ず「顧客理解力」の観点から見てみたい。銀証が垣根を越えて相互にクロスセルし合うモデルの構築が理想だが、そのためには銀行から証券会社へいかに質の良い顧客を、効率的に送客するかが重要になる。 その実現方法としては、銀行が年収・資産推定分析に基づきポテンシャル顧客層を意識した上で、証券口座の開設に一律的に誘導していく「大量送客モデル」の構築が効率的であり、成功の確度が高い。 ある米国大手銀行では、マス富裕層(投資資産500万円以上)をオンラインプラットフォームであるインターネット証券会社に誘導した上で、コールセンターでの顧客対応によりターゲット顧客をスクリーニングする。そのスクリーニング後の顧客に対し、証券会社のフィナンシャル・アドバイザーが高い提案力を活かした資産運用アドバイスを行い、顧客を囲い込むモデルを構築している。 デジタル化が加速度的に進む中では、このようにマス富裕層をデジタルチャネルを活かして送客していくモデルの構築が求められる。(図表2) なお、モデルを実現する上で、アナリティクスに基づき顧客をターゲティングし、高い精度でマス富裕層を特定することが必要なのは言うまでもない。
  1. 複合的な価値訴求(商品提供力)
    続いて「商品提供力」の観点を見てみたい。銀証が連携して商品・サービスを提供することで、顧客にどのような価値を訴求できているのかを意識しておく必要がある。ある一面にて工夫を凝らしている銀行は多いが、多面的に取り組んでいる事例は少ない。

  2. 事例調査をまとめると、「①利便性の向上」、「②経済的優遇」、「③新サービス提供」を組み合せることが重要だとわかる。

    「①利便性の向上」としては、顧客が資産の一元把握とサービス連携を行えることや、取引への抵抗を取り払う工夫をすることが挙げられる。

    「②経済的優遇」は、銀証連携サービスを活用した顧客に対して金利や各種手数料を優遇するベーシックな価値だ。国内でもインターネット銀行が積極的に取り組んでいる。

    「③新サービス提供」としては、銀行単体では提供できない、銀証が連携したからこそ可能となるサービスの提供が挙げられる。

    再び米国大手銀行の事例を見てみたい。顧客を送客していく過程で様々な工夫をしている。

    先ずインターネット・バンキングの利便性向上は当然として行っている。口座管理画面において全金融取引状況を表示できるようにし、銀行・証券口座間の即時資金移動を実現している。

    また、モデルポートフォリオを数種類に整理した上で、株式等のオンライン取引手数料を一律の定額に設定しており、取引の簡素化を図っている。他にも自己判断型の顧客向けには、口座管理料の廃止や最低運用資産の引き下げ等を行っている。

    そして、高度なコールセンター・システムも導入している。コールセンター職員(証券外務員資格シリーズ7 を保有した資産アドバイス専門の職員)が顧客と操作画面を共有できるようにしている。さらに、音声認識技術により対話履歴をデータへ変換しVOC を分析する機能を実装しており、サービス向上に役立てている。

    これらの複合的な一連のサービスをシステムに実装し、提供可能にしていることがポイントだ。それにより、確実な顧客の送客に成功している。

  1. オンライン取引環境の整備(顧客リーチ力)

最後に「顧客リーチ力」として、チャネルの観点を見てみたい。みずほ銀行の「プラネットブース」に代表されるように、銀行に証券が乗り入れた店舗の出店が進んでいる。資産運用に関して職員に直接相談できることを求める顧客は多く、メガバンクの強固な支店基盤を活かした有効な施策である。

一方、今後は顧客のデジタルライフの進展に合わせ、来店率の低下を前提としたチャネル設計が重要だ。有効な施策は複数あるが、代表的なものを紹介する。

    • オンラインでの投資情報提供
      資産運用にかかる相談サービスをオンライン化し、顧客がいつでも・どこでも、質の高い情報にアクセスできる仕組みの構築が先ず必要だ。

    ある欧州大手銀行では顧客に選任RMをつけた、オンラインでの仮想店舗サービスを提供している。RMには電話/メールではもちろんのこと、Webシステム上でも相談ができる。モバイルにも対応しており、平日夜/週末にも相談が可能なため、オンラインで店舗と変わらないサービスレベルを実現している。

    また、別の欧州大手銀行ではRMを顧客自らが選択することを可能にした。RMは属性情報に加えて専門知識に関する情報を公開しており、顧客が自身のニーズや投資特性に合ったRMを選ぶことができる。

    • オンラインでの音声技術活用
      さらには、音声技術の進化に着目し、顧客にストレスフリーな取引環境を提供することも有効だ。

    以前から見られる音声認識技術を用いたコールセンター事務や営業支援事務等を効率化する目的ではなく、顧客へのサービス提供に活用することがポイントだ。オンライン取引に音声認識による入力機能を組み合せることで、取引実行までのステップを減らすことができる。画面遷移数が劇的に減るため、顧客のストレスを取り払う。

    資産運用に当たり、顧客自身がインターネットを通じて多くの情報を入手し、取引を実行できる時代になった。職員を介したサービス提供はより質の高いものでなければ意義はない。顧客が望む時間と場所に、質の高い情報とストレスの無い取引環境を提供できることが求められている。

    特にマス富裕層に対しては、デジタルチャネルを当たり前に使いこなすことを前提にしたサービスを提供できるかが勝敗の鍵となるだろう。

■終わりに 本稿では銀証連携を成功に導くためのポイントとして、一連の銀証連携サービスをデジタル・テクノロジーを活用して設計し、顧客に提供していくことが重要であることを紹

銀証連携サービスの追求は、地域銀行等が新たな収益源を獲得するに当り、1つの重要なアプローチになると予測する。例えば、自地域ブランドのイメージから離れるためにインターネット銀行のサブブランドを立ち上げ、別の地域に強い証券会社やインターネット証券会社と手を組み、決済サービスを提供するといったケースだ。

毎号の繰り返しになるが、弊社は『すべてのビジネスがデジタルに』を合言葉に、デジタル・テクノロジーがビジネスの在り方や業界構造を大きく変えていくと考えている。本稿で述べたようなサービスを実現するためには、商品管理システムや営業支援システム、そしてインターネット・バンキング等を一貫したビジョンに基づき包括的に高度化することが必要になる。貴行にてそのような取り組みを検討される際には弊社にお声掛けいただければ幸いである。(FSアーキテクト Vol.35 / 2014年秋号)


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