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デジタル・ペイメントへの転換

アクセンチュアは銀行が最適なデジタル・ペイメントを設計/開発/提供するため、戦略策定の5つのポイントや最適なサービスのチェックリストなどをまとめました。

概要

デジタル経済はとどまることのない発展を続けており、マルチチャネルを介した商品・サービスのデリバリーは、もはやあらゆる企業にとって不可欠なアプローチとなっています。消費者がモバイル端末を介して商品を選び、支払い手続きを行う段階から、消費者主導のシームレスなインタラクションを行う段階へと環境が進化する中、私たちにも新たなコネクティビティの提供が求められるようになっています。

このコネクティビティは、デジタル・ペイメントへの変革をもたらしつつあります。現金決済やカード決済から、デジタル・チャネルを介した決済への移行です。たとえば、デジタル・ウォレットやクラウド型決済、あるいは全く新しいデジタル・ペイメントの仕組みが誕生しています。

新たなデジタル・ペイメントの仕組みの先には巨大な市場が広がっています。アクセンチュアの分析では、現金またはカードによる決済は全世界で年間3兆件に上り、決済額は合計で約13兆米ドルに達することが分かっています。

これらのうち、どれくらいの割合の消費者がいつデジタル・ペイメントに移行するかは、まだ推測の域を出ません。しかしデジタル経済の発展とともに、デジタル・ペイメントへの移行が現実のものとなりつつあるのは事実です。その証拠にモバイル・ペイメントやデジタル・ペイメントは、大型投資の対象として、あるいはイノベーションの領域として、特に投資会社やベンチャー企業から、大きな注目を集めています。

背景

デジタル・ペイメントの急速な進化と、それに対する投資の拡大を背景に、世界のペイメント市場は大きな変革の時を迎えています。しかしながら、さまざまな変化やイノベーションが起こる中で、現状のところ明確な成功事例はほとんど確認されていません。それはなぜでしょうか?

その答えを見つけるためにはまず、市場の大きなトレンドを見極める必要があります。業界レベルでは、銀行業界全体がデジタル化しつつあります。チャネルと端末の境界は曖昧になり、インターネットとモバイルと実店舗での取引を集約して1つのデジタルサービスとして提供するケースも増えています。スマートフォンやタブレットは急速に消費者に浸透して、日常的なツールとなり、今では読書からメール送信、Facebookのチェック、ナビゲーションなどに活用されています。ほんの最近まで、モバイルとデジタルはビジネス戦略の1つの要素でした。しかし現在ではモバイルとデジタルが戦略そのものとなり、ビジネスを変革する鍵となっています。

商業分野および銀行業界において、決済業務はデジタル化の最前線および中心に据えられています。2つの業界では決済が最も頻繁にデジタル・プロセスを経由する業務であり、また、消費者との日常的なインタラクション手段でもあるからです。

業界全体でのデジタル・ペイメントへの転換を見渡したところ、以下に挙げるようないくつかのトレンドを確認しました。

  • 非接触型決済の普及
  • エンドツーエンドな購買活動の統合
  • 小売業界におけるイノベーション
  • 小売業者による決済アプリ
  • モバイルPOS(M-POS)ソリューション
  • クラウド型ペイメント
  • リアルタイムペイメント
  • マイクロペイメント
  • 暗号通貨
  • 規制・法令対応

以上のような多様なトレンドが、デジタル・ペイメントに何をもたらすかを正確にとらえることは容易ではありません。なかでも、非接触型決済の普及、リアルタイムペイメント、小売業者による決済アプリ、クラウド型ペイメントという4つのトレンドが、これからのペイメント市場に大きな影響を及ぼすと考えられます。

分析

アクセンチュアでは、銀行が適切なデジタル・ペイメント戦略を策定するには5つの要素が重要だと考えています。

  • 「リモートコントローラー」としてのデジタル端末を介して、顧客が銀行口座から直接、買い物ができるようにする
    デジタル・ウォレットは近年、モバイル/デジタル・イノベーションの目玉として注目されています。しかし、成功に導く正しいアプローチは明らかになっていません。最大の課題は、「すべての消費者・すべての小売業者」に対応可能な遍在的なサービスの確立です。

  • 業界全体に通用するソリューションをデジタル・エコシステムにおいて訴求する
    小売業者の視点からすると、業界全体に通用するペイメントソリューションのほうが、1つの銀行の顧客にしか使えないソリューションよりも魅力的です。市場を問わずいかなる大手銀行であっても、顧客基盤が消費者全体の15~20%を超えることはまずありません。従って、小売業者が特定の銀行に絞った導入においては、投資の妥当性を証明するのは難しいでしょう。

  • APIを公開する
    銀行は、ユーザーによる口座アクセスを可能にするデジタル/モバイル・ペイメントソリューションを社内開発するよりも、小売業者やその他のサードパーティ用に自行の決済システムを公開するAPIを構築するほうが妥当です。またその場合は決済機能だけではなく付帯機能をAPIに含めるべきでしょう。これにより消費者は小売業者などのアプリから直に支払いを実行できるので、銀行にとっては新たな収益源を生む機会が得られることになります。

  • マスマーケットでデジタル・ペイメントを普及させた後に、ニッチ市場にターゲットを絞る
    経済のデジタル化が進むにつれ、デジタル・エコシステムは拡大し、どこでもデジタル・インタラクションが行われるようになります。従ってデジタル・ペイメントは、まずはマスマーケット向けに、広く普及できるものを構築する必要があります。

  • 既存のテクノロジーと新興テクノロジーを活用する
    テクノロジーの進化は、銀行にデジタル・ペイメントという機会をもたらしました。銀行は新興テクノロジーを注視し続けることで、自行のペイメントサービスの改善と拡張を推し進めなければなりません。たとえばスマートフォンやタブレットがタクシー配車から暖房器具の作動、テレビ番組の録画といった幅広い目的の「リモートコントローラー」として利用されているのも、新たなテクノロジーの一例です。

提言

デジタル・エコシステムの成長に伴い、消費者も加盟店も、互いのインタラクションに一層最適なペイメント・メカニズムを必要としています。

アクセンチュアの見解では、銀行がこのニーズに対応するには、デジタル・カード機能が付いたデジタル・ウォレットを提供するだけでは足りません。ニーズに応えるには、①銀行口座をあらゆるデジタル・コマースで使えるようにし、②ペイメントAPIを小売業者に公開して活用と普及を促し、③デジタル・コマースにおいても消費者にも広く受け入れられ、大量のトランザクションに対応し得るソリューションを構築する必要があります。すなわち、市場向けに適切なデジタル・ペイメントサービスを策定すると同時に、そのサービスを提供する上で必要なケイパビリティを社内で開発・強化しなければならないことを意味しています。

銀行業界では、「中抜き(仲介機能の排除)」はすでに使い古された言葉でしょう。しかしデジタル・コマースにおいては、中抜きそのものは大した課題ではありません。新たな仲介者の領域が誕生し、消費者と小売業者に多くの機能とインタラクションを提供するようになったからです。銀行はこの領域に参入することで、自行のAPIを領域内に埋め込み、ペイメントサービスを普及させることが可能です。しかもそれを実現する上で、銀行は1つの大きな競争優位性を備えています。支払いを行うにせよ受け取るにせよ、口座は必須であり、銀行はいくらでも口座を供給できるのです。

銀行はまた、ペイメントの専門知識に関しても明確な競争優位性を備えています。新規参入者による多くの新しいデジタル・ペイメントが市場で成功を収められない理由の1つは、ペイメントについての知識と理解の欠如です。具体的には、決済、流動性、決済完了性、金融犯罪、規制、マスペイメント(一括送金)、コモディティ、経済性、リスクなどの知識が不可欠です。

しかし同時に、多くの銀行はデジタル領域のスキルやデジタル化時代の消費者に対する理解、競争優位性を活かそうとする起業家精神や勇気の欠如という大きな課題もあります。つまり、銀行は自らが変わらなければならないという根源的な課題に迫られているのです。

デジタル・ペイメントは、変革を実現するための大きなチャンスです。すべてのビジネスがデジタルに移行しつつある現在、まさに今こそが自社のビジネスを見直す絶好の機会なのです。