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AI導入成功の方程式

AIはテクノロジーの面にのみフォーカスされがちですが、「AI導入成功の方程式」では、導入を成功させるために必要なこと・注意すべきことは何かという観点で、アクセンチュアの知見をもとに具体例を示しながら紹介させていただきます。

わかるようでわからない、日本企業が焦燥感を募らせる “AI”

富澤 景


製造・流通本部
シニア・マネジャー
富澤 景

本稿をご覧になっている皆様の中にも、「弊社もAIを導入せねば世の流れに取り残されるのでは?」と焦燥感を募らせたり、「弊社も早急にAIを導入すべし」と役員から迫られたりされている方が多いのではないでしょうか。
しかし、「AIを導入する」という時のAIとはいったい何を指すのでしょうか?
AIという言葉は今では当たり前のように使われていますが、“システム”と同じくらい広範な意味を持つ用語です。
「AIを導入せねば」と考えている場合は、まずAIで何ができるのか?をきちんと理解した上で、AIでどのようなビジネスの成果を出そうとしているのか?を明確にする必要があります。
AIを一言で表すと、「学習(LEARNING)を繰り返しながら認識(SENSE)→理解(COMPREHEND)→行動(ACT)を行う処理プロセス」となります。

AIは複数の要素技術から成り立ち、その構成要素に依り、活用先に得意不得意(特徴)がでます。
例えば、同じGoogleのAIでも、α碁は囲碁は打てますが、誰が打っているかはわかりません。一方、Google Photoは自動で顔認識して写真にタグ付けし、検索することは出来ますが、囲碁は打てません。
上記は極端な例ですが、ビジネスでの活用シーンを見極め、最適なソリューションを識別する必要があります。
また、企業として投資を行う以上、成果を明確にしておくことは必須条件です。
AI導入については、従来型のシステム導入のように最初にROIを試算することは困難な面もありますが、仮説を立て検証するアプローチは必要です。
決してAI導入自体が目的ではなく、AIを活用してビジネス上の成果を出すことが目標であることを忘れてはいけません。
よく、トップダウンでAIを導入せよという指令の元、プロジェクトを開始してみたものの、成果が定義されておらず効果が不明確であったり、PoCを実施した結果ROIが見合わなかったりして頓挫してしまうというケースも最近では見受けられます。
AIを活用してビジネス上の成果を創出するためには、組織横断的に、顧客体験・従業員体験を設計し、活用シーンに応じた最適なAIを導入していくことが求められます。
AI導入に際しては、ユースケースの識別・選定を通して、ビジネスケースを設計し、優先順位をつけてロードマップを作製したうえで検証を行っていくサイクルを回していくことでビジネス効果をクイックに得ることが可能です。

なぜ今「AI」なのか?

ところで、なぜ昨今ここまでAIがホットトピックとなっているのでしょうか?

深層学習(Deep Learning)の登場と、それを支えるストレージ価格の低減、データ容量の増加、クラウドによる処理能力の増強も大きな要因ですが、昨今の働き方改革・Work Style Innovationの影響も小さくはありません。

日本では、少子高齢化の影響で2030年頃には1100万人の労働力が不足すると言われています。女性、外国人、若者などの就労環境改善の取り組みはありますが、ロボティクス、AIを必然的に取り入れなければ、日本の労働力不足は補えません。
従来予測の2035年の各国のGVA成長率では、日本は世界の先進国と比べて最低レベルになるとされています。ただし、AIを活用した場合には、2035年のGVA成長率が、従来予測に比べて3倍以上になる可能性があり、日本におけるAIの活用は非常に重要なのです。


なぜ今「AI」なのか?
なぜ今「AI」なのか?

 

出典:アクセンチュアおよびフロンティア・エコノミクス

ベースラインシナリオ
AIシナリオ
 *1

一方で、人間とAIが如何に共存し、何をAIが行い、何を人間がやるかをしっかりと考える必要もあります。
アクセンチュアの調査では、お客様サポートをヴァーチャルアシスタントが担い、AIでは対応できない時に人間に移行するというように、人間とAIが協調して対応した場合に、最も高い顧客満足度を得られることが明らかになっており、AIと人間の対応を如何に上手く組み合わせるかがポイントになります。

レイ・カーツワイルの提唱するシンギュラリティ(技術的特異点)からもわかる通り、AI技術は日々進歩しており、人間よりAIが賢くなる日はそう遠からずやってきます。 そのため、イノベーションの時間軸を意識しながら、ヒトとAIの最適配置を検討することが必要です。

ヒトがやっていたことを機械で置き換えられれば、コストの削減になり、ヒューマンエラーがなくなれば品質が上がります。ヒトが無理をしていた部分が機械に置き換わり、ヒトはよりモチベーションの上がる作業をできるようになるのです。
AIはスピードと知識量、大きなデータの解析を得意としており、価値判断や社会的要請の判断など絶対的な正解がないものや、人への共感、コミュニケーションでの柔軟な対応は人間が対応するというのが、AIを活用する際の現時点での最適配置となります。*2


*3

 


例えば、欧州のとある省庁のコールセンターでは、呼量の増加に伴う応答率の低下が課題となっていました。AccentureはAIを活用し、リアルタイムでデジタルアシスタントが顧客とWebチャット・電話を通して回答を行うソリューションを導入、結果として総問い合わせ数の40%にあたる月間5000件の問い合わせをAIで自動回答し、総工数の45%を削減、回答時間を30%短縮することに成功しました。
AIが回答可能な簡易な質問については、AIに回答を任せることで、ヒトはより高度な業務や丁寧な対応の必要な応対業務に時間を割けるようになり、それによって60%を超える顧客満足度の向上を実現しています。

また、とあるヘルプデスクでは、1日に一人当たり500件以上のメールと220種類以上のカテゴリーの問い合わせチケットが14種類の言語で送信され、工数的にもスキル的にも人手では対応しきれない状況となっていました。Accentureでは、自然言語解析と機械学習を組み合わせ、55の言語に対応したプロセス自動化ソリューションを導入することで、工数ベースで20%の削減し、メール返信時間を50%削減することに成功しました。
今後、2020年の東京オリンピック開催に向けて、多言語対応可能なリソースの確保は重要なトピックですが、このようなケースもすべてヒトで対応しようとせずに、AIを活用し、足りないスキルを補完することが一つの解決策となります。

ただし、AIを活用していることをきちんと顧客に開示し、透明性を保つことを忘れてはいけません。
もっとも人らしいAIとして2016年にローブナー賞を受賞したMitsukuチャットボット*4は、最長25分まで人間らしい会話を行うことができ、90%の精度という評価を得ています。AIと会話をしているということをきちんと顧客が理解していれば、サービスの品質に感動し、驚きを覚えるでしょうが、AIであると知らずに会話をしている場合、顧客がだまされたと思ってしまうリスクがあります。
今後、AI技術の進歩によって、精度は右肩上がりに向上するでしょう。イノベーションの時間軸に合わせ、AIを活用する上での新たなリスクに対応していくことも検討すべき重要なトピックです。*5

AI導入成功の方程式は「AI Business Value = Human X Process X Data」

この方程式を見て、違和感を覚えられた方もいるかもしれません。
AIにおいて学習(LEARNING)が重要であり、そのために大量のデータが必要になることはみなさんご存知の通りです。
しかし、HumanとProcessが重要であるとはどういうことでしょうか?
AIの精度は向上していますが、まだまだAI=ヒトの代わりとはなりません。AIはあくまでもヒトがより高度な判断を行うためのツールとして活用されるべきです。「ヒト」がツールを有効活用するためには、「プロセス」を定義する必要があります。
多くの日本企業はAIの活用に向けて焦燥感に駆られますが、実証実験的な導入がなされる例はあっても、本格的な導入がスムーズに進んでいるとは言い難い状況です。この「ヒト」と「プロセス」に目が向かない、手が回らないことが、日本企業のAI活用を阻む大きな要因であると考えています。

例えば、自然言語解析を行うヴァーチャルアシスタントをコールセンターの呼量削減に向けて導入したとします。
多様な会話をすべてルールベースで定義するのは不可能なので、コグニティブ技術を活用することになります。
コグニティブ技術では、事前に定義したルールではなく、AIが話された文法を理解し、もっともマッチするであろう回答を返します。
そのため、場合によってはなぜそのような回答をしたかわからないというようなケースもでてきます。
このような失敗ケースをやり玉にあげ、なぜ失敗したかを説明できないのであれば利用しないというような組織風土だと、AI導入・活用はうまくいきません。
多少の失敗はつきものだが、それを上回る効果が見込まれるのであれば、クイックに導入するという組織風土・意思決定が必要となってきます。

また、組織がサイロ化した日本企業にみられる傾向ですが、特定の部署・組織だけで限定的にAI導入を行う場合も、実証実験の域を出ないケースが多くなります。
小さく始めることは重要ですが、最終的に顧客にどのような価値を提供するのかというビジョンがきちんと無い状態での実験ではその先につながりません。
企業として、AIを導入する以上、先に述べた通り成果を出すことが必要であり、それは顧客がメリットを感じることに直結します。
顧客は、企業側の組織を意識してサービスを受けているわけではありません。一連の顧客体験の中の一部としてサービスを享受しています。
そのため、顧客体験(Customer Experience)・従業員体験(Employee Experience)を含めた、Experience設計をしっかりと行い、その中でAI・ヒトがどのような役割分担・プロセスで顧客に価値を提供するのかを定義することが重要となります。

何を所有し、何を利用すべきか?AI技術の進歩を考慮し、今注意すべきこと

それでは、ヒト・プロセス・データに気を配れば、永続的にAIを活用していけるのでしょうか?答えはノーです。
AI技術は日進月歩の勢いで進化を続けており、現時点のトップランナーが1年後もトップランナーである確証はありません。
つまり、常にすぐれたAI技術を活用するためには、従来の“固定的に所有する”という考え方から、“柔軟にサービスとして利用する”という考え方に変更しなければなりませんし、“柔軟にサービスとして利用する”ためには、それを可能とするアーキテクチャを構築し、AI製品が変わってもデータを再利用可能な形で保持しておくことが重要となってきます。
今後価値を生むのは、ソフトウェアを所有することではなく、データを所有し、それを最適なソフトウェアに連携可能な仕組みを整備しておくこととなります。

ビジネスの成果を明確にしたうえで、日々進化し移りゆく中から最適なソリューションを選択し、価値を生むデータを再利用可能な形でセキュアに保存し、それらを活かすプロセスを定義、それらを受け入れるヒト・組織に変革する。
これがAI導入成功の方程式ということができるでしょう。


*1 アクセンチュア講演 クラウドによるイノベーションの実現 2017年2月20日
*2 アクセンチュア調査結果 2016年11月17日発表
*3 Blending human and robot interactions. That's smart digital customer service.
*4 Mitsuku Chatbot
*5 FJORD TREND 2017

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TEL:03-3588-4453 (製造・流通本部直通)