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The Digital Insurer――デジタル時代の保険会社における顧客中心主義

顧客中心主義への変革は、保険会社によって目的やスタートが異なります。現状と将来の戦略は、新しい顧客層と、自社の競争環境を考慮して適切に評価する必要があります。

概要

デジタル時代の到来により「つながっている世界」がもたらされました。人々は常に「オンライン」であり、ますます多くのデバイスが「Internet of Things」(モノのインターネット) でつながるようになりました。このような展開、そしてそれを支えるテクノロジーにより、新たな競争への道が開かれ、伝統的なビジネスモデルの持続可能性に疑問符がつけられています。消費者の交渉力と期待値は上がる一方です。

今日、消費者は状況に応じてチャネルを選択でき、その全てにおいて使い勝手がよく、個人のニーズに合わせてカスタマイズされた素晴らしい体験を期待しています。また、消費者は常にコントロールできる状況を望んでいます。クリック1 回またはタッチ1 回で必要な情報の精査・比較を行うことができる今日、情報の非対称性は失われつつあります。

加えて、消費者が検索や購入をする際、業界(小売、通信、メディア、旅行、保険、銀行など)による意識の違いはありません。期待値に満たない顧客体験に対する評価をする際も、同様です。彼らは体験・未体験を含む全ての業界に対して、最高の顧客体験、またはそれ以上の体験を提供してもらえることを大いに期待しています。

消費者は保険業が規制の厳しい産業だということは認識しているかもしれません。たとえ認識していたとしても、他の業界で経験したレベルの顧客体験を保険会社が提供しないという状況は、受け入れられません。規制の厳しい産業という事実は免罪符になりえないのです。

業界間の境界線が曖昧になり、デジタル技術の進化により個々の顧客ニーズや嗜好、生活条件などが把握できるようになるに伴い、競争は激化します。この流れは、特にディストリビューション領域(マーケティング/セールス)で起こっていますが、今日普及しているテクノロジーは、業界間の広義のセグメンテーションや標準化に対する要件を満たせていません。その保険会社が既存事業者なのか新規参入者なのか、全領域をターゲットとしているかニッチな領域だけなのか、国内マーケットに強いのかまたは国際マーケットなのか、など、どのような特徴を持っていたとしても、個々の顧客ニーズを最も充足することができた保険会社が、より多くの顧客の支持を獲得するのです。

分析

流通チャネルを重視しているすべての保険会社にとって、顧客中心主義の採用は必須といえるでしょう。ある調査によれば、企業が満足のいく顧客体験を提供できなかった場合、5年間で50%もの顧客基盤を失う可能性が示されており、致命的な衰退を招きかねないと言えます。

アクセンチュアが最近行った調査によれば、新しい顧客層には次のような特徴があります。

オンライン

  • 72%が価格比較のために店頭でモバイル機器を使用(英国・米国の回答者)しています。c

  • 3人に2人が、自分が買いたい物を買いたいときに好きな方法で(店舗、またはオンラインなど)買えることは「非常に重要」であると考えています。

  • 71%が少なくともいくつかの保険商品をオンライン購入してもよいと回答しています。

  • 67%がモバイル機器経由で保険サービスを受けることに興味があります。

ソーシャル

  • 47%が商品やサービスの情報をソーシャルメディアを通して収集しています。

  • 48%がソーシャルメディア、ブログ、消費者サイトのアドバイスを「重要」または「非常に重要」と考えています。

  • 55%がソーシャルメディア、ブログ、消費者サイトを通じて保険サービスを受けることに興味を持っています。

協力的で情報シェアに積極的

  • 2013年にオンライン商品やサービスのレビューまたはブログに貢献した消費者数は、前年比で46%増加しました。

  • 消費者は「集団の知恵」に依存し(ソーシャルメディア、ブログなど)、貢献や情報共有したり、またそこから知識を得たいと考えています。

  • 設計を手伝った商品を購入することに強い興味を持っています。

十分な情報を持ち自主的に決定を行う

  • 消費者にとって、オンラインでのリサーチはごく普通のことです(少額かつ一般的な保険のオンライン購入は増加する見通し)。

  • 保険会社とのコミュニケーションほぼすべてについて、オンラインが最も好まれるチャネルであると捉えています。オンラインで「助言を得たい」消費者は44%、「個人情報を更新したい」消費者は68%でした。

  • 利便性があると判断されれば、サードパーティの代理店も歓迎されます(67%が銀行、オンラインサービス業者、小売店など保険会社以外のチャネルでの保険購入を検討してもよいと考えています)。

  • 消費者は関連コンテンツにリアルタイムでアクセスできることを期待しており、リアルタイムで満足できる結果を享受することを普通と考えています。

価格に敏感

  • 64%がブランドよりもお買い得品を積極的に探しており、欲しい商品を見つけた後、より安い価格の商品がないかチェックするためにさらに5~10分かけてオンライン検索をすることを厭いません。

  • 保険契約者の40%が、住宅保険または自動車保険の保険会社を12カ月以内に変更する見込みと回答しています(25~34歳では51%)。

  • 消費者は自ら決定したいと考えています。消費者は、市場についてどのように調べればよいか分かっており、満足できなければ保険会社を変更します。その結果、保険の「乗り換え市場規模」は個人損害保険および生命保険で4,000億米ドルにも上ると試算されました。

体験重視

  • 80%がよりカスタマイズされたサービスに切り替えたいと考えており、41%がそのようなサービスのために費用が平均7.8%上がっても構わないと考えています。

  • 顧客は最適な補償(82%)、最適な保険料(81%)、より良いサービス(78%)のためであれば、個人情報の提供を考慮してもよいと考えています。これは、提供と引き換えに得られるものが分かっており、個人情報が良識に従って利用され、希望すれば削除してもらえるという保証があることが条件です。

  • 米国の消費者の57%が、回答がすぐに来なければオンライン購入をやめるだろうと回答しています。

  • 保険業界の顧客は、利用したチャネルに関わらず、保険会社から認識してもらいたいと考えています。

保険業界の新しい顧客層は、次のような10種類の要望をますます強める傾向にあります。

  1. 少なくとも現在のデジタル化レベルを維持すること。

  2. すべてのチャネルで常時顧客を認識すること(単なる保険証券番号として捉えるのではなく)。

  3. 顧客の言葉に耳を傾け、それを記憶していること(その後のコミュニケーションや顧客との関係に適切に活かすために)。

  4. 24時間途切れることなくサポートし、必要なときにサービスを提供できること。

  5. 顧客との接点は、顧客が好むチャネルを通して、顧客の個性および個別の状況に応じた方法で、顧客が適切と考える頻度のコミュニケーションによること。

  6. コミュニケーションはすべてのチャネルにおいて簡易に行え、一貫性があり、便利で楽しいものであること。

  7. 顧客に権限、コントロールを与え、いつ、どこでも、希望の方法によって顧客ニーズを満たせるようにしておくこと。

  8. 顧客の希望にそってカスタマイズした商品とサービスを、透明性が高く利用しやすい価格で提供すること。

  9. 顧客の考え、ニーズ、好み、環境および前回までのコミュニケーションを反映し、カスタマイズしたソリューションを顧客に適した価格および条件でつくること。

  10. 顧客のロイヤルティを認識し、提供する努力をすること。

提言

顧客中心主義は新しいパラダイムというわけではありません。常に存在し、常に重要なものでした。消費者はビジネス活動の開始時点から、顧客中心主義を意識しています。デジタルの時代において改めてその優先順位が高くなっているのは、顧客中心主義が見直され、実践する新たな技術が創出されたからです。

顧客中心主義への変革の設計と実現は、保険会社によって目的やスタートが異なります。現状と将来の戦略は、デジタル時代における保険業界の新しい顧客層と、自社の競争環境を考慮して適切に評価する必要があります。

策定した戦略は、精緻な顧客セグメントや顧客とのリレーション管理(コンタクト履歴など)を、総合的に活用し、あらゆる状況やタイミングで、見込み顧客の期待や嗜好に沿う、または超えるように、再構築していく必要があります。

保険会社は、新たな顧客中心主義戦略の策定や変革への道筋の形成にあたり、多くの概念上・実行上の課題にも対処する必要があります。

パラダイムを理解し、早急に適応しなければ、保険業界の将来は危険にさらされることになるでしょう。変化は劇的なスピードで起こっています。セールスの分野で勝ち残ろうという意志のある保険会社には明確な戦略と断固とした行動が求められます。