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PLMによる製品開発・生産バリューチェーンのデジタル化

モノづくりバリューチェーンデジタル化を実現する企業と停滞に陥る企業、その違いとは?

”PLM”による製品開発・生産バリューチェーンのデジタル化とは

髙田屋 晋一

製造・流通本部
シニア・マネージャー
髙田屋 晋一

設計・開発から生産・購買、アフターサービスといった製造業のコアのバリューチェーンに求められるケーパビリティは、近年ますます高度化・複雑化の一路を辿っています。多様化する顧客ニーズへの対応、製品構成の複雑化、コストダウンへの圧力、品質維持・海外規制対応、上市タイミング早期化という古典的なものに加え、IoTやConnectedという新たな技術への適用、オープンイノベーションによる外部とのアライアンス活用など、枚挙に暇がありません。これらにタイムリーに適応し、競争力を維持し続けるためには、従来の延長線上で改善を積み重ねるだけでは限界があると感じられている企業は多いのではないでしょうか。

この疑問に対し、近年台頭したデジタルの力をうまく活用し、これまでの機能別縦割の組織・業務プロセスから、組織横断で協働が可能な組織・業務プロセスへ変革し、設計・開発効率化、製品開発のアジリティ(俊敏性)向上、上市スピードUPなどを実現している企業が増えています。そこでキーワードとなるのは、“PLM”(Product Life Cycle Management)です。PLMとは、企画から設計・開発、生産・購買、販売、アフターサービスに至るすべての製品ライフサイクルに係わる情報を一元管理し、製品収益・コストを最適化するための変革コンセプト及び、それを実現するためのITシステム基盤のことです。

”PLM”による製品開発・生産バリューチェーンのデジタル化とは

例えば、PLM先進企業においては、すでに以下のようなことが実現されています。

  • 個人管理になって散在していた技術情報をPLM基盤に一元管理。集合知化された最新データを基に部門横断で検討し、全体最適な意思決定をする。また、その情報を関連部門や取引先に即座に共有することで、手戻りや伝達ロスを削減し、開発リードタイムを40%短縮。(③の例)

  • 技術ノウハウを最大活用するために、過去を含む技術情報をPLM基盤で一元管理。また、膨大な情報の中から必要な情報に素早くたどり着くために、アナリティクスを用いて技術者が欲しい関連情報を提案するノウハウDBを導入し、開発効率20%向上。(①の例)

  • デジタルシミュレーションツールを徹底活用し、量産型試作以外の試作をゼロに。物理制約の排除により、検証にかかるコストダウン、圧倒的な検証回数・バリエーション増加、開発リードタイム短縮、技術ノウハウ再利用性向上を実現。(①②の例)

  • 設計・開発で作成された3Dデータ及び構成情報を販売会社へ連携、マニュアルや3Dカタログの自動作成といった効率化に加え、デジタルショールームを実現し、顧客の新たな購買エクスペリエンスを実現。(④の例)(*1)

また、近未来のデジタルカスタマーエクスペリエンスの例として語られるような、

  • 海外のデザイナーがクラウドソーシングのコンペに投稿した自動車のデザインを投稿、SNSの人気に従って正式なデザインとして採用される。

  • カーディーラーに来た若い夫婦は、多様なデザインパターンから好みのデザインを選択、自由にオプションを組み合わせることができる。またその情報がホログラムとして表示され、実機なしで購買意思決定をする。

  • R&Dセンターではそのデザインを基に3Dデータを作成、工場では即座にその生産が始まる。

といったユースケース(*2)においても、部門横断のデジタルデータの連携がカギであり、PLMがそのデジタル情報管理基盤となっていることは容易に想像されると思います。

PLMプロジェクトの典型的な障壁

しかし同時に、その変革には多大な労力を要し、様々なチャレンジがあることも予見されると思います。まず、これまで部門ごとに役割を分担し、業務や情報を分断してきた各部門間には、複雑な利害関係が存在しており、そもそも情報を互いに公開すること自体に抵抗があるのが実情ではないでしょうか。また、横断の業務プロセスを定義しようにも、そもそも現行業務が不明瞭で、それを調査した結果、非公式な情報やコミュニケーションで様々な意思決定がされ、決定事項はすべて紙もしくは人の頭の中にのみ存在する、ということが判明することも多いのが実態です。

その結果、PLMプロジェクト推進においては、膨大な情報量や広範な対象プロセス、複雑な関係者間の利害関係、現場からの要望や改革テーマに溺れてしまい、結局何から手を付けてよいか分からなくなるケースや、個別最適な業務プロセス、ITシステムに陥ってしまうケースが後を絶ちません。

しかしながら前述の通り、先進企業達はPLMによる効果を実現していますし、また近い将来“デジタルエンタープライズ”を実現し、新たな顧客価値を創造するためにはPLMはなくてならない存在です。今現在では大きくは表面化していませんが、数年後には致命的な競争力の差の要因となり、企業の存続に係わる問題となりえます。

それでは、PLMプロジェクトを成功に導き、デジタル体質へ変革するためには、何に気を付けるべきなのでしょうか。世界中の製造業クライアントへPLMコンサルタントとして数々のプロジェクトを成功に導いてきたアクセンチュアの事例からいくつか教訓をご紹介します。

PLMプロジェクト成功の要所

ポイント1:戦略テーマと紐づけ全社改革プロジェクトと位置付ける
まず、そもそもなぜPLMに取り組むのかを経営戦略と紐づけて明確にし、全社取り組みとして位置づける必要があります。従来型の部門最適のマインドセットを超越するには、これを実現しなくては生き残れないという危機感の熟成が不可欠であり、これ抜きでは企業変革が成し遂げられないというのは、世界共通で語られていることです。そのためには、いかなる変革プロジェクトと同様に、トップマネージメントのスポンサーシップが不可欠です。

ポイント2:企業文化・スコープに見合った適切なアプローチを設定する
次に重要なのは、企業文化・スコープに見合った適切なアプローチの設定です。全社の巻き込み宣言の後、戦略的な目的・目標に従ったテーマと優先度を定義し、更にテーマ間の依存関係の整理を行います。そして、“ビジネスプロセス”、“データ”、“テクノロジー”の内、何がキーのEnablerになるのかを見極めることで、実現ロードマップを整理していきます。しかしここで重要となるのは、トップダウン(経営目線)とボトムアップ(現場目線)のバランスです。トップダウン(経営目線)に寄りすぎると、業務負荷やシステムの使い勝手が軽視され現場に定着せず、一方ボトムアップ(現場目線)に寄りすぎると、現場の個別最適な改善要望が積み上がり、全体で効果を創出するという目的を見失ってしまいます。企業の文化や対象のスコープにより、どこにどのように重点を置けば、現場定着を確保しながらも変革が実現可能か見極め、ロードマップへ落とし込んでいくかは非常に重要なポイントです。

ポイント3:部門横断の検討体制の構築と維持
最後のポイントは、部門横断の検討体制の構築と維持です。PLMは、別の言い方では“データ統合・デジタル化を前提とした部門横断の業務プロセス設計”とも言えますそのためには取り組むテーマごとの部門横断の検討体制構築が不可欠です。この体制構築には、メンバーの任命だけではなく、協創するマインドセットや建設的な議論をする空気作りも含みます。また、一度設計・構築した横断業務プロセスは、市場ニーズの変化に合わせて柔軟に俊敏に適応し続ける必要があります。そのために、横断業務検討体制を維持し続け、システム開発においてはアジャイル開発やDevOpsなどの柔軟性・俊敏性を持った方法論・開発基盤の適用を最初から計画しておくことが肝要です。

人とデータを中心に、製造業バリューチェーンの”デジタル体質”化

デジタル変革のテーマには、最新のテクノロジーをプラグイン型で活用し素早く実現可能な“Fast”なものと、過去の資産(や遺産)に引きずられる“Slowなものがあります。(*3)設計・開発や生産・購買といった製造業のコア業務は、これまでの技術情報やノウハウ、設備などの資産を見直し、再定義しなければならず、一足飛びに未来の姿にはたどり着くことはできません。従い、表層的に最新テクノロジーをどう適用するか検討するのではなく、本質的にそれを使う人とデータに向きあい"デジタル体質"化として取り組むことが必要です。だからといって、ゆっくり時間をかけていいわけではありません。繰り返しですが、先進企業は何年も前からこの重要性に気付きデジタル化の取り組みを推進しています。今PLMに取り組みを行っていなかったり、行き詰っていたりする企業は、何年後には手遅れになる可能性があります。今すぐに始めるべきです。

*1(https://blogs.3ds.com/japan/press_release_groupe-psa/
*2(https://www.accenture.com/jp-ja/insight-japan-aie-dassault-video-promotion
*3(https://www.accenture.com/jp-ja/insight-calibrating-multi-speed-it



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TEL:03-3588-4453 (製造・流通本部直通)


 

 

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