大きな変化に直面するエネルギー業界。前編は、デジタルトランスフォーメーションを加速させる目的でアクセンチュアと共同でK4 Digitalを設立した関西電力の稲田浩二氏に取り組みを語っていただいた。後編の今回は、同氏に関西電力の求める人材像や人材の育て方を伺った。

人材戦略のキーワードは、「スペシャリティ」と「ダイバーシティ」

五十嵐2000年以降、関西電力さんは、電力事業以外のグループ事業、情報通信事業や不動産事業、暮らし事業などにも積極果敢にチャレンジしてきましたね。

稲田はい。当社は「挑む」をキーワードに電力業界の中でも積極的に多角化を進め、グループ全体での成長を実現してきました。

五十嵐デジタルトランスフォーメーションを推進する中で、求める「人材像」に変化はありましたか。

稲田関西電力がお客さまに選ばれ、競争に勝ち続け、持続的に成長するために必要な変革と挑戦を後押ししていくにあたり、2つのキーワードを重視しています。一つは専門性、「スペシャリティ」です。もう一つは多様性、「ダイバーシティ」です。

五十嵐「スペシャリティ」と「ダイバーシティ」。これはアクセンチュアでも同じです。

稲田「スペシャリティ」は、ナレッジ面で求めていることであり、まさにK4Digitalが目指しているような、データアナリシスやデータマネジメント、AI、IoT、アジャイル開発などについての高度な専門的ナレッジです。また、今まで以上に色々なスキルを持ったタイプの人材が共創していく中、ダイバーシティを受け入れ、力に変えられる文化の醸成は必須だと考えます。もちろん、マインド面では、従来から重視していた、「使命感」や「コミュニケーション能力」に加え、「創造力」や「チャレンジ精神」が、より重要になっていくことは言うまでもありません。

デジタルに関する専門性を持ち、多様な仲間と共に創造力、チャレンジ精神を発揮したい、という方には、ぜひ当社に来ていただきたい。そしてDXの最前線、ビジネスの最前線で活躍してほしいと思っています。

五十嵐デジタル人材に対しては、各業界からの需要が高まっていますが、デジタルの専門性を武器に、エネルギー業界を変えていきたいと思うなら、関西電力さんは素晴らしい活躍の場になりそうですね。

稲田ありがとうございます。デジタルそのものを価値として提供したいと考える人たちは、それこそアクセンチュアさんに入るという選択肢もあるでしょう(笑)。しかし、デジタルを使ってエネルギーや情報通信、不動産、暮らしなどの事業分野で価値を提供し、エンドユーザであるお客さまの生活や企業活動そのものを変えたい、イノベーションを起こしたい、と考える人には、ぜひ関西電力に入社してほしいですね。

関西電力グループアカデミーを立ち上げ、デジタル人材育成を目指す

五十嵐デジタル強化へのシフトに向け、既存社員を「デジタル人材化」する教育、育成の仕組みを、どのように考えていますか。

稲田必要なデジタル人材を、抽象的に「デジタル人材」とまとめてもいけないので、4つの段階で定義しています。

高度な分析ができる、データ分析のプロフェッショナル。その次が、定式化が容易な分析ができる人材。これらが、データ分析のプロです。次に、自分で分析はできないが、データ分析をする人と対等に対話ができ、自分たちの仕事を変えていくことができる人たち。最後は、可視化ツールで集計・見える化ができる人材です。

こうした段階を定義して、それぞれのビジネス部門でどの層にどのくらいの人材が必要かを考えます。

五十嵐データ分析のプロは、何人くらいが必要だと想定していますか。

稲田データ分析のプロは、K4Digitalとビジネス部門を合わせて100名規模で考えています。当社は約2万人の会社です。0.5%程度がデータ分析のできる人材として必要になるでしょう。彼らをK4Digitalなどに配属して、OJTで育成していくことになります。 全体としては数百名規模で必要だと考えています。

五十嵐昨年(2018年)、「関西電力グループアカデミー」を立ち上げましたね。

稲田はい。これまで実践してきた「人を大切にする」という考えとともに、「厳しい競争環境で勝ち抜くには人材の育成が最も大切である」という会社の思いを込め、社長を学長とする関西電力グループアカデミーを開校しました。その中の研修プログラムの一つとしてデータ分析の基礎研修などを準備しています。自分でゴリゴリ分析をするわけではないのですが、分析者と対等に対話してビジネスを変えていく人材を育てていきたいと考えています。

それ以外にも、2万人近い社員がいるわけですが、現場第一線の社員を含め、すべての社員にも、データを活用することの重要性やデジタルで何が実現できるのかといったことを理解してもらい、現場発のDXも進めていきたいと考えています。

そういう意味では、すべての社員にデジタルリテラシーを持ってもらうことを目指しているということです。全社員対象の研修プログラムの中にも織り込んでいきたいと思っています。

意識改革のトリガーとなるK4Digitalという場

五十嵐アクセンチュアは元々コンサルティングという職業柄、能動的に提案していく姿勢を持った人材が多くいます。K4Digitalにもそういったマインドを強く持ったメンバーがサービスを提供させていただいており、関西電力さんの各事業部門に対して、こちら側からいろいろなDX活用プランを能動的に持ちかけています。一緒に働く中で、そうした、コンサルタントの良い部分がK4Digital全体にプラスの影響を与えるとよいかと思っています。

稲田アクセンチュアさんには、すでにデジタル人材の定義や研修プログラムの整備、K4Digital社員へのOJTなどで貢献いただいていますが、今後はデジタルの効果・メリットを全社員に実感してもらうために、トップダウン、ボトムアップの両面からの啓発活動が必要になります。そういう活動の企画提案も期待しています。

また、おっしゃるように、K4Digitalで一緒に働いている社員の意識改革、マインド面での成長につながることも期待しています。

五十嵐関西電力さんのデジタルトランスフォーメーションが進み、人材を育成されていくと、デジタルの専門家としてサービスを提供させていただいている我々アクセンチュアとしてはその1歩も2歩も先を走り続けないと価値を認めて頂けなくなってしまいますね。プレッシャーもあり大変ですが、頑張ります(笑)。

新たな価値を生み出す挑戦が続く

五十嵐最後に、デジタルトランスフォーメーションによる領域に留まらず、関西電力さんが今後挑戦したいビジネス領域やお客さまに提供したい新たな価値など、将来に向けた展望をお聞かせください。

稲田2019年春に打ち出す予定の新しい中期経営計画では、エネルギー分野、非エネルギー分野ともに、新たなチャレンジをしていこうということで、いくつかのビジネス領域を設定し、計画を具体化しているところです。いずれの領域においても、「お客さまにとっての価値」「社会にとっての価値」に徹底的にこだわることが重要だと思っています。エネルギー領域で非連続な変化が起こる可能性がある中で、ひょっとしたらジレンマとなるかもしれない領域にも果敢に挑戦していきたいと思っています。

デジタル技術の進展により、お客さまや社会に「より大きな価値」、あるいは、これまでには実現できなかった「新たな価値」を提供できる可能性が広がっていると思います。デジタル技術は、今お話ししている間にもどんどん進化を続けています。アクセンチュアさんにも、常に「新しい価値」を生み出すような提案を、当社グループに適用可能な形で提案し続けていただくことを期待します。

五十嵐最近、業界の壁が薄れていく中、我々コンサルタントの中でも、業界の壁を越え、異なる業界の専門性を持つコンサル同士がコラボレーションする事例が増えています。業界の壁がなくなっていくことは、脅威でもありチャンスでもあります。今は関西電力さんの直接的な競合でなく、別の産業やセグメントに属する企業であっても、近い将来、競合になるかもしれませんし、あるいはまた、そういうところに踏み込んでいくことで、関西電力さんのさらなる成長の機会があるかもしれない。そういった面でも、今後新しい提案ができればよいと考えます。「アクセンチュアはポケットがたくさんあって、いろいろ持っていていいね」と言っていただけるよう、今後も研鑽を積み重ねていきたいと思っています。

本日は貴重なお話しを賜り、ありがとうございました。