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エネルギーもサービス化へ。
「デジタル化時代の顧客価値とエネルギー利用」セミナーレポート

講師
アクセンチュア株式会社
戦略コンサルティング本部
シニア・マネジャー
藤野 良

さまざまな業界で「モノからコト」への変革が叫ばれる中、エネルギー業界もビジネスモデルの転換に向き合う時期が到来しています。典型的なコモディティ商材であるエネルギーにどのような変化が訪れ、どう向き合っていくべきなのでしょうか。エネルギーフォーラム社主催「エネルギーデジタル革命の最前線と将来展望」と題したイベントでの弊社講演内容をご紹介します。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャーの藤野良は、「デジタル化時代の顧客価値とエネルギー利用」と題する講演にて、まずエネルギー業界に留まらず広い観点に立ち、デジタル化の普及と顧客の購買行動の変化、それに伴う戦い方の変化について解説を行いました。(以下、藤野の講演概要)

コモディティ化するモノに対して、顧客は無関心化している

デジタル技術の活用により、顧客接点の増加とデータ化を通じて顧客理解が飛躍的に進むと共に、顧客への新たな価値創出の手段が増えています。また、従来取得できなかったデータを計測することで、価値の定量化も可能になり、成果を基にした課金も可能になってきています。その結果、ビジネスは手段の提供から、成果・体験価値そのものの提供へと変化していきます。

一方で、顧客の購買行動に関して、業界を問わず類似の商品・サービスが溢れることで顧客はモノへの関心を失ってきていますが、自らの望む成果や体験価値に対しては追加支出も許容することが明らかになっています。アクセンチュア消費者調査によれば、「製品・サービスについて購入前によく検討しない」と答えた日本の消費者は67%にのぼり、産業別に見ると電力・ガスは77%という高い割合を示しました。電力やガスは色のない商品であるため、「安ければどこでもいい」と考える顧客が多いことがわかります。 一方で、自分の望む成果・体験価値に対しては、追加の支出も許容できる意向が強いことが分かります。 デジタル化と購買行動の変化に伴い、戦い方は二極化していきます。一つは「デジタル活用により省力可と自動化を徹底し、無関心に寄り添う戦い方」、もう一つは「デジタルも活用して今までにない新しい価値を生み出していく戦い方」になります。

他業界における1つ目の戦い方の一例がAmazonです。購入すら面倒と考える消費者に対しては、AIスピーカー経由での購入を可能にしたり、IoTボタンによる即時発注の購入形態を用意したりすると共に、将来的には注文履歴や頻度、カード情報などを総合的に分析し、注文せずとも商品が届く予測配送を実現しようとしています。デジタルにより、購買行動の省力可・自動化を徹底している例です。

2つ目の戦い方の一例がライザップです。スポーツジムに通う顧客はトレーニング機器を触りたいわけではなく、短期間で痩せるという成果を求めています。実績があり、本当にダイエットを成功させられるのであれば、高価格のサービスでも購入しています。デジタル活用の例ではないものの、顧客の成果にコミットすれば課金できる事例となります。また、BtoBの事例としてはタイヤーメーカーのミシュランがタイヤの利用に応じた課金を行っています。運送会社向けに走行距離にもとづきタイヤのリース料金を請求する「サービスとしてのタイヤ(Tire as a Service)」を提供しています。業界はそれぞれ違えども、デジタル技術を活用しながら新たな価値を再定義し、既存のビジネスを組み換え、コト売りのビジネスへと変革していくことは可能です。

徹底した省力化と、体験価値の創出へと二極化していく。

他業界での戦い方を踏まえると、エネルギー業界においても同様の二通りの戦い方が考えられます。一つはデジタル活用によってエネルギー契約行動を省力化・自動化する方向性。代表的なコモディティ商材であるエネルギーの調達では、徹底した省力化・自動化が求められています。

具体的な戦い方としては、料金メニューからもっとも安いものを自動的に探してきて契約するようなサービスが生まれてくると考えられます。実際にイギリスでは、Flipperという会社がエネルギー契約の切り替えを省力化するサービスを開始しています。背景として、イギリスは契約メニューが非常に複雑なのでスイッチング自体に付加価値が生じています。“安ければどこでもいい“という顧客の無関心に寄り添って、50社以上の小売事業者の中から最適な料金メニューを自動で選定し、顧客の意思決定を排除しています。同様のビジネスモデルは、ベルギーでも始まっています。


そしてもう一つの戦い方は、デジタルを活用して新しい成果・体験価値を創造すること。つまり、コモディティであるエネルギー単体ではなく、エネルギーの先にある顧客体験を生み出していくことが必要になり、これは、エネルギーのサービス化(Energy as a Service)を意味します。しかし、エネルギーの体験価値と言われてもイメージが湧きにくいのがエネルギー業界の難しさです。

顧客への提供価値を軸にしてビジネスモデルやプロダクトを描き直していくことが重要になります。カーシェアを例に取ると車の所有ではなく移動が目的であり、洗濯機であれば衣服を綺麗にすることが目的です。モノの先にある体験価値からサービスを再定義していくことが求められており、実際にそのような事業者も出てきています。サービスの再定義は、BtoBtoCのビジネスモデルから進んでいきやすいと考えています。


「モノからコト」への事例の一つとしてパナソニックのサービスがあります。パナソニックは、食品小売企業に代わって、冷凍・冷蔵設備の導入から省エネ運用・保守メンテナンスを月々のサービス利用料にて一括で行う「エスクーボシーズ」というサービスを提供しています。つまり、従来のように製品自体には課金せず、エネルギーも含めた「冷やす価値」自体に対して課金しています。サービスを再定義し、サブスクリプションモデルへ転換を図っている事例です。

パナソニックの事例はまだ途中段階ですが、アメリカでは大手電力会社のEdison Internationalが2015年に“Energy as a Service”の概念を打ち出し、100%子会社のEdison Energyを創設しています。エネルギー供給に留まらずエネルギー周辺業界にまで進出して新しい価値を創出する狙いのもと、試行錯誤しながらも、さまざまな商材を束ねたサービス化に向けた取り組みを進めています。

成果・体験価値を生み出すにはどうすべきか?

現在、エネルギー業界は顧客に成果・体験価値を創出するために模索が続いていますが、他業界の先進事例を踏まえると、以下3つを重要な要素が必要と考えています。

  • デジタルを活用して成果・体験価値の創出をプロデュースできる人材
  • サービス創出に向けたオープンなエコシステム
  • 持続的なアイデア創出とスピーディな意思決定の仕組み

顧客視点に寄り添った成果・価値の創出は一社で実現できるものではありません。先進のデジタル技術を持った企業やアイデアの持ち主を集めるプロデューサーのような人材が必要です。大手もスタートアップも問わず、外部のパートナーやサービスと連携できるよう、自社の強みをプラットフォーム化し、オープンなエコシステムを構築する必要があります。また、スピーディな事業開発と改良を持続的に進められる意思決定の仕組みも欠かせません。

先進事例として、イギリスの小売事業者では、工具やガーデニング用品などのDIY用品の販売を主力事業としていましたが、AmazonをはじめとしたECの脅威にさらされ、業績が悪化していました。そこで既にデジタル化に成功していた競合からCEOをヘッドハントし、CEOのイニシアティブのもとプロジェクトを新設。モノ売りのビジネスから顧客視点のビジネスへの転換に着手しました。

その際、既存事業の枠組みの中では高速なサイクルでのサービス開発が困難なため、既存事業からプロジェクトを切り出し、デジタルイノベーションを推進する組織「Digital Hub」を構築。アクセンチュアの子会社であるFjord(フィヨルド)というデザイン会社など外部の専門人材を取り込みながら、デジタルの能力を持つ人材やアイデアを持つ外部パートナーを結びつけ、短期間でスピーディにPoCを作成・リリースしていきました。例えば、庭の雑草を画像認識して適切な駆除方法を提案するアプリなどが生まれ、実際にApp Storeでも高評価を得ることができました。

扱う商材はエネルギーと異なるとはいえ、成果・体験価値を創出するにはサービスをデザインする専門人材を外部から連れてきて、連携できるエコシステムをつくり、市場の反応を見ながらスピーディに改良していくことが重要だということがこの事例から分かります。

今回のセミナーでは、エネルギー業界の戦い方は、「無関心に徹底して寄り添い、エネルギー契約・利用を省力化・自動化」の方向性と、「エネルギーも含めたサービス化を徹底志向し、成果・体験価値を創出」の両極に分けられることが明らかになりました。サービス化、つまり「Energy as a Service」の方向性については、海外事業者も含めて試行錯誤を続けている状況です。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部は、さまざまな戦略における高い専門性を組み合わせ、エネルギー業界の変革を支援して参ります。

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