現在、エネルギー業界は顧客に成果・体験価値を創出するために模索が続いていますが、他業界の先進事例を踏まえると、以下3つを重要な要素が必要と考えています。
- デジタルを活用して成果・体験価値の創出をプロデュースできる人材
- サービス創出に向けたオープンなエコシステム
- 持続的なアイデア創出とスピーディな意思決定の仕組み
顧客視点に寄り添った成果・価値の創出は一社で実現できるものではありません。先進のデジタル技術を持った企業やアイデアの持ち主を集めるプロデューサーのような人材が必要です。大手もスタートアップも問わず、外部のパートナーやサービスと連携できるよう、自社の強みをプラットフォーム化し、オープンなエコシステムを構築する必要があります。また、スピーディな事業開発と改良を持続的に進められる意思決定の仕組みも欠かせません。
先進事例として、イギリスの小売事業者では、工具やガーデニング用品などのDIY用品の販売を主力事業としていましたが、AmazonをはじめとしたECの脅威にさらされ、業績が悪化していました。そこで既にデジタル化に成功していた競合からCEOをヘッドハントし、CEOのイニシアティブのもとプロジェクトを新設。モノ売りのビジネスから顧客視点のビジネスへの転換に着手しました。
その際、既存事業の枠組みの中では高速なサイクルでのサービス開発が困難なため、既存事業からプロジェクトを切り出し、デジタルイノベーションを推進する組織「Digital Hub」を構築。アクセンチュアの子会社であるFjord(フィヨルド)というデザイン会社など外部の専門人材を取り込みながら、デジタルの能力を持つ人材やアイデアを持つ外部パートナーを結びつけ、短期間でスピーディにPoCを作成・リリースしていきました。例えば、庭の雑草を画像認識して適切な駆除方法を提案するアプリなどが生まれ、実際にApp Storeでも高評価を得ることができました。
扱う商材はエネルギーと異なるとはいえ、成果・体験価値を創出するにはサービスをデザインする専門人材を外部から連れてきて、連携できるエコシステムをつくり、市場の反応を見ながらスピーディに改良していくことが重要だということがこの事例から分かります。
今回のセミナーでは、エネルギー業界の戦い方は、「無関心に徹底して寄り添い、エネルギー契約・利用を省力化・自動化」の方向性と、「エネルギーも含めたサービス化を徹底志向し、成果・体験価値を創出」の両極に分けられることが明らかになりました。サービス化、つまり「Energy as a Service」の方向性については、海外事業者も含めて試行錯誤を続けている状況です。
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部は、さまざまな戦略における高い専門性を組み合わせ、エネルギー業界の変革を支援して参ります。