Skip to main content Skip to Footer

LATEST THINKING


オープン化による新たなエコシステムの構築

自社の強みを再確認し、社内外のパートナーをいかに惹きつけながら、新たなエコシステムを創出できるかがデジタル時代をリードするための大きなカギ

デジタル時代に求められる「オープン化」という考え方





デジタルコンサルティング本部
シニア・マネジャー
菊池 祥平

X.0を味方につける

IIoTの普及により、あらゆるモノがデジタル化される世界では、企業が提供する付加価値が製品そのものからソリューションやサービスにシフトしていきます。近年のデジタル技術の成熟がトリガーとなって、あらゆる業界で競争に変化が生じています。

例えば自動車業界においては、これまで自動車という製品そのものの性能やデザインを磨き、国内外の競合としのぎを削ってきました。しかし、今後は自動車業界への参入を発表したグーグルやアップルが、デジタルの世界において自動車が提供する価値を再定義しようとしています。彼らは自動車自体を生産するわけではありませんが、強みであるコミュニケーションやエンターテイメント、地図情報やクラウドなどを駆使し、「運転する・移動する」というドライバー起点の発想で新たなサービスの構築を試みています。

デジタル技術を活用することで業界の垣根が取り払われ、競争環境や競争相手に変化が生じ、新たなエコシステムが構築されることでしょう。これからは、ハードからソフト・ネットワークまでも含めたサービス全体としてどのような顧客体験を提供できるかがカギとなります。デジタル時代を生き抜くために、前述のデザインシンキングに加え、「オープン化」という概念がとても重要です。「オープン化」とは自社に足りない資産やスキルを外部から取り込むこと、そしてそれを加速するために外部にとって魅力的な自社のコア技術・機能を広く公開することの両面を指します。市場や技術が複雑化している中、自社ですべてをまかなうという「クローズド」な考え方はもはや通用しません。グーグルやアップルは、自動車本体のハードや通信環境などは他社の製品やサービスを取り入れながら、圧倒的な顧客基盤をベースにコミュニケーションや決済などの機能を広く公開することで、新たなエコシステムでの存在感を強めようとしているのです。

では、実際に企業はこのオープン化をどのように実現すればいいのでしょうか。「外部の活用」、「自社機能の外部化」のそれぞれについて見ていきましょう。

外部の力をうまく取り込め

自社内に不足しているアセットやリソースがあれば、必要な技術やスキルを外部に見出して活用することで、製品開発のリスクを軽減し、商品化までの期間を短縮でき、さらには新製品導入に対する市場の受容性を判断しやすくなります。アクセンチュアでは、これを「拡張ワークフォース」と呼んでいます。これは単に優れたサービスに便乗すればいいというわけではなく、自分たちの強みを最大化するために相乗効果を生み出すパートナーを見極め、使いこなせなければなりません。

図表1 拡張ワークォースの概念


図表1 拡張ワークォースの概念


オープン・イノベーションという考え方がこれに当たります。P&G社では、「コネクト&デベロップメント」をテーマに技術や知的財産を外部に求め、自社だけではできなかったイノベーションを実現しています。例えばグローバルブランドの1つプリングルスのポテトチップ1枚1枚に絵や文字を印刷する技術は、イタリアのあるパン屋で培われた技術を活用しているのです。ここではP&G社の顧客ニーズを発掘し、製品コンセプト化の力があってこそ、そのニーズを満たす力に出会えたことを忘れてはなりません。

近年はクラウドソーシングという、プロジェクトベースで人材を一時的に外部より調達する取り組みも増えています。特にアプリのデザインや開発の分野では、個人が企業との受発注を後押しするサービスも盛んです。さらにはIT業界で端を発したハッカソンというプログラマーたちが技術とアイデアを競い合う開発イベントをご存じでしょうか。最近では企業単位でも実施され、例えばフェイスブックの「いいね!」機能のアイデアは、社内ハッカソンから生まれています。日本企業でも取り組みの事例が増えてきていますが、このような自由に発想する「場」をいかに提供できるかが、特に組織の制約が多い大企業にとって大きなチャレンジとなるでしょう。

自社のコア機能を外部化せよ

自社のサービスを外部化することによって、既存ビジネスのスキームや事業構造などを抜本的に変え、一部のテクノロジー先進企業だけではなく、既存の企業にとっても新たな価値の創造やサービスの提供につなげることが可能になります。他社にとって魅力的なサービスを見極め外部化することで、前述の外部の力を取り込むサイクルが一層加速するのです。

具体的には、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の形で公開することにより、これを実現する企業が増えています。グーグルやアマゾン・ドット・コム、フェイスブックなどの先進企業は、自社の基幹システムの持つコア機能のAPIを外部に公開し、ユーザーや他企業に提供することで、エコシステムを拡大して市場での影響力をさらに強めています。こうした先進ウェブサービスの企業だけでなく、APIの外部化やプラットフォームとしての提供によって、異なる企業同士の連携や業界横断的なマッシュアップの素地ができあがり、企業が持っていた既存システム上の資産の利用頻度や活用方法が劇的に進化するという例も出てきています。

日本国内では自社の独自サービスで囲い込みを狙う傾向が強い携帯キャリアですが、たとえば北米の大手通信事業者では音楽や広告、位置情報やアプリ内課金など、積極的にAPIのオープン化を進めることで同社の収益増加やシェアの拡大につなげています。物流大手のDHL社では顧客企業や一般家庭、SNSなどのサービスにいたるまで幅広くAPIを公開し、あらゆる外部の情報を取り込むデータ基盤を構築しました。リアルタイムルート検索などのオペレーション効率化や、顧客満足度向上の施策だけでなく、分析したマーケットデータの外販などの新しいビジネスの創出を実現しています。国内に目を向けると、日産自動車は車両・位置情報や走行距離などのデータを、APIを介して損保ジャパンに提供し、走行距離に応じて保険料を設定する新しいサービスを始めました。いまは走行距離のみを活用していますが、今後さらに粒度の細かい情報を活用することにより、さらなるサービスの高度化が図られ、新たな異業種のプレーヤーとのサービスが創出されることでしょう。

一般の企業がAPIを公開するためのソリューションを提供するベンダーも出てきました。Apigee社やMarshery社は、企業向けに「APIプラットフォーム」を提供しています。APIプラットフォームは、業務システムのインターフェースと様々なサービスをつなぐ機能を提供するだけでなく、APIの開発・管理・開放やセキュリティ・パフォーマンスの管理、さらには開発者コミュニティや分析機能にわたるまで豊富な機能を提供しています。企業がオープンプラットフォーム化する準備から、外部パートナーと連携するビジネスモデルを作り出すことが可能となり、自社APIを公開しエコシステムを進化させる取り組みがこれまで以上に容易になっています。

図表2 API活用を進めて社内の資産を外部化


図表2 API活用を進めて社内の資産を外部化

例えば米国最大規模のドラッグストアチェーンでは、店舗の写真印刷機でスマートフォンの写真を印刷できるアプリのAPIを外部に公開することで、店舗印刷の需要を呼び込むとともに、店舗来客の機会向上と売上の増加に成功しました。米国大手自動車メーカーでは、駐車場サービス会社にAPIを公開し、ドライバーが駐車場の支払いを完了するまで車のドアロック解除を無効にすることで、未然に事故や犯罪を防ぐ取り組みを実施している例もあります。さらに海外のある運送会社では、自社システムのAPIを公開し情報連携を行うことで、ドライバーが取引先の各店舗のシステムにタブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスから直接つなぎ、配送リストを確認できるようなサービスが始まりました。これにより、ドライバーはリアルタイムかつ主体的に業務を進められるようになり、同社は業務効率の向上に成功しています。

このように、外部に自社サービスの利用を促進することで、これまでとは異なる新たなサービスや業態が生まれるチャンスが得られるのです。自社の強みを再確認し、社内外のパートナーをいかに惹きつけながら、新たなエコシステムを創出できるかがデジタル時代をリードするための大きなカギとなります。

オープン化を支援するアクセンチュアのデジタルサービス

今後はハードからソフト・ネットワークまでも含めたサービス全体として勝負することが求められ、まさに異種格闘技戦の様相を呈してきます。企業は自社内に閉じずに、オープン化による外部サービスの取り込みや自社サービスの外部化が、重要なテーマの一つとなるでしょう。自社の強みは何か、どの企業と組みどの企業と競争するのか、新たなエコシステムを自ら創り上げていくか、一部に組み込まれていくのか。加速するテクノロジーの変化への追従もさることながら、顧客やパートナー企業、バーチャル世界と、自社との関係を見直すことが重要です。

アクセンチュアは、デジタル時代において、企業のオープン化による飛躍的な成長を支援すべく、中長期的な戦略構想の立案から、顧客体験にフォーカスしたアプリケーション開発、APIプラットフォームの構築・運用にいたるまで一貫したサービスを提供します。

インダストリーX.0インサイト・プログラム -その他の記事

お問い合わせ

お問い合わせは、下記リンク先のフォームよりご連絡ください。