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デジタルで変わるマーケット

顧客価値を起点にサービスを創造する

進むマーケットの再定義


デジタルコンサルティング本部
モバイルサービス統括
マネジング・ディレクター

丹羽 雅彦

X.0を味方につける

企業活動、消費者行動、機器の稼働状況など、あらゆる動向がデータ化され、多くの産業でリアルとデジタルの境界が曖昧になりつつあります。こうしたデジタル化のインパクトは各産業に例外なく発生し、例えば製造業においては、デジタル化により付加価値が機器単体からシステム全体に移行し、製造業からサービス業へのシフトを余儀なくされています。

タイヤメーカーのMichelin(ミシュラン)社では、運送会社向けにトラックとタイヤにセンサーを装着。燃料消費量やタイヤの空気圧、気温、スピード、ロケーション情報を収集・分析し、最大で走行距離100kmあたり2.5リッターの節約を可能とするような、燃料消費量の削減サービスを提供しています。走行距離に応じた使用料を支払うサービスも同時に提供。自社の位置付けを、タイヤを売る企業からタイヤを媒体としてより効率の良い走行サービス(Tire as a Service)を提供する企業へと再定義したのです。顧客との接点をタイヤ販売時点から、タイヤの利用期間全体に拡大し、さらに顧客に寄り添ったサービス提供ができているのです。

また食品・飲料メーカーのNestle(ネスレ)社は、エスプレッソ機器とコーヒー豆のカートリッジを提供するNespressoサービスにより、自社をコーヒー飲料の製造・販売業から、上質なエスプレッソを毎日味わうことのできる顧客体験を提供する企業へとシフトさせています。Nespressoは直販の店舗やEコマース、ソーシャル、YouTubeによるビデオなど、複数のチャネルを活用して、顧客接点を増やし、顧客一人ひとりの嗜好を把握することに成功しているのです。

デジタル時代においては、自社の売り物を再定義し、新たなサービスを創出する動きが、製造業だけではなくあらゆる産業で起きています。

図表1 デジタル活用 新サービスによる市場拡大

デジタル活用 新サービスによる市場拡大

小売市場を例に挙げると、「買い物を楽しむ」市場ととらえることで、顧客が商品に興味を抱く時点から、商品選定、商品のレコメンド、店舗やネットでのショッピング、購入後のフォローまで、顧客の購買行動全般に対応が必要な広範囲なマーケットに変貌します。このときのプレーヤーは小売業だけではなく、通信、消費財メーカー、Eコマースなど幅広い業種が参画することとなります。

従来から製品の販売からサービス化への流れは存在しましたが、デジタル時代において特徴的なのは、主に次の2つです。1社ですべてに対応するのは困難なため、オープン化されたプラットフォーム上で、異業種のプレーヤーと共同でのサービス構築が必要となる点と、データを活用してサービス化していく点です。そのため新規サービスを構築したい企業は、組むべきプレーヤーや取得すべきデータについて議論をスタートすることが多くあります。しかしここに思わぬ落とし穴が存在するのです。

ビジネスモデルからスタートしない

筆者は、製造業などの新たな顧客サービス構築を支援する機会が多くあります。その際に、「誰と組み、どんなエコシステムを作るのか」「どんなデータをどのタイミングで取得できるか」「データをどのように分析してセールスに活かすか」「どうマネタイズするか」というビジネススキーム(狭義のビジネスモデル)の議論に時間を使うことが多々あります。しかしその議論には違和感を覚えます。これらはすべて供給者サイドの都合を議論しているに過ぎないからです。最初に考えなければならないのは、「どう売りたいか」や「どんなモデルを作って継続的なビジネスをしたいか」ではなく、「顧客にどのような付加価値をもたらすか」です。バリューチェーン自体の付加価値をいかに高めて参画企業に便益をもたらすか、と言い換えてもよいのではないでしょうか。この価値の議論を抜きにサービスを語ることはできません。

革新的なサービスを生み出し続けているアップルのティム・クックCEOはApple Payの発表において、「従来の決済サービスはビジネスモデルにフォーカスするが、Apple Payはユーザー・エクスペリエンスにフォーカスした」と語っています。つまり誰から手数料をとり、決済情報、購買履歴をどう利用するか、といったビジネススキームではなく、クレジットカード番号を入力することなく、セキュアな状態でタッチのみで買い物ができる、顧客体験を創出しているのです。

前述の図表1を再度見ていただくと、従来市場の左側はサービスの分類を示しているに過ぎませんが、新市場の右側は「移動する」「健康を維持する」など顧客体験を中心とした動詞となっていることがわかります。つまり、市場を創造するには、新たな顧客体験を通じて、いかに顧客への価値を提供できるか、をまず考えなければならないのです。データを取得できるのも、顧客が新サービスに価値を見出してからです。

とはいえ、新たな領域で顧客ニーズをとらえるのは至難の業です。成功するサービスはどのように作り出していくべきでしょうか。

顧客ニーズをキャッチしサービスを常に変化させよ

現在、成功しているサービスも、最初から最終形を思い描いて作られたものは多くありません。例えば建機メーカーのコマツ社が提供しているKOMTRAXでは、世界中の建設機器の稼働データをリアルタイムで分析し、メンテナンスサポートのみならず、景気の先行指標の提供ができています。しかしKOMTRAXも当初は盗難防止のサービスとしてスタートしました。一定のボリュームを超えたデータが集まるようになってから、景気動向をつかみ、需要予測に活用できるまでに成長したのです。

また、累計で850億ダウンロードを超え、モバイルアプリという巨大なマーケットを作り出すことに成功したアップルのApp Storeも同様です。iPhone発売当初は、アップルはiPhoneの付加価値とも呼べるアプリを自社ですべてコントロールしたいと考え、開発環境は一般公開されていませんでした。しかしハッカーによるJailbreakなど、ユーザーによるアプリ開発の機運の高まりを感じると、即座に方針を変更。SDKを公開したのです。その際に単なるSDK公開にとどまらず、App Storeを開設し、市場を同時につくるとともに、収益基盤を作った点がアップルの秀逸なところです。

フェイスブックも、いまではニュースフィードによる近況のシェアがサービスの中心ですが、もともとはフェイスブックというネーミングのとおり自己紹介サイトでした。

このように成功するサービスは、最初からすべてがわかっていたわけではありません。むしろ予想外の展開によりサービスが成長しているのです。重要なのは、潜在化されていたニーズが表面に現れるとすぐに動き、サービスに取り込んでいく姿勢です。

高速なプロトタイプでニーズをつかめ

ここでキーとなるのがデザインシンキングによるプロトタイプ思考です。論理的にビジネス課題を詰めて解を出していくロジカルシンキングに対して、デザインシンキングのアプローチでは感性を重視し、考えるより先に動くことが要求されます。

図表2 プロトタイピングによるサービス創出イメージ


新しいアイデアが出たら、まずはプロトタイプを作り、市場で試してみます。市場環境が急速に変わり、顧客ニーズもとらえにくい現在の環境では、サービスが成功するかどうかはやってみないとわかりません。とくに新しいサービスは何が顧客の心をとらえるか、事前に予測することは困難であり、じっくりと戦略を練った上で行動するのは高いリスクがともないます。戦略を練っているうちに市場に変化が起きる可能性が高く、何が正解かは誰にもわからないのです。それならば実験的なアプローチにより、まず小さく試してみる。うまく試行できたものはより深耕する。うまくいかなかったものは、きっぱりとあきらめてすぐに新しい試行をする。小さなプロトタイプを、迅速に柔軟に繰り返すことで、真に顧客に価値をもたらすサービスを創造することができるのです。

アクセンチュアにおいても、従来の業務・ビジネスへの理解をもとにビジネス課題にフォーカスし、原因分析、課題解決をめざすロジカルシンキングアプローチと、感性に訴えデザインの持つ力への理解をもとにアイデアを創出するデザインシンキングアプローチを融合させるべくUX Studioを設立しました。不確実性の高く、変化の大きい今日において、迅速にトライし、修正を繰り返すプロトタイピングのスキルは、大きな武器となるのです。

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