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コンサルタントが語る
スマート・マニュファク
チャリング

IoT活用によるスマートファクトリーの実現

稲田俊郎    テクノロジーコンサルティング本部
マネジング・ディレクター
稲田俊郎

日本の製造業のお客様の喫緊の課題は、生産現場に散在する様々なデータ・情報の統合による生産性の向上と効率化です。Industry 4.0をはじめ、製造業界を取り巻く情勢は激変の一途をたどっており、IoTクラウドプラットフォームなどを基盤としてデータ収集システムを構築することはもはや不可欠の事項と言えます。本稿ではアクセンチュアのテクノロジーコンサルティング本部、マネジング・ディレクターの稲田俊郎が、IoTの活用によって、いかにしてスマート・マニュファクチャリングを実現するか、具体的な効果を含めて幅広く解説します。

日本の製造業のお客様を取り巻く「生産性の課題」と「あるべき姿」



製造業をはじめ、日本のあらゆる業界のお客様が今日では「挑戦」を求められています。その挑戦とは、政府が掲げる「国内総生産(GDP)600兆円に向けた成長戦略」(日本再興戦略2016)の実現。これを成し遂げるには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。GDPは次の3つのファクターで構成されます。

(1)就業者数 (2)就業時間 (3)労働生産性

しかし現実には「人口減・少子化に伴う就業者数の減少」と「働き方改革等による就業時間の削減」は、避けられません。ならば第3のファクターである「労働生産性」は必ず増加させる必要があります。すなわち、これからの日本のGDPの増大とは、労働生産性の改善とイコールの関係にあるのです。これは下記の図式にて表すことが可能です。



製造業の生産性を表代表的な指標として、在庫回転率を考えてみたいと思います。

日本を代表する製造業である自動車産業の特定年度の有価証券報告書から作成した以下のグラフでは、在庫回転率が高い企業ほど、売上高営業利益率が高く、また、特定の1企業の経年変化を追った場合でも、在庫回転率が高まるほど、売上高営業利益率も高くなると言う、正の相関が示されています。

GDPを高めること=生産性を高める事は、企業を筋肉質=高利益体質にする事につながることが、お分かりいただけると思います。


縦軸に在庫回転率の高低、横軸に製品在庫割合の高低を取った4象限マトリクスを想定します(下図)。

高生産性(原材料/部品が短時間のうちに製品となる)が故に、結果として製品在庫金額割合が高くなる企業が②、一方、④は低生産性(製品となる迄に時間が掛る)の中で、マーケットに対応する為に、どうしても製品在庫金額割合が増えてしまう企業を示しています。



勿論、「高い在庫回転率」と「低い製品在庫割合」を両立させ、部品の共通化や仕掛かり在庫を減らすことで、右上の象限(BEST)に至ることが製造業の目指すところですが、そのためにはICT/IoTによる生産現場へのサポートが欠かせません。

ICT/IoTのサポートが有効な生産現場の5つの領域



ではICTやIoTは具体的には生産現場のどのような領域をサポートできるのでしょうか。

  • 在庫回転率の向上

在庫回転率を高めるには大きく5つの要素があり、このうち、「設備の安定性」「品質の安定性」および「計画の安定性/迅速性」はICT/IoTによるサポートが特に有効な領域であるといえます(下表)。各領域における情報取得をシステム化することにより、生産計画のクイックな変更や対応が可能になります。


  • 品質の向上

前述の様に、生産性を高める上でも、品質は、疎かには出来ませんが、
「品質を高めるための5つの要素」のうち、「機械」と「計測」はICT/IoTによるサポートが有効な領域です(下表)。これらの合計5つの重要項目がシステムによるサポートが特に有効な領域だといえるでしょう。


工場長が「質問」に答えられない理由



生産現場を訪問し、工場長や生産管理部門の方々とお話させていただく際も、次のような質問に即答いただけるケースは稀です。これは生産現場を監督する立場の方々において「情報の迅速な取得」が未解決の課題であることの証左です。

  • 在庫回転率を高めるために、現行製品のトータルリードタイムは何日なのか?

  • 計画変更はリードタイムが伸びる要素であるが、それが多い製品とその理由は何か?

  • 設備の実際の稼働状況はどうか? 停止中の機械はあるか?

  • 品質不良発生率が高い工程はどこか?

  • 品質問題の発生時に、速やかにその影響範囲を特定できるか?

  • 品質問題の発生時に、影響範囲の特定で必要なデータはどこにあるか?

では、なぜ工場長などの立場の方々はこれらの「質問」への答えに窮するのでしょうか。

的確に回答するには、情報を正しく確認でき、それらを統合して分析出来る事欠かせません。しかし、重要・必要なデータが、個々のシステムや設備上、あるいは担当者のデスクの引き出しなどに、散在しているケースが非常に多いのが実情です。こうした背景があって、工場長や生産管理の担当者は上記の質問に迅速かつ的確に回答することができずにいることが多いのです。

ある製造業のお客様で、「製造手順として定められている機械のスイッチがオンになっていなかった」、「資材の量が自動計量される仕組みになっているが、スイッチがオンになっていなかった」といったケースが実際に発生した事があります。これらのケースでは、品質の低下が生産性に悪影響を与えていましたが、IoTや現場の製造機器で情報を捕まえる事によって監視・管理していれば、予防できた事象です。


工場長の管理業務は、もはや人間業では処理できない



消費者庁が公表している重大製品事故についてのデータでも、「製造上の不具合」「決められた手順の不徹底」といった製造工程に問題ありと推定されるものが多くを占めている状況です。

在庫回転率を向上させつつ、製造上のトラブルを回避し、品質を担保するには、製品に関するあらゆるデータの一元管理が必要です。

工場長が先述の質問に的確に回答するには、たとえば「製品を構成する部品を階層構造で表している図や部品表」「製造工程のデータ」「どのサプライヤーからどのようなリードタイムで部品が納入されるのか、その数量・ロットの情報」などについて、最新情報を常に頭の中に持っている必要があります。

しかし、現代の生産現場において、これらの情報量は膨大であり、もはや人間が処理することは到底不可能であると言わざるを得ません。また一旦リコールが発生しますと、製造現場には、「製造状況を書き留めておくこと」等といった現場人員に頼った対応策が指示されがちですが、労力をかけたわりに、折角とった記録が担当者の引き出しで眠っているといった事態に往々にして陥りがちで、品質向上への貢献が無いばかりか、生産性をダウンさせる要因にもなっています。

人力で必要とされる全てのデータを管理することが無理である現在、ICT/IoT活用によるスマート・マニュファクチャリングが生産性を向上させ、企業が成長を維持するために必要な選択肢なのです。

ICT/IoTによって実現するスマート・マニュファクチャリング



  • 情報の統合

生産関連システムでは基幹系のERP(SCMを含む)が最上位層(Level 4)に属し、そこでは計画や実績は、多くが週バケット単位で管理されます。生産実行システムであるMES/MOMの層(Level 3)では日次や時間単位で生産計画、製造数を把握・管理します。さらに下のLevel 3以下は個々の製造機器の稼働時間や製造実績、また、製造時の諸々の条件をデータとして保持しています。

このように、それぞれのデータが工場に関連したシステムの各層に分散していますが、各層(レベル)で持つ情報の粒度は異なっています。例えば、ERPでは実際の幾つかの工程をまとめた単位を‘工程データ’として保持しており、一方、MESでは、実際の工程に即してデータを持っています。

また、先述の様に、個々のシステム上に存在しないデータも有ります。現場では納入部品のロット番号およびその検査結果が紙に記録され、納入時の箱に貼りつけて管理されるなど、よく見受けられるケースです。

これら、粒度が異なるデータ、システム上に存在しないデータを統合して、解析する事が、製造業のお客様においては不可欠な取り組みなのです。

  • トレーサビリティ

各階層を統合することで、「どのお客様向けに」「どの製品が」「どのようなロットで仕向け先に向かったのか」という情報を横断的に持つことができます。また、週バケットと日次/時間単位での生産計画や、製造実行の機器情報を結びつけることもできます。(下図参照)

これにより、「どの工場の」「どの工程で」「いつ」「誰が」「どのシリアル番号の製品を」「どのような製造条件のもと製造し」「どの出荷指図に基づいて」「誰に販売したか」といった緻密な追跡が可能になります。

ある部品メーカーのトレーサビリティー向上を目の当たりにしたアメリカ某社の購買担当が、その場で、発注量を50%増やしたケースが有ります。部品に対する調達担当の品質責任は、ここ数年、厳しさ増してきており、今後、このようなケースが増加すると考えられます。



  • コスト低減

IoTを活用して不良品率を改善し、コスト削減を貢献している事例があります。また、データ収集と分析によって設備の稼働率と生産能力の組み合わせを最適化し、製造ラインの生産能力の向上にも貢献しています。

生産現場のデータの直接取得が可能になれば、本社にいながらにして、遠隔地にある工場の生産管理・品質管理を行うことも容易になり、劇的なコスト低減と品質の均一化、が、期待できます。



アクセンチュアではスマート・マニュファクチャリングにおける先進的な事例や実装のための実証検証環境を所有しております。実証検証環境では IoTクラウドプラットフォーム を介して、ERPやMESシステムと連携しデータ収集する仕組みを持っており、BIシステムにより、そのデータを分析できることができます。お客様に実証検証用環境としてご提供させていただきます。ご希望の際はぜひ当社にご相談ください。



今日の日本の製造業企業において、生産管理の現場に携わった40代以上の方々が最も品質管理についての知見をお持ちと考えております。今後、就業人口は減り、生産現場の分散化も更に進むと考えられます。このような環境で、かつてQC活動で高品質・高回転率を成し遂げてきた成果をできるだけ早く、合理的に実現する方法を確立することが製造現場の責任者の方々に求められています。

IoTによる生産現場の改革は必ず効果を生むものだと確信をもってご紹介できます。スマート・マニュファクチャリングの実現について、ぜひアクセンチュアにお任せください。

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