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エネルギー業界の変革期デジタル時代のパートナーとしてイノベーションに挑むー前編


宮脇良二

素材・エネルギー本部
公益事業部門統括
統括マネジング・ディレクター
宮脇良二


宮脇良二

シニア・アドバイザー
環境・エネルギー問題
竹内純子

エネルギー産業の最前線で、何が起きているのか

宮脇

電力の需給構造は集中型電源から分散型電源の流れに変わろうとしています。当然、「集中型電源が必要ない」という話ではないものの、分散型電源のウェイトが大きくなってきているような気がします。竹内さんはどのように見られていますか?

竹内

分散型電源の技術の進歩もありますが、やはり背景には温暖化対策への要請の高まりがあります。パリ協定からのアメリカの離脱が報道されていますが、世の中の流れとしては、やはり脱炭素化に対する強い要請があるということです。政府間交渉による国際的な枠組みだけではなく、投資家や金融市場がこれまでの化石燃料への投資を引き揚げて、低炭素技術に投資を促していこう、という動きも非常に強まっています。加えて、分散型電源の技術の進歩とコストダウンが相まって、今後も勢いは止まらないと思います。

宮脇さんがおっしゃった通り、それで集中型の電源がいらない、ということにはなりません。そのため、自由化された市場の中で分散型電源を大量に受け入れながら、どうやって必要な量の集中型電源を維持するか、という制度設計の議論を煮詰めていく必要がありますね。

宮脇

しかし分散型電源はとても扱いにくいものです。特に風力と太陽光は扱いが難しく、日本国内においてFIT(固定価格買取制度)が価格を下げてくる方向にあります。このあたりはどう見ていらっしゃいますか?




竹内

海外では再生可能エネルギーのコストが相当下がっています。10月にサウジアラビアの政府が募集した案件では、1kWh当たりの単価を2セント以下で落札しています。
石炭火力の燃料代すら賄えない。再生可能エネルギーの競争力があがり、市場で選択される電源になりつつあることは確かです。

ただし、日本の再エネは高い。諸外国の倍以上のコストがかかっており、国民負担の累計が、最大では94兆円にもなるという試算もありますし、実際、賦課金は既に2兆円を超えています。普及政策を費用対効果の良いものにしなければ、導入できる量には限界が来てしまう。

政府は今年の4月から改正FIT法を施行していますが国民負担の抑制という観点では、まだまだ不十分です。もっと市場のメカニズムを取り入れる方向で議論が進むのでしょう。

宮脇

コストダウンというのは、発電コストのことですよね。これは、技術革新によって、なされるべきものなのでしょうか。それとも、制度設計によってなされるべきものなのでしょうか。




竹内

いろいろ相まっている部分があると考えています。もちろん、自然条件の制約はあると思うんですね。サウジアラビアやインドのように日照がものすごく良ければ、発電量が多くなるので、当然1kWh当たりが安くなります。

事業者のコストダウン努力を引き出す普及政策にしなければなりませんし、アセスメントなどの規制緩和なども必要でしょう。

宮脇

竹内さんが一番注目されている再生可能エネルギーは何ですか?

竹内

これからだと風力になるでしょうね。ただし、日本で、ということになると、日本の風は風力に適しているとは思えなくて。非常に強い爆弾低気圧や台風が来て、夏にはベタ凪になるという安定しない風況の場所なので、そこを差し引いて考える必要があると思います。

宮脇

バイオマスについては、どういう風に考えられていますか?

竹内

バイオマスは、燃料がバイオマスというだけで火力発電と同様人間がコントロールできるので良い電源ではありますが、それほどポテンシャルが大きいとは思えません。買取価格の条件が良かったので現在、椰子がらなどの輸入によるバイオマス発電所の申請が駆け込みで数多く出されていますが、自給エネルギーなのかという疑問も呈されていて、批判もあります。

バイオマスや地熱はベースロード電源にはなり得る再エネではありますが、それほど大きく伸びるかと言えば疑問です。




宮脇

では、蓄電池についてはどういう見方をされていますか?

竹内

そうですね。分散型電源をうまく使いこなすには、送配電網を整備する、運用技術としてのデジタルを充実させる、蓄電池や水素などの技術を導入して平準化する、この3つのやり方があると思います。

送電網が充実していれば大きなプールで不安定な電気を吸収することができますが、想像以上に時間とお金がかかります。運用技術というのは、予測技術を含むもの。ただし天気予報の枠を出ないところはありますね。

もし蓄電池というものが、ここ数年の再生可能エネルギーのように指数関数的な価格下落を起こすとすれば、これは非常に良い変動吸収源になるだろうと。3人の方と共著で書いた『2050年のエネルギー産業―Utility3.0へのゲームチェンジ』で描いた一つの姿です。

先日、東京モーターショーに行き、どのくらい世の中でEV(電気自動車)のムーブメントが来ているのかを見てきました。私はエネルギーの側から必要なものとしてEVを見て本を書いたのですが、では自動車業界の側から見ると、どうなのか。そんなことを考えながら東京モーターショーを見てきました。

充電に関するユーザビリティなどまだまだ課題も多いですし、そもそも、テスラモーターズの新しいモデルに積まれているようなバッテリーについては、製造するときに排出するCO2がガソリン車が10万キロ走った時とほぼ同じというレポートもあります。

EV化が言われているほど一気に来るかは全く不透明だと思いますが、EVが再エネの不安定性の吸収の担い手になってくれれば、今とは違うエネルギーの世界を描けると思っています。

テクノロジーをベースに広い知見を持つアクセンチュア

宮脇

私の見方としては、竹内さんと同様で分散型電源の流れはもう止められない。シリコンバレーを中心としたテクノロジー系の企業が、分散型電源にものすごく注目しています。その理由の1つは、まず理想が高く、自然のエネルギーを使いたいという。スティーブ・ジョブズではありませんが、地球規模でものを考える人たちが真剣に取り組んでいる、という話があります。また、そのようにゲーム・チェンジすることで、自分たちの土俵に持っていきやすいという理由の両方があるのだろうなと思っています

Facebook、Amazon、Google、Appleたちが世界のトレンドを作っていて、彼ら自身が再生可能エネルギーに対してかなり投資をしている。かつ、テスラモーターズのイーロン・マスクのような世界のトレンドを作っているイノベーターが着目している。そのため、加速度的に分散型電源の分野は進むだろうというのが、一つの見方です。

かつ、量が出ればコストは削減されるので、指数関数的に蓄電池のコストは下がるということは間違いないですし、ファッションもしくはトレンドとしても蓄電池みたいな世界というのは広がるんじゃないかな、というのが私の考えです。

蓄電池が普及すればするほど、再生可能エネルギー、特に太陽光、風力は導入しやすくなるはずなので、再生可能エネルギーのシェアは再び大きく拡大してくるんじゃないかと考えています。

加えてAIが一般化されてきた時、「ソサエティ5.0」や「ユーティリティ3.0」、「インダストリー4.0」などの根底には、最適化があると思います。シェアリングエコノミーはどこの経済にも出てくるのですが、ものの凸凹を最適化がAIによってなされる。資源の最小化ですよね。リソースを最小で、かつ、いろいろな人をロングテールで結びつけられる。今までは、大きいものと大きいものでしかバランスがとれなかったものが、細かいレベル、ピアtoピアのレベルで最適化できるというのが、デジタルが進んだ世界の一つの物の見方な気がしています。そうした時に、再生可能エネルギー、蓄電池により最適化がより図られる。今までは難しかったものが、そういうレベルで最適化されてくるんじゃないか、という見方です。

加えて、ブロックチェーンによりピアtoピアのレベルの取引ができるようになるということは、大きな意味があります。ピアtoピアの取引のコストが低くなることにより、経済メカニズムを活用したキメの細かい最適化が図られるようになるんじゃないかと想像しています。

そのような世界を作り上げるためには、エネルギーの分野と、テクノロジーの分野の両方を理解しているプレーヤーの存在が非常に大事になってきます。そういう意味で、アクセンチュアの役割は大きいのではないでしょうか。

アクセンチュアには、各産業分野に対する深い知見を持ったメンバーが大勢います。また、テクノロジーを強みとした会社なので、テクノロジーをベースにものを考えることができる。各インダストリーもわかっている。アクセンチュアはこれからのエネルギーの世界に適したプレーヤーだろうと思っています。
ですから、やれる事はたくさんあるはずです。例えば、アクセンチュアのオランダのチームでは、分散型電源が入った後の送配電の最適化に相当力を入れてます。テクノロジーを活用して分散型電源をしっかり普及させる。その時に、安定させる制御技術がデジタルによって実現されるような形になってくると考えています。

あとはオープンイノベーション的に、いろいろな技術や産業を繋げるコンソーシアムをつくるようなご支援も視野に入れています。




竹内

宮脇さんがおっしゃったような方向に行くだろうと思います。自動車がEV化することで部品点数が減るのは有名な話ですが、EVはデジタル化、AI化と親和性が高い。東京モーターショーでも、自動運転化することによって車両自体もコストダウンできていく、と言っている方もいらっしゃいました。

そういうことを考えていくと、市場の選択の必然として、コネクテッドカーなどデジタル化は進むでしょう。この動きと同時進行で再生可能エネルギーの大量導入が進めば、ドイツでいう「セクターカップリング」、私たちの2050年の本で書いた「供給側の低炭素化と需要側の電化の掛け算」が進むでしょう。




宮脇

著書では電力セクターと、モビリティセクターを採り上げておられましたが、モビリティ以外の業界と電力の融合はどうでしょうか。

 




竹内

仮に電力会社がどこかと組むとしたら、いろいろな選択がありえますよね。供給側のデジタル化も急速に進むでしょうが、特にこれからデジタル技術を活用して、「電気のユーザビリティ」をあげていくことも期待できると思います。もし非接触充電ができれば、私もこんなコンセントを持ち歩いていないのに、とか、常に電源を気にしながら仕事しなくて済むのに、と切実な問題(笑)。例えばフィンテックで、契約している人間のパソコンはどこでも充電が可能になれば飲みたくもないコーヒーを買ってコーヒーショップで充電しなくても済む、というユーザビリティもあっていいはず。

課金のシステムなども今までおざなりにされてきたところがあるので、他業種、それこそフィンテックとかデジタル技術によって変えていく、ということはまだまだ余地があるし、彼らもやりたいところかな、と思いますね。




宮脇

“電気のユーザビリティ”という考え方は面白いですね。アクセンチュアも、とても得意な分野なので、貢献できるところがあるような気がします。




竹内


そう思います。やれることはもっとたくさんあると思いますね。