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グローバル事例にみる次世代型銀行店舗~店舗チャンネルの更なる進化を目指して

FSアーキテクト Vol.33:グローバル主要銀行の調査結果に基づき、次世代のあるべき銀行店舗について考察します。

金融サービス本部
シニア・マネジャー
銀行グループ担当
澤村 弘泰

澤村 弘泰 

近年のスマートフォン等の普及に伴い、ダイレクトチャネルでの銀行取引が増加している。従来主力であった店舗は、依然として取引の大半を占める主要なチャネルであるが、銀行における各チャネル間のバランスは確実に変化している。 このようなチャネル構造の変化に対応して、海外の銀行ではチャネル全体を最適化するため、店舗の位置付けを大胆に見直す事例が見られる。 一方で、国内の銀行においては、店舗でフルサービスを提供する戦略から抜け出せていないのではないか。 本稿では、弊社のグローバルリサーチの結果をもとに、次世代型の銀行店舗について紹介する。

■店舗チャネル改革の必要性
欧州の銀行に対して実施されたアンケートによれば、2016年に店舗チャネル経由で商品を購入する顧客は約半数、商品によっては7割以上を占めると予測されている。このことから、店舗チャネルは依然として重要なチャネルであり続けることが分かる。

一方で、ダイレクトチャネル経由での取引の割合は商品によっては50%に迫ることが予測されており、主要チャネルといえるまでに成長している。その結果、チャネル構成が大幅に変わり、店舗チャネルに求められる機能も従来とは大きく変わってくると考えられる。(図表1)

図表1 取引チャネルに関するアンケート結果(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

【図表1 取引チャネルに関するアンケート結果(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】

例えば、残高照会や振込はダイレクトチャネルで好きな時間に実施し、ローンや保険等について相談したい時だけ店舗に来店するといった顧客が増えることを想定して、店舗の事務処理機能を軽量化し、セールス機能強化にリソースを振り向けるといった対応だ。

海外の銀行では、チャネル全体を最適化する発想から、店舗の位置付けを大胆に見直す事例が見られる。店舗チャネル改革のヒントとするため、海外の先進事例を紹介する。

■次世代型銀行店舗に向けた取組み
弊社が、グローバルの主要銀行を調査した結果によると、次世代型銀行店舗に向けた取組みには大きく2つの方向性がある。

1つは(A)店舗で提供する機能にメリハリをつける取組み、もう1つは(B)提供機能を高度化する取組みだ。

(A)店舗で提供する機能にメリハリをつける取組み

メリハリをつける観点として、商品・サービス、営業時間、接客等が考えられる。

  • 商品・サービスによるメリハリ
    一部の店舗における提供商品・サービスを限定することで、コスト削減を目指す取組みが考えられる。ある欧州の銀行では、サービスレベルの低下を最小限に抑えつつ、フルサービスを提供する店舗を全体の87%から26%に削減することに成功している。

  • 営業時間によるメリハリ
    地域や顧客のニーズに着目して、店舗独自の営業時間やサービスを提供し、顧客満足度や収益向上を目指す取組みが考えられる。国内でも住宅ローンの相談を土日に実施する等の例が見られるが、海外ではさらにバリエーションが豊富で、平日の営業時間を延長したり、無休店舗を設置する銀行も見られる。一方で、アウトレットモール併設店では土日のみ営業する等、営業時間を短縮する方策も検討の余地がある。

  • 接客によるメリハリ
    顧客ニーズに着目するケースとしては、顧客に合った接客を行うことで、顧客満足度の向上を目指す取組みも考えられる。専門知識が豊富で高度なアドバイスができるスタッフを配置することで、富裕層顧客のニーズに応えることが可能だ。

(B)提供機能を高度化する取組み

店舗チャネルで提供する機能にメリハリをつけたら、次は提供機能を高度化させることが重要だ。

  • ITによるセールス機能の高度化
    セールス機能を高度化するためには、店舗に対して、販売に直結する顧客のイベント情報やターゲティング情報を提供することで営業力を強化し、収益向上を目指す取組みが考えられる。例えば、店舗以外のチャネルも含めた全チャネルから取得した顧客情報を統合化・分析し、店舗に来店した顧客へのおすすめ情報を提供する。営業担当者はこの情報を元に顧客対応を行うことで、営業の際の的確なアドバイスが可能になる。

    今後、ターゲティング情報をRFID機能や顔認識機能と組み合わせることで、来店時に顧客を認識し、店舗入り口に設置したデジタル・サイネージ・ボードにその顧客へのおすすめ商品を表示できる時代が到来するだろう。(図表2)

図表2 店舗での商品おすすめの流れ(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

    【図表2 店舗での商品おすすめの流れ(画像をクリックすると拡大画像が開きます)】
  • 事務処理機能のセルフサービス化
    事務処理機能のセルフサービス化は、商品・サービス提供時に、顧客自身の端末操作で手続きを進められるようにすることで、ローコストなオペレーションを実現する取組みである。例えば、入出金を伴わない取引であれば、ユーザフレンドリーなインターフェースのタブレット端末を店舗に並べて、顧客に操作を促す。もちろん、操作が分らない等、顧客が困っている場合には、店舗スタッフが応対することで、顧客へのサービスレベルは担保する。

■グローバル先進事例:取引シーンを想定した店舗

海外の先進銀行では、前述の2つの方向性を踏まえ、これまでとは異なる店舗運営を実現している。

アイルランドのAIB銀行では、家族連れの顧客が住宅ローンの相談を落ち着いて受けられるよう、空港ラウンジのように顧客がくつろげるスペースやお子様向けのスペースを用意している。

一方で、店舗職員の説明が無くても対応可能な取引を希望する顧客に対しては、ITを活用したタッチセンサー型のテーブルやタブレットを配置し、セルフサービスでのオペレーションに顧客を誘導する試みが行われており、顧客の取引シーンに応じてメリハリをつけた店舗運営を実現している。(図表3)

図表3 AIB Lab の店舗概略(画像をクリックすると拡大画像が開きます)

■グローバル先進事例:取引シーンを想定した店舗

海外の先進銀行では、前述の2つの方向性を踏まえ、これまでとは異なる店舗運営を実現している。

アイルランドのAIB銀行では、家族連れの顧客が住宅ローンの相談を落ち着いて受けられるよう、空港ラウンジのように顧客がくつろげるスペースやお子様向けのスペースを用意している。

一方で、店舗職員の説明が無くても対応可能な取引を希望する顧客に対しては、ITを活用したタッチセンサー型のテーブルやタブレットを配置し、セルフサービスでのオペレーションに顧客を誘導する試みが行われており、顧客の取引シーンに応じてメリハリをつけた店舗運営を実現している。(図表3)

■次世代型店舗プランニングにおいて検討すべき観点

これまでに紹介してきたような次世代型店舗への改革を成功させるためには、4つの観点でプランニングすることが重要だ。

  • 観点(1) 顧客ニーズに合致した店舗――ポートフォリオと店舗形態の検討
    どのような店舗をつくるか考える際には、銀行全体における店舗のポートフォリオを検討することが必要である。顧客が各店舗にどのような商品・サービスを求めているかについて、これまでの取引履歴等の定量情報と、問合せ内容等の定性情報を組合せて分析し、フルサービス店舗、軽量店舗等をどのような組合せで配置すべきか検討しなければならない。

  • 観点(2) 顧客の動線を意識した店舗――レイアウトの確立
    店舗形態が固まったら、顧客の店舗内動線を想定して、レイアウト設計を検討する。例えば海外では、相談カウンターを店舗の奥に設置し、相談しに来店する顧客が店舗内を歩く動線を作り出している銀行もある。相談カウンターの手前には、相談内容に関連する商品・サービスの紹介映像を表示するタブレット端末を配置し、相談の帰りに手に取ってもらうことで、クロスセルにつながるような店舗レイアウトを志向している。

  • 観点(3) 接客に優れた人材の確保
    店舗において顧客満足を勝ち取るためには、店舗スタッフのコミュニケーションスキルも重要である。応対するスタッフの接客スキルが低ければ、顧客は店舗に足を運ばなくなる。海外の事例では、接客のプロフェッショナルであるホテルスタッフを雇用するケースもある。商品説明はシステム利用により補完することで、接客スキルに特化したスタッフ雇用も可能となる。

  • 観点(4) ローコストオペレーションを実現するテクノロジーの導入
    預金や振込等はATM導入により、セルフサービス化が進んでいるが、さらに顧客の利便性を向上できないか検討すべきである。例えば、音声認識等を活用して、画面操作に不慣れなお年寄りの顧客でも自身でオペレーションができることを目指すなどの方策が考えられる。

    また、新たにセルフサービス化できるメニューを増やす試みも必要だ。口座開設など、窓口でしか提供が難しいと思われているようなサービスも、通帳等の受渡しや本人確認をシステム化できれば、セルフサービス化をすることも検討すべきだ。

■終わりに

本稿では、次世代型店舗について紹介した。弊社は金融機関専門のデザイン会社であるアレン・インターナショナル社と共同で、今回ご紹介した様な次世代店舗のプランニング、デザイン、実店舗の構築と幅広い店舗改革を海外の金融機関で支援した実績がある。貴行にてこのような取組みを検討される際には弊社にお声がけいただければ幸いである。

(FSアーキテクト Vol.33 / 2014年春号)

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