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クラウド・コンピューティングの「光と影」:課題解決策としてのマネージドクラウド

クラウドのメリットを最大化しつつ、デメリットの最小化を追求するサービス「マネージドクラウド」についてアクセンチュアが講演。クラウド活用の7つの課題も解説します。

アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部
パートナー
篠原 淳

アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部
シニア・マネジャー
長部 亨 

クラウドの抱える7つの課題とその解決のためのアプローチ
様々な企業の間で、クラウドコンピューティングへの期待が膨らんでいる。実際にクラウドを導入するユーザーは増えており、その市場も急成長している。 確かに、スピード導入が可能な点やITコストを変動費化できることなど、クラウドについて指摘されるメリットは魅力的だ。ただし、そこには課題も残されている。

アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部シニアマネジャーの長部亨が挙げる課題は7つ。
(1)ガバナンス上の懸念、(2)ベンダーロックインの可能性、(3)既存システムとの連携・運用、(4)特有業務・法規制への対応、(5)性能面の不安、(6)セキュリティ、(7)ユーザー増によるコスト肥大化である。

「第1に、ガバナンスについて。クラウドサービスは手軽に利用できるので、ユーザー部門が個別にクラウドを導入して、結果として全体のプロセスが複雑化する可能性があります」このように長部は述べた上で、解決の方向を示す。 「ガバナンスを確保するためには、IT部門は戦略企画や統合運用基盤など全体を視野に入れた施策に注力する必要があります。開発や運用などについては、アウトソーサーの活用も考えるべきでしょう」

(2)~(7)に列挙した課題についても、解決策はある。以下で順番に説明する。 第2点のベンダーロックインに関して大きなポイントは、クラウドA上で開発したアプリケーションやデータを別のクラウドBに移すことが可能かどうか。アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部パートナーの篠原淳は次のように語る。 「ユーザーが移したくても、移せない場合もあります。したがって、あらかじめ各クラウドのアーキテクチャーの特性を十分見極めた上で、システム全体の整合性を確保する必要があります」このような整合性は、第3点の既存システムとの連携においてもカギになる。例えば、クラウドと既存システムの間でシングルサインオンの環境を用意したり、クラウド間のデータ連携などを実現したりするためには、最新技術に目配りした上でシステムの全体最適化を図る必要がある。

第4点の特有業務や法規制への対応については、ERP導入時とほぼ同じテーマが話し合われることになるだろう。つまり、「クラウドに業務を合わせるのか、それとも既存業務を維持するためのカスタマイズか」という議論である。 「クラウドの導入を機に、その機能に合わせて自社業務を標準化・効率化するのも一案です。業務によっては作り込みが必要な部分もあるので、それに対応できるベンダーを選定する必要があります。また、グローバルな制度対応が求められる領域については、その経験を持つベンダーを選ぶべきでしょう」と長部は考えている。

第5、第6点のパフォーマンス及びセキュリティの要件については、クラウド事業者の提示するSLAでは不十分と考える企業は少なくない。例えば、「サービスの可用性99.9%を保証」というクラウドサービスがあるが、これは「年間8時間程度の停止は許容範囲」ということを意味する。 「解決の方法はいくつかあります。例えば、複数台契約によってサーバをクラスタ化する、あるいは、ネットワークの分野ではIP-VPNの活用も考えられます。SLA未達のペナルティーなどについては、クラウド事業者と交渉が可能な場合もあります」と長部は説明する。IP-VPNはセキュリティ対策としても効果的だ。

最後に、コストの課題である。一定以上のスケールがあれば、クラウドよりもSIのほうが安上がりになることもある。その損益分岐点は1000ユーザーのケースもあるだろし、5000ユーザーという場合もある。 「どちらが有利かは、システムの規模や利用状況などによって異なります。損益分岐点を見極めた上で、長期的な視点でクラウドかSIかを選択する必要があるでしょう」(長部)

「光の最大化、影の最小化」をマネージドクラウドが両立する
以上で見たように、クラウドにはいくつかの課題があるが、それに対する解決アプローチも存在する。ただ、解決策を講じるためには相当のコストがかかることもある。そこには「光と影のトレードオフがある」と篠原は言う。 

「コスト面などでクラウドのメリットを最大化しようとすれば、性能やセキュリティ面で妥協せざるをえないところが出てきます。一般に、パブリッククラウドがこのタイプでしょう。一方、クラウドの影の部分を最小化しようとすれば、価格やスピードなどのメリットを減じることになります。こちらのタイプが、プライベートクラウドと言えるでしょう」

光の最大化を追求するか、それとも影の最小化を選ぶか――。ユーザーにとっては悩ましいところだが、これらを両立させるものとしてアクセンチュアはマネージドクラウドを提供している。 「クラウドサービスとユーザー企業との間に、中間的なプレイヤーとしてマネージドクラウド提供者が入ります。そのマネージドクラウド提供者はクラウド事業者からリソースを調達、自ら保有するリソースも組み合わせ、サービスを最適化してユーザーに提供する。高いROIを実現できる形態です」と長部。例えば、大手小売企業のECサイトとマーケティング業務を、アクセンチュアはマネージドクラウドの形で提供しているという。

ユーザーメリットの大きいマネージドクラウドは今後、様々な分野で普及するものと見られる。ただ、その提供者にはかなり高度なケイパビリティが求められると長部は言う。 「アプリケーションの追加開発などに柔軟かつ迅速に対応しなければならないので、生産性の高いIT工業化プロセスを持っている必要があります。また、多様な外部サービスを熟知し、自らも高付加価値サービスを実現するアセットを保有していること、そして業務・IT領域におけるコンサルティング能力。これら3つがマネージドクラウドプロバイダの要件です」

先に挙げたECサイトだけではない。すでにアクセンチュアは多くのユーザーに向けて、マネージドクラウドを提供している。そして、長部の言う3要件をさらに深く追求することで、顧客提供価値の一層の向上を図ろうとしている。