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変革期を迎えた送配電事業者が
取り組むべきアセットマネジメント

厳しさを増す経営環境下で、送配電事業者にとって重要性が高まる
アセットマネジメントについて考察します。

送配電事業者が直面する事業環境の変化

渡邉 嘉英

アクセンチュア株式会社
素材・エネルギー本部 マネジング・
ディレクター
渡邉 嘉英

世界の送配電業界は3つの大きな変化にさらされています。1つ目は技術の変化です。太陽光発電の普及が価格の下落につながり、さらに普及を促進するという流れは、既に後戻りできない状況であることは周知の事実です。

2つ目は需要の変化です。アクセンチュアが世界18カ国・約1万人を対象に行った調査 (新しいエネルギー消費者に関する調査プログラム )によると、エネルギーの自給自足への投資意志を持つ消費者は57%と半数を超えます。さらに、自ら生産した電力を取引市場を介して販売することに興味を持つ消費者は61%に及びます。電力のコンシューマー(消費者)は、いまや生産者の側面も持つ「プロシューマー」(生産消費者)に変わりつつあるのです。

3つ目はビジネスモデルの変化です。既に経営層の意識が変わりつつあることが、アクセンチュアの調査(デジタルグリッド・プログラム2017)によって明らかになっています。

分散型電源の急増が2020年までに配電系統の信頼性と品質に大きな影響を及ぼすと考える経営層は59%に上っています。こうした流れを止められない以上、率先して分散型エネルギー資源(DER)の統合や関連サービスの推進役となろうと考える経営層も同程度存在し、消費者に対する新しいソリューションの提供や価値創造を自社で実現する動きが活発になることが予測されます。

国や地域によって差はありますが、エネルギーに関する消費者の選択肢は拡大し、既に行動を起こし始めています。加速度的な分散型電源の増加に正面から向き合い、持続可能なビジネスモデルを構築することが送配電業界共通の最優先課題といっても過言ではありません。

日本では、こうした問題が送配電ビジネスに与える影響は依然として限定的ではありますが、系統の信頼性や品質を揺るがすリスクは確実に高まっています。将来、許容範囲を超えたリスクに対応するための新規投資を判断する際には、問題はより一層複雑なものへと変貌しているだろうと思われます。

送配電事業者は今後、難しい経営の舵取りを迫られます。分散型電源の増加や人口減などを背景に託送収入の減少が見込まれる中でも、託送料金の抑制と世界トップクラスの信頼度が求められます。そればかりか、分散型電源を受け入れるための設備増強や高経年設備の維持・更新など、必ずしも収入に直結しない投資も増やさざるを得ない状況です。

加えて、分散型電源の開発地点や時期、規模は不透明で、柔軟に計画を見直す機動力も強化しなければなりません。こうした環境下で安定的な経営を成し遂げるには、今からそれなりの備えが必要となります。

出典:アクセンチユア,デジタルグリッドプログラム2017

必要なのは高度なアセットマネジメントの仕組み

今後への備えとして優先度が高いのは、投資計画管理の能力向上です。短中期的な財務指標や長期的な信頼性指標の観点で、限られた資金を設備投資にどう配分するか、‟最適解“を見極めることが一段と重要になります。こうした概念をアセットマネジメントと呼びます。アセットマネジメントは、設備関連の支出を単なる「費用」ではなく「投資」という概念で捉えることが特徴です。共通のルールに則って投資案件ごとに費用対効果を定量的に評価し、優先順位を明確にするという、シビアではあるものの客観性の高い投資計画の立案に繋がります。様々な外的要因による計画変更にも、将来への影響を考慮しながら柔軟に対応することも可能です。既に海外では、こうした取り組みが浸透し始めています。

アセットマネジメントという言葉は広まりつつありますが、抱くイメージは人によって様々です。国際標準規格であるISO55000では「アセットからの価値を実現することを目標とする組織の調整された活動」で、「組織の目標を達成するために、アセットのパフォーマンス、コスト、機会、リスクのバランスを取ることを含む」と定義付けられています。

重要なポイントは、組織が重視する目標が変われば、取るべき手段も変化しなければならないということです。そして、投資計画を立てる際の評価指標の一つに「コスト」を加えた場合、‟満点解“はあり得ないということも認識しなくてはなりません。つまり、組織の目標に従って取捨選択するというシビアな意思決定を連続的に行う必要があるわけです。

これからの時代に必要とされるデジタルアセットマネジメントとは

アセットマネジメントの概念自体は新しいものではありませんが、昨今のデジタル化社会の到来でその位置づけも変わりつつあります。アクセンチュアではデジタル化時代のアセットマネジメントの仕組みを「デジタルアセットマネジメント」と称し、その便益を最大限享受できるための数々の支援を行っています。デジタルアセットマネジメントの最大の特徴は大量データ処理にあると言っても過言ではありません。従来はコンピューティングパワーやストレージの制約から大量なデータを蓄積しそれを処理することは技術的にも費用的にも困難なものでした。しかしながら、昨今の飛躍的な技術の進展によって従来以上の大量なデータを安価に処理することが可能となり、従来では難しかった以下の様なことが実現できるようになっています。


  • 過去の点検記録や故障履歴に基づく劣化分析

  • 劣化分析結果に基づく個々の設備の劣化予測

  • 故障確率や故障影響度を加味した更新計画の最適化


過去において、これらは何れも人の経験や勘に基づき実施されてきた傾向がありますが、断片的には正しい情報でも全体として見た際の確からしさを立証することは不可能でした。時代が変わりITの技術を活用することで、全体最適を追求する道が拓けたことが大きな進歩であると言えます。ただし、従来この可能性を予見できていなかった多くの事業者にとっては、その実現に向けた大きな壁が残ったままになっています。例えば設備に関するデータの信頼性やその統合度合が低いことや、設備に関連する様々なデータを蓄積し意思決定に活用できる基盤が存在しないことが分析への第一歩の妨げになっているようなケースが多々見られます。デジタルアセットマネジメントの魅力が増す一方で、現状とのギャップは大きく開いているのが現状です。

デジタルアセットマネジメントとは?

おわりに

日本の送配電事業者においては、優先的に取り組むべき事項が3つあると考えます。1つ目は「リスクの可視化と定量化」です。具体的には。送配電設備の故障発生確率と故障発生時の影響を基にリスクを定量化する必要がありますが、定量化への検討や見直しを定常的に行っている会社は知る限り存在せず、着手したばかりの段階にあります。2つ目は「リスクや効果と予算配分プロセスとの連動」です。定量化したリスクに基づいてどの設備に優先的に投資を振り向けるか決める必要がありますが、そのようなプロセスやルールの整備・適用は限定的です。3点目は「プロセスとシステムの標準化や統合の度合い」です。客観的なデータを基に、大量にある設備のリスクを定量化するには、システムがそれなりに整備されている必要があります。

言い換えるとこれらは従来の設備に対する考え方を大幅に改め、仕事のやり方からシステムまですべてを見直す事になります。つまり一朝一夕では実現できない足の長い取り組みです。効率的に進められる部分としては、海外の他事業者が同様の課題にどのように対応してきたかを参考にすることや、多くの事業者が採用しているパッケージソフトウェアの思想や機能を参考にすることが挙げられます。しかしながら、データそのものを他の事業者からそのまま借りて来ることは意味をなしません。データの蓄積とそのデータに基づく分析については地道に取り組むのが基本です。自社で目指すべきアセットマネジメントのビジョンを明確にし、それに必要な業務機能・システム機能・データを洗い出し、現状とのギャップをどのように埋めていくのかを計画化することから着手しましょう。

デジタルアセットマネジメントにおけるアクセンチュアの提供価値

アクセンチュアでは世界各国にアセットマネジメントの専門家を擁しており、海外における実績を基にした多様なサービスの提供を通じてお客さまのデジタルアセットマネジメントへの変革を支援します。

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