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デジタル化が与える自動車販売へのインパクトとは?

デジタル化により「モノからコトへ」 自動車販売の世界観が変わる

デジタルの力を梃子に自動車販売を進化

太田 陽介

戦略コンサルティング本部
マネジング・ディレクター
太田 陽介

X.0を味方につける

インダストリーX.0は、デジタルの力を活用し、自動車の「製造方法」を飛躍的に高度化させようとしています。しかしその一方で、自動車の「販売方法」は看過されがちです。そこで、デジタルの力が変革を促す自動車販売の進化すべき方向性について解説します。

2000年代にあらゆる業界を襲ったIT革命の波は、自動車販売現場にも必然的に訪れました。当時、大手自動車メーカーならびに販売店が実施したIT導入は、自動車販売の現場に変化をもたらしました。しかし、残念ながら「モノからコトへ」に対応する変革にまではいたっていません。それは、つまり「従来、紙で行ってきた管理や業務をデータベースとPCで行った」に留まっているのです。

下記の例は、いずれもアクセンチュアが持つ2000年代の改革事例集からの抜粋です。

顧客カードで管理されていた紙ベースの顧客情報が、データベースに登録されることで一元的に共有化され、常に最新の顧客データベースから検索やリスト抽出が可能に。これにより、漏れなく・タイムリーな顧客アプローチを実現。

販売店現場の壁に貼られた管理表では、セールス活動のプロセスKPI(接触、試乗、査定、見積)の見える化は実現しにくい。これをPC管理による日報提出とすることで即時に集計され、リアルタイムな見える化を実現。KPIに基づく科学的なセールス活動の改善が可能になった。

マーケティング施策展開と来店数の相関、またWeb媒体別のリード誘引数とそこからの成約率などをデータ分析することで、マーケティングROIの定量化を実現。根拠に基づいたマーケティング計画を立案できるようになった。

このように、「従来、紙で行ってきた管理や仕事をデータベースとPCで行う」事例が多く見受けられます。当時はこうした手法も効果を生み出した改革テーマでしたが、これらが「モノからコトへ」に対応するための自動車販売現場を変革する最終的な解ではありません。

自動車販売現場の世界観はどう変化するのか

2000年代に行われたIT化と2010年代に叫ばれているデジタル化とは一体何が違うのか。「紙からIT」は道具の変化を指すのに対し、「アナログからデジタル」は世界観の変化を示しています。デジタル的販売現場では、次のようなサービスが可能になります。

<シナリオ1>

車検の予約をしていた顧客が、予定時間よりも大幅に早く販売店の駐車場を訪れた。駐車場設置カメラが車のナンバープレートを読みとり、CRMシステムに情報を連携させる。受付では試乗枠の調整を行っているタブレットに顧客情報がポップアップで表示される。同時にCRMシステムはインカムシステムに情報を連携、別の顧客の接客をしていた担当セールスマンのインカムに自動音声で先ほどの顧客の来店がアナウンスされる。一方受付では、タブレットに表示された情報から該当顧客の氏名、同伴者、用件などを把握した状態で駐車場に顧客を出迎えに行く。その間、数種類のコーヒー・ハーブティーを抽出可能なコーヒーマシーンは、CRMシステムから顧客の好みが伝達されて、飲み物を抽出。受付担当者が顧客を座席に案内したと同時にコーヒーを運んできたPepperが挨拶をする。

もう1つシナリオを想定してみましょう。

<シナリオ2>
新規顧客がショールームに来店。小さなお子様連れである。ある車種に興味を示している様子なので説明を開始するが、来店シートへの記入は「ちょっと見に来ただけ」と断られる。ここで、3Dプリンターで模型のミニカーをプリントしてお土産に渡すことを提案。車種と色の選定後、待ち時間の15分を使い飲物のサービスとセールスマン自身の紹介などソフトな情報集めを展開。出来上がったミニカーを渡し、顧客家族は楽しい雰囲気で退店。顧客の帰宅後も、お土産のミニカーをスマートフォンのアプリを通して見ると、拡張現実(AR)によって対応に当たったセールスマンのお礼メッセージが表示される。さらに、この車の情報を載せたサイトやSNSへの入口がポップアップ。顧客は再度車の詳細を見返すためにこれにログイン。セールスマンは来店時には確認できなかった顧客の氏名や連絡先を入手する。

こうしたシナリオは、いまあるIT技術の組み合わせだけで可能です。事実これらはすべて断片的ではありますが、アクセンチュアが支援する顧客企業で実際に構想されているシナリオなのです。

「車検で十万以上は支払うのだから、名乗らなくても出迎えてほしい。好みのコーヒーの一杯も出してくれないのか。もっと少額で利用できるホテルやアパレル、スーパーやコンビニですら嬉しいサービス体験ができるか否かで選択しているのに、車の販売店は不思議だ」。そう思う自動車消費者は少なくありません。

しかしアナログの世界観の中では、上述したようなシナリオは大多数の販売現場にとって人手やコストがかかり過ぎます。仮にコストをかけたとしても、情報や仕事の連携スピードが手作業では追いつかないという課題もありました。ここまでの内容をまとめると下記の2点になります。

  • デジタル化が自動車販売の現場に与えるインパクトは、ツールの変化ではなく世界観の変化という意味で、これまでのIT化とは明確に異なる。

  • 自動車販売の現場には「モノからコトへ」に進化するという積年の課題が残っており、これこそがデジタル化により解決が期待される。

デジタル化で自動車販売をどのように変化させるのか

最後に、ではどのようにして着手すべきか。まずデジタル化は世界観を変えるということが本質的なテーマです。そのため、5~10年先のある地点を定めて世界観の議論から入るべきです。いきなり最新の技術動向を調べて、どういった機器やITに入れ替えるかの実装の議論に入ると「紙→IT」のクラシックな思考に陥りがちです。

また議論の重ね方ですが、紙上の議論と報告で整理を重ねていると、尖った世界観の提言も角がとれていく傾向にあります。「世界観」を合意する最初のフェーズは、従来の戦略策定検討よりも感覚的なものを大切にする必要があります。世界観検討の最終成果物は紙ではなく映像を作り、ざっくりと経営の合意をとりつつ、そこから小さくイニシアチブを切り出し、現場でパイロットを繰り返して現実に着地させていく。こうしたアプローチを取れる企業こそが、近年素早く変化を遂げています。

これまで戦略フェーズでは網羅的・包括的に目指すべき将来像を紙上に描くというアプローチが主流でしたが、今後は、こうしたスタイルも変化させていかなければならないでしょう。

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