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コンサルタントが語る
クラウド・サービス

Modernization by Cloud

日本のクラウド利活用は「虫食い」状態、もうすぐ立ち行かなくなる

アクセンチュア株式会社
アクセンチュア クラウド
マネジング・ディレクター
戸賀 慶

グローバルのクラウド市場は近年大きく成長しています。しかしICT全体で見るとクラウド・サービスへの投資は7~8%程度にすぎません。


今後もクラウドへの投資が増える余地があるのは明らかですが、これまでと同じアプローチでは急速な増加は進まないでしょう。


クラウドへの投資拡大の最も強い原動力は、容易に利用でき効果を得られる点ですが、その領域における企業のクラウド化は一通り進んでおり、一方のクラウド化が容易ではない領域は、既存のIT環境におけるアーキテクチャの根本的な見直しや、より高度な可用性を期待される追加機能が必要になるなどの理由から、着手できずに塩漬けになっているというのが現状です。

企業システムのクラウド利活用状況を日米で比較すると、情報系システムではさほど差はありませんが、基幹系システムでは2~3倍の開きがあります。基幹系システムの日米差が大きい背景として、日本では企業全体の戦略としてではなく、業務機能ごとに部門独自の判断でクラウドの採用が進んでいることなどが挙げられます。

日本と海外の差
日本と海外の差


日本のクラウド利用は、簡単に使えそうな部分だけ着手している「虫食い」状態ですが、今後のビジネス戦略を見据える場合には別のアプローチが必要になってきます。

インフラ(設備)だけではない広範囲な検討

クラウド化で注目されるのはインフラ(設備)部分のIT調達コストの削減や効率化です。もちろんインフラコストを削減することはできますが、それはごく限られたメリットにすぎず、真のクラウド化によってもっと大きなメリットを得ることができます。
クラウド移行時にすべてのコスト要素ごとに見直すべきポイントがあるのです。

ある日本企業の事例では、単純にインフラを置き換えるだけではなく、運用保守やアプリケーション開発についても大幅なコスト削減を実現しています。実際に次のような効果を生み出しています。

  • クラウド移行対象のシステム全体の標準化による開発基盤や実行基盤の共通化

  • IT基盤そのものやツール類を集約し、ボリュームディスカウントを適用することによるコストの抑制

  • 共通化・標準化に伴う自動化作業領域の拡大によるコストの低減

  • クラウドプラットフォームが提供する運用サービスを活用することによる運用保守コストの削減


インフラ(設備)だけではない広範囲な検討
インフラ(設備)だけではない広範囲な検討

クラウドへの移行前に、クラウド・サービスの特性を最大限に活かすことを前提として、社内のIT環境全体を見直すことで、運用コストの負担を軽減しクラウド移行の初期費用の増加を回避することも可能になります。クラウド化は、システムアーキテクチャ・運用・開発の体制を全体的に見直すことのできる最良のタイミングでもあるため、企業はこの機会をぜひ活用すべきです。

クラウド移行に向けた難所

大規模なエンタープライズ企業におけるITシステムのクラウド化も「虫食い」状態であることが多いため、手つかずの基幹系システムや膨大な数のサーバのクラウド移行も、これからのクラウド化のスコープに入ってきます。

数の暴力へのチャレンジ: 大量のサーバ(8,000台)も約900台/月で移行

欧州の大手エネルギー企業におけるクラウド化事例では、複数のデータセンターを整理することによるITコストの削減を目的として、既存システムを支える大量のサーバをクラウドに移行しました。移行対象のサーバ約8,000台のうち約5,000台が、既にクラウド運用されています。9カ月をかけてシステムとアプリケーションを細かく切り分けすべての依存関係を整理し、大きな枠組みとしてのクラウド戦略を策定しました。基幹業務を担うERPシステムは機能モジュール単位で切り分けた上でクラウドに移行するかオンプレミスに残すかの判断を行う一方で、ビジネスに寄与しない既存アプリケーションはオンプレミスに残し、時期を見て随時クラウド化に向けた再構築を行う方針を取りました。
システム間の依存関係を整理し、移行の方針と順序さえ決まれば、オフショアリソースを大量に投入して素早く移行作業を遂行できます。この事例では1カ月あたりサーバ約900台をクラウドに移行して、短期間でプロジェクトを成功させることができました。


数の暴力へのチャレンジ:  大量のサーバ(8,000台)も約900台/月で移行
数の暴力へのチャレンジ:  大量のサーバ(8,000台)も約900台/月で移行

失敗も多いモダナイゼーション

従来型モダナイゼーション手法は大きく、6つに分けることができます。コストの発生状況や改修要望への対応スピードといったビジネスニーズへの適合状況、競合他社との差別化要素になる機能領域か否か、さらにシステム規模(コードボリューム)などのポイントを現状分析フェーズで明らかにした上で、次の6つの中から採用する手法を選択します。

失敗も多いモダナイゼーション
失敗も多いモダナイゼーション


例えば、現行システムのある機能を「市場で勝ち抜くための差別化には必要な機能だが、システム改修スピードが遅くビジネスニーズに応えられない上、システム規模が非常に大きい」と分析した場合、言語変換ツールなどを用いたリライト手法を採用して、その機能のプログラムコードをJavaなどのオープンな開発言語に変換します。差別化要素がなくコモディティ化した機能は、パッケージやSaaS(Software as a Service)を利用したリプレース手法が選択肢となります。システム規模が小さい場合には、リライト手法ではなく、ゼロから作り直すリビルド手法が適しています。

各手法の特徴に合わせて選択した結果、モダナイゼーションが成功して目的を達成できるケースもあれば、膨大なコストと時間をかけてプロジェクトを推進したものの目的を達成できないケースもあります。場合によっては、プロジェクトが途中で頓挫してしまうという場合もあります。



失敗の理由は2つある

 

リライトやリビルドの手法は、現行機能を担保しつつ基盤とアプリケーションをオープン化したい場合に選択しますが、モダナイゼーションが失敗してしまう理由は大きく2つあります。1つは「メインフレームをベースにした日本型基幹系システムへの理解不足」、もう1つが「無謀なモダナイゼーション計画」による失敗です。
失敗の理由は2つある
失敗の理由は2つある


アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部
テクノロジーアーキテクチャ グループ
シニア・プリンシパル
福垣内 孝造

1つめの「日本型基幹系システムへの理解不足」による失敗とは、日本企業のレガシーの基幹系システムの特徴として、SoR(Systems of Record:記録のためのシステム)とSoE(Systems of Engagement:顧客や取引先との関係性を強化するためのシステム)が混在しているケースがあることの理解の不足から生じる失敗です。

例えば、SoRの代表例である販売管理や生産管理システムのモダナイゼーションの際、標準プロセスを優先し、例外を考慮しない仕様にできれば、ERPパッケージへのリプレースは容易になります。ところが、古くから多くの企業や顧客と取引をしてきた日本企業の基幹系システムではそうはいきません。顧客や取引先との個別契約や関係性を重視し、契約締結前の生産着手や仮設定による単価発注など非定型な個別オーダーを、業務に精通している担当者が一つひとつアプリケーションとして基幹系システムに実装してきたからです。このような基幹系システムは、本来のSoRの機能に加えてSoEの機能と要素が多く組み込まれていることになります。個別オーダーの対応は、長年の工夫の結果として作り込まれた複雑な仕様である場合が多く、ERPパッケージへのリプレースは難しいため、カスタム開発を伴うリライトやリビルドの手法が選択されるわけですが、移行対象や個別仕様が膨大なためクラウド化の失敗の大きな要因となります。

2つめの「無謀なモダナイゼーション計画」による失敗とは、クラウドは一足飛びに夢のようなIT環境を構築できる、と勘違いしてしまうことです。モダナイゼーションのプロジェクトでは往々にして、社内での稟議を通しやすくするために、少しでも多くの効果を上積みしようと「細工」します。高い投資対効果を望むこと自体は悪くないのですが、ゴールに至るステップを間違えると、稟議は通ってもそのプロジェクトの結末は悲惨なものになります。
現行仕様の多くの機能の完全移行を担保することを前提とし、さらにコスト削減に向けたシステム機能の統廃合や、業務効果を創出するための新たな機能の追加などが求められます。しかし、何年も何十年もかけて作り込まれた複雑なレガシー基幹系システムの移行において、それらすべてを同時に実現することは至難の業です。

「新規要件は後回し」がモダナイゼーションの新たな鉄則

このような理由から、十分な現状分析に基づく現実的な計画を立案することの重要性が見えてきます。しかしその一方で、計画に時間をかけるばかりでなかなか実行への一歩を踏み出せない企業も少なくありません。


十分な現状分析が必要といっても長年作り込まれたシステムを完全に棚卸しすることは困難で、ある程度のトライ&エラーは避けられません。仮説に基づいて実際にリライトやリビルドの手法を試み、技術的な課題の解消や手法のブラッシュアップを段階的に進めることが現実的なアプローチといえます。そのため、トライ&エラーを想定した上での全体計画の立案が大変重要になります。

「オープン化」と「最適化」で作業を分ける

モダナイゼーションの作業は2つのステップに分けて遂行することを推奨します。最初のステップが「オープン化」(現行機能の担保)、次のステップが「最適化」(リファクタリング)です。

「オープン化」と「最適化」で作業を分ける
「オープン化」と「最適化」で作業を分ける


2つのステップに分ける理由は、最初のステップが現行機能を担保したオープン化という必須対応であるのに対して、次のステップの最適化は新たな追加要件であり予算や期間に応じて範囲を決めることができるオプション的な対応だからです。この2つの作業は必要なツールやスキルも異なるためプロジェクトの遂行上、区別したほうが良いという判断もあります。万が一、最適化がうまくいかなくても、現行機能のオープン化という必須の目的を担保できます。また、品質面から考えても、2つのステップを同時に行った場合、システムの現新比較の拠り所がなくなり、どちらの作業のどこで障害が発生したのかなどの切り分けと特定が難しくなるからです。


具体的な作業として、最初のオープン化のステップでは、現行機能を担保する形でJavaなどのオープンなコードへの言語変換(リライト)を行います。このステップでは、一般的に採用される1行ずつ実行するような言語変換はできるだけ避けるべきです。その方法では、せっかくリライトするJavaのコードが、可読性の低いCOBOLのようなコードに仕上がってしまいます。ここでは、次の最適化のステップを考慮して、リバースエンジニアリングとフォワードエンジニアリングを組み合わせる手法を推奨します。現行機能をUMLに落とし込んでから、Javaのアーキテクチャに則するようにUML上のモデルを修正し、Javaのプログラムコードをフォワードエンジニアリングする手法です。これにより「汚いプログラムがそのままJavaに変換されてしまう」というリライト手法への懸念もなくなり、Javaアーキテクチャ上で適切にクラス分けされたプログラムが実現できます。あとは現新比較のテストで十分に確認することで、現行機能が担保されたオープン化が完了します。


次の最適化のステップでは、重複機能の共通化や、パフォーマンスのチューニング、データモデルの見直し、新規要件に基づく機能の修正・追加などを行います。最適化に対するニーズがさほど高くない場合には、オープン化のステップでは避けるべきと述べた逐語実行型の言語変換はコストやスピードに優位性があり、コンパクトな最適化に非常に適したリライト手法になります。


ニーズと状況に応じて、適切な手法を選択することが大切です。

アクセンチュアのクラウド移行/モダナイゼーション・サービス

アクセンチュアは、グローバル規模のクラウド移行における多くのサポート実績を有しています。専門性の高い人材と経験によるナレッジを研究して得たノウハウに基づく方法論・プロセスを駆使し、確実なクラウド移行を実現します。

アクセンチュアのクラウド移行/モダナイゼーション・サービス
アクセンチュアのクラウド移行/モダナイゼーション・サービス


業務プロセスやITシステム等の業界別アセットをベースに、経営層のお客様にも納得感のある、ビジネスケースを含めたクラウド移行計画の立案を支援いたします。

業務プロセスやITシステム等の業界別アセットをベースに、経営層のお客様にも納得感のある、ビジネスケースを含めたクラウド移行計画の立案を支援いたします。
業務プロセスやITシステム等の業界別アセットをベースに、経営層のお客様にも納得感のある、ビジネスケースを含めたクラウド移行計画の立案を支援いたします。


アクセンチュアは特定のクラウドプロバイダに依存するビジネスモデルではなく、さまざまなクラウドプロバイダと連携・協業しています。中立的な立ち場で、お客様にとって最適なクラウド・サービスを選定しクラウド移行をサポートしています。またクラウドプロバイダとの協業体制のさらなる強化のために、次のような取組みも行っています。

  • Microsoft Azureを取り入れたAccenture Hybrid Cloud Solutionを2014年12月に発表

  • Accenture AWS Business Groupを2015年10月に設立し、クライアントに対するクラウド戦略やクラウド移行を「As-a-Service」モデルでの提供を強化

  • Google Cloud Platformを用いた企業向け産業ソリューション(拡張現実、ビッグデータ、IoT、機械学習等)を創出するためのアライアンスを2016年10月に発表

Cloud Migration Center of Excellence (CoE)


アクセンチュアのクラウドの専門家がクラウドプロバイダと連携して、さまざまなクラウド化プロジェクトで得られたスキルや最新事例を研究・ナレッジ化しています。また「Cloud Migration Center of Excellence (CoE)」などの簡易な診断ツールやテンプレートの開発にも力を注いでいます。

Cloud Migration Center of Excellence (CoE)(1/2)
Cloud Migration Center of Excellence (CoE)(1/2)


Cloud Migration CoEは、クラウド移行診断から移行作業および移行後の運用で実施すべき検討項目に対するナレッジを提供し、お客様のクラウド移行を成功に導くためのサポートをいたします。

Cloud Migration Center of Excellence (CoE)(2/2)
Cloud Migration Center of Excellence (CoE)(2/2)

クラウドを梃にしたITコスト削減・IT変革を志向されているお客様へ

IT環境のクラウド化は技術的な話だけではなく、ヒト・モノ・カネが深く入り組んだ問題を抱えています。もちろん技術は重要であり、アクセンチュアでも、プロジェクトの実行フェーズで確実な作業品質を提供するために、多くの専門エンジニアがツールの開発に取り組んでいます。けれども最も重要なことは、技術的な話以前の「IT全体からの視点」での取組みだと考えています。


アクセンチュアでは、既に自社の全ITアセットの60%をパブリッククラウドに移行し運用しています。またそれらのナレッジを体系化して管理・研究も行っており、来年には90%までのクラウド化を実施する計画です。


アクセンチュアは基幹系システムを含むすべてのITシステム領域のクラウド化で豊富な実績があり、運用データの解析やSAPなどのERPシステムのクラウド移行・運用についても非常に得意としています。


クラウド移行/モダナイゼーションをご検討中、またはクラウド化にお悩みの場合は、ぜひアクセンチュアまでお問い合わせください。
近い将来、避けることのできないIT環境のクラウド化に向けて、お客様の検討・導入パートナーとしてご選定いただければ幸いです。

アクセンチュア株式会社
アクセンチュア クラウド
シニア・マネジャー
磯辺 徹

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